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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
サイド-レイシア 初めての進化
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レ-9 スライムから炎の化身へ

 進化の結果、姿が見えなくなったバグを前にした時はこの世の終わりかと思う程愕然としたのを覚えている。


 しかしその直ぐ後、目には見えない何かが実験室から飛び出して行ったのがわかる。それと共に、私とバグを繋ぐ目に見えない何かの存在を感じた。

 目には見えなかったけれど、バグはまだ死んでなんかいない。

 そんな確信を持ちつつ、おそらく飛び出して行ったはずのバグの後を慌てて追いかける。


 バグが消えていない事が理解出来て凄くホッとしたけれど、いったいバグの身に何が起こったのかを知る必要を感じていた。


 見えない存在に進化したの?


 それにしてもバグはどこに向って、そして何をしようとしているのかな?


 主従の繋がりを信じてただ走った。




 バグがいる場所は意外と直ぐに判明した。

 校舎の中で騒ぎが起きていたので、直感的にバグが何かをしているのだと理解する。だから騒ぎの起こっている方へと走って行く。


 その途中、おそらくバグが通り過ぎたのだと思える場所を辿って行ったけど、その破壊跡は凄まじいものがあった。


 校舎には生徒が暴れた時を想定して、設備が破壊されないようにする為の、保護魔法がかけられていると聞いた事があった。けれど、バグが焼いたと思われる教室はそんな保護魔法を無視して、校舎を見事に焼き払っていた。


 「うわー。バグってばいったい何に進化したっていうのよ。この火の魔法、相当強力なやつよね。ドラゴンくらい強かったらこれくらい出来るのかしら?」


 壊れた校舎を見ていると、追い付いて来たブレンダがそう言う。


 会うのがちょっと怖くなってくるね。


 「そんなに凄いの?」

 「ええ、熱量が圧倒的ね。平凡な魔導師で出せる火力じゃないわね。上級の魔導師を連れて来てやっと同等かしら。ちょっと敵わないかもしれないわね」

 「じゃあ、もし誰かがバグの邪魔をしたら、危ないんじゃないの?」

 「そうね、この学校の教師の中でケイト先生でも抑えられないのなら、誰にも止められないかも」

 「急いで止めなきゃ!」

 「そうね。騒ぎは向こうの方みたいよ」


 私達はバグを追いかる為、騒ぎの中心に向って走って行く。


 バグはモンスターだから、危険と判断されれば討伐される危険性がある。

 だから余計に早く止めなければ、取り返しが付かない事になるかもしれなかった。


 そしてしばらく進むと、壁に大穴が開いている場所を見付けた。

 ひょっとしたらって思い中を覗き込んで見ると、バグとケイト先生が戦っているのが見えた。




 「ケイト先生! その子はバグです!」


 止めなくちゃって思うと、後は何も考えずそう叫んで飛び出していた。


 二人の間に割って入り、バグの勘違いを説明して宥める。


 ぱっと見ただけで、バグが凄く怒っている事はわかった。その相手は何故かケイト先生。たぶん何か勘違いしているんだと思う。

 まずはバグを落ち着かせて、それから話し合いをしよう。


 おそらく肉体が無くなったと勘違いしたバグは、錬金術に失敗して死んでしまったと思い込んでいる。

 私も一瞬そう思って愕然としてしまったけど、よくよく考えてみれば錬金合成を失敗しても失うものは、錬金する時に使用した私の精神力だけ。

 失敗によってバグが死ぬ事は絶対とはいえないけれど、ほぼ無いと思う。


 絶対と言い切れないのは、今までに失敗して消えたって事は無いと、ケイト先生から聞いていたから。

 ひょっとしたらどこかにそんな事が起きて、恥ずかしくて内緒にしていた場合の事を考えたから絶対とは言い切れなかった。だからほぼ無いはず。


 バグはその事を知らないから、暴れてしまったんだろう。




 それにしても進化した種族が透明だったから、レイスみたいなゴースト系だとばかり思っていたけど・・・・・・今のバグは上半身だけの人型で、全身が炎に包まれた姿をしている。

 これは火の精霊辺りなのかな?


 精霊さんは炎を消したら幽霊みたいに透明になるのかな?


