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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第三章  自由を求めて
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3-3 森に潜むスライム

 この体になってまだそれ程時間が経過していなくて、自分の特徴もわからないままだけど、とにかく最低限出来る事は把握している。


 不本意ながら、スライムとして転生して来た時の経験が役に立っている。

 ありがたいけれど、なんだかありがたくないな~


 違いといえば、まずは今回のスライムは魔力を持っていて、それなりに魔法を扱えるという事だろうか。

 これはイフリードになっていた時に魔法を操っていた事で、自身の中にある魔力の流れを把握出来るようになっていたらしい。


 おかげでどの程度魔法を操れるのかはわからないが、使えるという確信があった。




 次に判明した事は触手の変化だ。


 レイシアの下から去る時、衝動に任せ窓から飛び出してみたのだが、窓枠の位置は人間サイズだったので乗り越える為には触手を伸ばさなければいけなかった。

 まあこれは当たり前なのだが、問題はその触手だ。


 僕自身特に意識した訳ではなかったのだが、窓枠をがっちりと掴んだ触手の形状が、人の手のように変化していた。


 これも新たなスライムの特性なのかな?

 上手く集中すれば、姿形を変える事が出来る可能性があるだろう。


 たぶん声が出せたのは人間だった時の名残、無意識に声を出すという行動に反応して、体の中に声帯を作り上げたからだと推測する。

 できれば地球にいた時と同じ声がよかったのだが、そこまでは贅沢というものなのだろうな。

 何となくこうすれば声が出るみたいな知識だけでは、人間だった頃そのままの声帯を作る事は不可能だったのだろう。


 ほんのわずかな時間でも、いろいろと出来る事が判明した。


 まあおいおい出来る能力については調べて行こう。

 とりあえずはどこに行くかが問題だ・・・・・・




 勢いで窓から飛び出すとそこは二階分の高さだったけれど、足を伸ばして問題なく地面へと着地することが出来た。

 これもミノタウロスの時、地面に叩き付けられる時の経験が生きている。

 何事も経験とはよく言ったものだが、本当にそれを実感する時が来るとは、人生って面白いものだ。


 今回核が無かったからか、ダメージはもちろん気絶する事無く着地に成功する。

 思わず体操選手のようにポーズを取りたくなるな。


 いや、今はそんな事をしている場合ではないか、とにかく連れ戻されないよう距離を取らなくては!

