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1-15 転生した少年は囲まれる


「きゅぅ」


 折れた角を前にホーンラビットが気落ちした声で泣く。

 先程襲われたばかりなのに、思わず同情してしまう。

 ホーンラビットの特徴なのだから、折れてしまったのはショックだろう。


「あの・・・・・・」


 慰めようと声を掛ける。

 流石に攻撃手段の角がなければ、僕に危険は及ばないと判断した。

 こんな気落ちした相手に攻撃もできないし・・・・・・


(((((ザッ)))))

「え?」


 周囲を囲まれているのに気がつく。

 僕たちを取り囲むようにホーンラビットの群れがいた。

 10羽以上いるな。

 警戒から構えを取る。


「きゅっ」


 仲間が来たことに気づいたホーンラビットが嬉しそうに顔を上げる。

 安全だと思ったら、一気にピンチに陥った。

 状況的にはかなりやばい。

 どうすべきか判断に悩んでしまう。


(ドンッ)

「きゅっ!」


 だが、状況は予想外の展開になる。

 群れに近づこうとしたホーンラビットは拒まれるように突き飛ばされた。

 その対応に唖然とした表情を浮かべる。


「きゅっ」

「きゅきゅっ」

「きゅうっ」


 ホーンラビットたちが強く鳴く。

 なんと言っているかわからないが、あまり良さそうな感情ではないことはたしかだ。


(ダッ)

「きゅっ」


 角の折れたホーンラビットはその場から逃げ出した。

 もしかすると、仲間はずれにされたのかもしれない。

 アイデンティティである角が折れたのだ。

 集団というのは、自分たちと違う者を仲間と認めないことがある。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 リーダーらしきホーンラビットと目線があった。

 しばしの間、睨み合った。

 戦うことはメリットがないと判断したのか、その場から立ち去った。


「はぁ」


 その場に座り込んだ。

 どうやらピンチは乗り越えたようだ。


(コツン)

「あ」


 右手にホーンラビットの折れた角が当たった。

 手に取って、確認してみる。

 軽く叩いてみると、結構いい音が鳴った。

 かなりの硬さなのだろう。

 これを自慢に思うのも当然だろう。


「・・・・・・仕方ないな」


 大きくため息をつき、僕は立ち上がった。

 そして、持ち主が逃げた方へ走り出した。







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