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1-10 転生した少年は訓練の評価を聞く


「ほら、クッキーを食べなさい」

「ありがとう」


 爺ちゃんの部屋に連れて行かれ、ふかふかのソファに座らされる。

 そして、クッキーを一枚手渡された。

 なぜか無性に甘い物が食べたかったので、素直に感謝の言葉を伝えてクッキーを口にした。

 いつもより美味しい気がする。

 疑問に思う僕を余所に爺ちゃんが向かい側に座る。


「レイは天才かもしれんな」

「え?」


 予想外の言葉に呆けた声を漏らす。

 どうしていきなりそんなことを言ったのだろうか?

 そもそも僕は魔法を使うのが当たり前の世界で無能の烙印を押されている。

 天才と呼ばれるはずがないのに・・・・・・


「普通なら子供がいきなり魔法を発動させることは難しい」

「そうなの?」

「もちろんだ。イメージするのは簡単だが、それを具現化するのはとても難しい。初見で想像通りの魔法を使える魔法使いはほとんどいない」

「意外だね」


 爺ちゃんの説明は予想外だった。

 魔法が発達した世界であれば、もっと簡単に魔法が使われると思っていた。

 イメージを具現化するのであれば、もっと自由自在に使いこなしているはずだと。


「基本的にイメージするのは普通の人間ができないことだからな。自分にできないことをイメージして、すぐに具現化できると思うか?」

「うぅん、たしかに難しそう」


 追加の説明でようやく納得できた。

 いくら魔法という補助があるとはいえ、できなかったことをいきなりできるようになるとは思えない。

 何度も練習する必要はあるだろう。


「だが、レイはいきなり【身体強化】を発動できた。それだけで天才だと言える」

「あれでできてたんだ。でも、すぐに解除されたよ?」


 右手の筋肉が膨張したのは幻覚ではなかったようだ。

 だが、それも一瞬の出来事だった。

 果たして、あれは成功と言えるのだろうか?


「すぐに力が抜けたことが成功の証だ」

「なんで?」


 意味が分からない。

 その場でへたれ込んだのは情けないと思うことはあっても、成功したとは言えない気がする。

 そんな僕の考えに気づいたのか、爺ちゃんはさらに説明する。


「力が抜けたということは、体内の魔力がなくなったのだ。そして、魔力がなくなったということは、魔力を使われたことになり・・・・・・」

「もしかして、【身体強化】が成功したから?」

「そういうことだ」

「・・・・・・なるほど」


 ようやく理解できた。

 たしかにその理屈であれば、僕の【身体強化】は成功していたのだろう。

 だが、気になることがある。


「でも、このままじゃ何もできなくない? あの程度しかできなかったのに、一瞬で魔力がなくなったんだよ?」

「そこは心配しなくて良い。むしろ最初はあれぐらい少ない方が良いんだ」

「え?」


 不安を口にするが、爺ちゃんはあっさりと否定する。

 魔力が少ない方が良いというのはどういうことだろうか?


「言っただろう? 自分の体に見合わない魔力を使えば、逆に体の負担になると」

「もしかして、下手に魔力が多かったらまずかったってこと?」


 想像以上に怖い状況だったらしい。

 もし俺に魔法の才能があったのなら、発動させた時点で大変なことになっていたのかもしれない。


「まあ、その心配はしていなかった。レイの魔力量なら大きな負担にならないと判断していた」

「判断していた、って・・・・・・もしかして、僕の魔力量がわかるの?」


 驚きの連続だった。

 どうしてそんなことがわかるのだろうか?







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