 レイシアの使い魔であるうちは、僕は召喚主の命令には絶対服従なのだ。

 少なくとも声が聞こえない所まで逃げる事を優先しておこう。




 着地した場所はどうやら校舎の裏手で、森に隣接しているようだ。


 確かこの森は低級のモンスターが住んでいたはず。


 森といっても深い森ではないようで、適度に奥が見渡せるのは初心者にありがたい事だろうな。

 それでも武器を振り回すのには邪魔になるのだろう。よく見てみると、傷付いた木があちこちに見受けられる。


 モンスターについては学校の生徒達が小遣い稼ぎと、戦闘訓練をする為にわざと残していたはずだ。

 確か定期的に冒険者や教師が、モンスターを間引きしているって言っていたか。

 今は逃げ込むには都合がいい場所だろう。


 そのまま森の中へと入って行く。


 まずは他の人に見付からないように行動しないとね。


 森の中に入り込んでしまえば、スライムの体格なら早々見付かる事も無い。

 町に逃げ込むより、よっぽど良い条件の場所だ。


 ある意味食料も豊富にあるだろうしな。

 スライムになって、再び食事が必要になったはずだ。そこは忘れてはいけないだろう。




 森に入ってしばらく、周囲の草などで姿が完全に隠れたところで、自分が飛び出して来た教室に意識を向けてみる。

 そこにはブレンダとレイシアの慌てた姿と、わずかに声が聞こえていたがとりあえずは無視でいいな。


 さらばと森の奥へと進んで行くと、途中でゴブリンなんかに襲われたりする。


 冒険者の卵が活動する場所だけあって、遭遇する数自体は少なめのようだな。

 はっきりいってこいつらは敵ではなかった・・・・・・


 三体が突然襲って来たのだけれど、触手を三本伸ばして顔を覆いながら宙へと浮かしてやると、あっけない程簡単に倒す事が出来た。


 気分は必殺仕事人って感じだ。


 別に首を絞めている訳でも糸を使っている訳でもないのだが、触手って結構伸びるのだな。

 それにゴブリンは小柄だとはいえ、触手で三体を持ち上げている。


 意外と力持ちかもしれない。


 決して軽く感じる訳ではないのだが、百キロくらいでも持ち上げられるかもしれないな。


 筋力測定とかしてみたいぞ。




 ゲームによってはスライムという生き物は最弱な種族なのだけれど、この世界のスライムって案外強いよな。


 これって経験を積んでレベルが上がっているからなのだろうか?


 おそらくステータスが見られないからわからないのだが、成長しているよな?

 そんな事を考えながら森の中を進む。行き先は特に決めていない。


 ちなみに久々となる空腹を感じて、チューチューと食事してみたのは周囲に一杯ある葉っぱなどだった。間違ってもゴブリンを溶かす事はしない。


 さすがにゴブリンをご飯にするのは何か嫌だ。勝手なイメージなのだが、汚くて臭いってイメージがある。

 いくら飢えていたとしても、ゴブリンだけはご飯として見られないだろうな~


 その気になれば他に木でも葉っぱでも何でも、周りにはいくらでも食べる物があるからな。

 野菜ではないのだが、そこらの葉っぱで十分腹は満たされる。


 肉も食べたいような気がするが、そっちは動物でも捕獲してみたいところだ。


 モンスターはちょっと違うな。あれは食べ物ではないだろう。




 学校からどれくらい離れたのだろうか。

 スライムの移動なので、距離的にはそこまで離れてはいないと思うのだが。小さな洞穴みたいなものを見付けた。


 入り口や中には獣の足跡みたいなものが複数残ってはいたけれど、今見たところでは中に何もいないようだ。奥はどうかわからないけれどね。


 洞穴の周辺は少し開けていて、入り口から見ていれば奇襲にあう事はなさそうだ。


 さて奥はどれくらいの深さになっているのかな?

 見たところ人工物ではなさそうなのだが。そこそこの大型動物が巣穴として作った感じにも見える。


 パッと見では奥までわからなかったので、隠れている熊とかいるかもしれないって思ったのだけれど、五メートルも進めば道が少し曲がっていて行き止まりに突き当たった。

 おそらく何かの動物が掘った穴で確定だな。住み心地はそこそこよさそうだ。




 とりあえず仮の住まいにする事に決めると、いろいろと気になる事をチェックしておく。


 まずは仮の住まいとなった洞穴の情報が優先だよね。

 ただの真っ直ぐの洞穴ではないからなのか、様々な動物などが巣穴に向いているのかどうか見に来ているようだな。狩人の技能が無いので判断が付かないのだが、複数の動物の足跡が見付かった。


 これなら食事にも困らないかもしれない。様子を見に来た動物が、食料源になりそうだ。

 中々に快適そうな洞穴を見付けたぞ。


 当面はここを活動拠点にしてもいいかな、特に疲れているとかはないけれど腰を落ち着かせよう。


 これだけ多くの動物の足跡が残っているのだ、待ち伏せして奇襲したら十分食料をゲット出来るだろう。

 逆に太ったりしてな~




 ちょっと落ち着いたところで獲物が来るのを待ち伏せしている間に、新たに変化した自分の体について確認してみよう。


 とりあえずは食事、イフリートの時は周囲の空気から魔力、熱などを吸収していたので特に食べる必要はなかったみたいだが、再び戻ってしまったスライムは当然何かを食べないと駄目そうだ。


