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1-11 転生した少年は自身の成長の方向性を知る


「【身体強化】を目に使えば、視力の上昇だけでなく普通では感知できないものを見ることもできる」

「つまり、それで僕の魔力量がわかった、ってこと?」


 意外と【身体強化】は便利なのかもしれない。

 ただただ能力の強化という側面しか見ていなかったが、使いようによっては様々なことができるだろう。

 それなのに、どうして【身体強化】は主流ではないのだろうか?


「そういうことだ。だからこそ、レイに【身体強化】を発動させるように伝えたわけだ。まあ、まさか成功させるとは思っていなかったがな」

「そこは成功を信じてよ」

「言っただろう? イメージをするのは一般的な魔法使いでも難しいのに、ましてや習いたての子供ができるはずがない。もう少し訓練してからだとな」

「その予定を崩してしまったわけだね」


 爺ちゃんなりのプランがあったのかもしれない。

 それなら申し訳ないことをしてしまった。

 だが、爺ちゃんにまったく気にした様子はなかった。


「いや、むしろその方が良い。より期待できるからな」

「期待?」


 何を期待しているのだろうか?

 まったく想像がつかない。


「魔法にしろ【身体強化】にしろ、魔力が必要になるのは理解しているな」

「それは理解しているよ。どちらも魔力を変換しているしね」

「つまり、使える魔力量が多いほど、その真価を発揮できると思わないか?」

「たしかに理屈としてはそうだね。でも、僕はすぐに魔力切れを起こしたよ?」


 爺ちゃんの言いたいことは理解できた。

 たしかに魔力量が多ければ、よりいろんなことができるだろう。

 だが、前提として魔力が多いことが必要になってくるのだ。

 今の僕には期待できないと思うが・・・・・・


「魔力量は人によって多少の差はあっても、子供の頃の差など大したことはない。一部の才ある者を除いてな」

「そうなの?」


 魔力量による体の負担を考えていたから、てっきり差があるものだと思っていた。

 だが、子供の頃の差などどんぐりの背比べだったらしい。

 一部の才ある者の存在が気になるけど・・・・・・


「体内の魔力量は訓練をすることで増やすことができる。それは成長する子供の時期が一番伸びやすいと言われている」

「増やせるんだったら良かったよ。だったら、幼い頃から訓練をすべきってことだよね」


 子供の時に一番伸びやすいのであれば、できる限り早く始めた方が良いだろう。

 そうすれば、訓練の期間を延ばせるのだから。

 だが、爺ちゃんは首を横に振る。


「だが、そう簡単な話ではない」

「え?」

「まず、年端のいかない子供が楽しくない訓練を素直に受けると思うか?」

「・・・・・・受けないね」


 指摘されて、初めて気がついた。

 僕の場合は物珍しい魔法に興味を引かれ、訓練をしたいと思った。

 だが、楽しみたい盛りの子供に訓練を受けさせるのは難しいだろう。


「魔法の危険性も考え、ある程度素直に指示を受けてくれる年齢まで待つ必要もある。それが貴族の間で6歳から始める理由でもある」

「そういう意味があったんだね」


 年齢にも意味があったようだ。

 もっと早く始めれば良いと思っていたが、何事にも理由があるんだな。


「とりあえず、体内の魔力量を増やすには一度魔力を消費させないといけない」

「増やすのに消費させるの?」


 意味が分からず、首を傾げる。

 どうして増やすために減らさないといけないのだろうか?

 明らかに真逆のことをしている。


「魔力が消費されれば、体内で魔力が作られるのだ。そして、消費された量が多いほど、作られる魔力量も増えてくる。その結果、体内の魔力保有量が増えるのだ」

「なるほど」


 説明を聞いて、ようやく理解ができた。

 筋トレと同じである。

 トレーニングで筋肉に微細な傷をつけ、栄養と休息によって回復することでより強靱な筋肉になる。

 理屈としては同じだろう。


「【身体強化】が発動できたことで魔力を消費できる──つまり、体内の魔力量を増やすことが出来るわけだね」

「そういうことだ。これから毎日魔力を限界まで使い、よく食べ、よく眠りなさい」

「わかったよ」


 僕は素直に頷いた。

 自分の成長する道筋が見え、期待に胸が膨らむ。

 一体、どんな風になるだろうか?







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