 ただ食べる物は生き物でも無機物でも、何でもよさそうだな。

 その気になれば鉄でも土でも食べて生きていけそうなので、特にご飯を気にする必要性はない。


 あえていえば嗜好品って感じだ。


 美味しいご飯を味わいたいから、やって来る動物を獲物にする。

 これは別にスライムだからではない。普通に人間だろうが、その他の動物だろうが皆同じだろう。


 怠惰に過ごすのなら、わざわざ狩りをする必要も無い。


 ある意味スライムっていうのは便利だよな。どこにいても生きていられそうだ。

 まあ天敵になりそうな強者がいなければだけれどね~




 後食事のついででわかった事だが、どうやら体内の何でも溶かせる酸を噴出して、相手にかける事が出来そうだった。


 これは前のスライムの時には出来なかった攻撃方法だ。

 鉄でも何でも溶かせるのだから、最強の武器になりえるだろう。

 使い過ぎると、必要な食材も溶けてしまうけれどね。


 何事も適量だろう。漫然と使えばいいってものではない。


 対象の弱点を見極めて、適量の酸を噴出して仕留める。これは訓練が必要になるだろう。

 なんといっても、上手く酸を飛ばすのが意外と難しかったりした。

 ピュッて飛ばしたいのに、適量が真っ直ぐ飛んでくれないのだ。後命中率も悪い。

 そこも要訓練だろうな。




 次に魔法、属性は特に制限がなく全ての属性が使えそうだ。


 そしてさらにいえば多少は威力などが落ちそうだけど、無詠唱で使う事が出来る。まあ元々スライムが詠唱して魔法を使うっていう方が、おかしいけれどな。


 最大MP量もおそらくはブレンダより高そうだ。


 この事から今の体は、上位の魔法使いの素質があると考えられる。


 どのランクから魔導師と呼ばれるのかは不明だが、ひょっとしたら魔導師と言われるランクかもしれないな。


 無詠唱の影響か、まるで超能力のように自由に魔法が発動する。

 これは確実に強いぞ。




 次ぎにどうやら僕の体はある程度自由に変形、固定化が出来るようだ。

 ただし擬態としては体表面の色を変える事が出来ないらしく、形のみの変化がせいぜいらしい。


 でも形は自由に出来るし、体内に昔のような核と呼ばれるものが無くなったので、出来る事はかなり増えただろう。

 今なら鍵穴を通り抜ける事も可能だ。

 ほんとにゼリーそのものって感じだな。


 残念なところは、人間の姿になる事は出来ても、人間サイズにはなれないところかな・・・・・・体積を増やせないので、どうしても今のサイズで形を変えるだけになってしまう。


 それならばと、体の中を空洞にして表面上人間のようになってみようと考えたのだが、どうやら直ぐに潰れてしまう。

 ペラペラの状態では、形態を維持出来ないのだろう。


 自重で潰れた感じだな。


 魔法で表面の色を変えれば、人間っぽく擬態出来ると考えたのだが、駄目かー




 ――――――



 森の中の遭遇戦・・・・・・By ゴブリン達




 「ゴブ? ゴブフゥ(今何か動かなかったか? 草が揺れた気がしたぞ)」

 「ゴブッ! ゴフゴブー(人間隠れてる! 倒せ殺せー)」

 「ゴブウ・・・ゴブブ(違う・・・・・・弱いやつだ)」


 こいつ知ってる。


 踏めば簡単に潰せる弱いやつ。でも食べられない。

 弱いやつ、森に必要ない!


 「ゴブー(殺せー)」




 いったい何が起こったのか・・・・・・


 弱いやつ、簡単に踏み潰せるはずなのに。


 浮いている? 足が土に着いていない。

 駄目。苦しい。


 おい誰か、助けろ!


 もがいたが、仲間の二人も、同じ状態なのが見えた。

 これは水?

 池も無いのに何で水?


 わからない、何もわからない・・・・・・

 俺達、何を相手にしたのだろう・・・・・・

 弱いやつじゃなかったのだろうか――


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