 魔力の検査などで、精霊の適性みたいなものも調べてもらったけど、私には適性は無かった。


 人間で適正のある人は、ほんの一握りだからこれは仕方ないんだけれど、適正の無い人は精霊を見る事が出来ないらしい。


 今目の前にいるバグは、炎をまとっているから見えるんだけれど、こうやって人間にも見えるようにしてくれなければ、そこにいるってわからないそうね。

 進化したての時は、その状態だったんだと思う。


 ひょっとしたら普段見ている町中にも普通に飛んでいて、ただ炎を消していて隠れているだけかもしれないと思うと、結構世の中賑やかもしれないと勝手に妄想した。




 あの後さんざん暴れ回ったバグは、魔法封じが施された部屋に軟禁される事になった。


 学校施設をいろいろ壊してしまったけれど、お叱りはあまり無かった。

 ケイト先生が庇ってくれたのかな?

 一杯迷惑をかけてしまって、申し訳なく思う。


 でも先生に勧められて連金合成をしてみてよかったとも思う。かなりの戦力になるんじゃないかな?

 精霊使いの素質は無いけれど、精霊を使い魔に出来るなんて凄いと思うよ!


 けれど、バグを見に来た精霊魔術専門の先生の見立てで、イフリートという上位精霊じゃないかと指摘された。それってもっと凄い事では?


 スライムからいきなりの大出世ね。いえ、大出世どころじゃない気がするわ。

 バグがいてくれたなら、向かうところ敵無しじゃないかな?


 私としては、出来れば会話がしたかったけれど・・・・・・




 今にして思えば、ブレンダが合成用に用意してくれたフレイムリザードの卵が、大きな役割を発揮したのかもしれないわね。

 だとしたら、ブレンダにはとても大きな借りが出来ちゃったかも・・・・・・

 いずれ何かお返し出来そうな物を見付けないとね。

 がんばっていろいろな冒険をしよう!


 軟禁されている間バグが暇を持て余していないか、大人しくしていてくれるのか心配になって、ちょくちょく様子を覗きに来てみると・・・・・・結構やりたい放題、好きに勝手に楽しんでいた。

 そもそも大精霊とまで言われたイフリートを、あんな部屋に閉じ込めておけない事は初めからわかりきっていたけれど・・・・・・それにしても自由を満喫し過ぎだわ。


 魔法を禁止された部屋に軟禁されていたはずなのに、見に来てみれば何事も無く外を飛んでいた。


 スライムだった時も自在に出入りしていたみたいだけれど、一応は部屋の側にいてくれているみたい。

 少しは反省しているのかな?


 そのまま様子を窺っていると、部屋に戻って行く。たぶん大丈夫そうね。


 一応やり過ぎたって思ってはくれているんだと思う。

 しかし、なんていえばいいのか落ち着きがないなー


 明かりと空気の入れ替えの為にある鉄格子付きの窓から、炎の鞭が出たり入ったりしていた。

 暇潰しなのかな?

 いや、外にある石を攻撃しているみたいだから、訓練なのかもしれない。

 魔法封じがまるっきり意味を失っているわね・・・・・・


 見ていても何がしたいのかはわからなかったけれど、子供が一人遊びしているみたいでちょっと微笑ましいなって思える行動をしていた。

 部屋にいる意味が完全に無くなっているけど、バグは知能が高いので部屋には留まってくれるでしょう。




 さてさて、バグが大人しくではないが部屋で謹慎している間、私もケイト先生から連金合成についての話を聞いておこう。

 失敗の話は聞いた事がないらしいけど、実際のところ隠しているだけとかないよね?

 誰しも失敗話は残さないもの。


 「絶対とは言い切れませんが、大失敗した時の話は伝わっていますよ。ただの失敗の時は以前に説明した通り、術者の精神力だけが消失します。素体と素材の消費はありませんね」

 「その大失敗っていうのは?」

 「まず失敗にもいろいろとありまずが、錬金陣の失敗はほとんどの場合、何も反応が起きません。失敗というよりも錬金合成そのものが開始されないパターンでしょうね」


 これはわかる。


 錬金陣が発動していないのだから、合成を始める工程にまで進まないのよね?


 「次に素体の強さが伴わない、素材が合わない場合が失敗になりますが、これが通常の失敗に当たります。それに変則的ではありますが、錬金陣が間違っているのに合成が進む場合があるそうです。これは確認されていないようですが、一応失敗していると思っていいですね」

 「その場合はどうなるのでしょうか」

 「素体の錬金合成は、通常と違う形で完成するそうです。意図していた結果とは違っているそうですね。ただこの場合でも消失する事はありません。予定に無い進化とでもいえばいいかもしれません」


 ひょっとしてバグの進化先って、これになるのかな?


 何が成功なのかわからないから、確認のしようがなさそうだけれど・・・・・・


 「それで大失敗の場合ですが、素体と素材の消失は現在のところ確認されていません。術者の精神力が根こそぎ失われたという話は聞いていますね。当然術者はその場で気を失ったそうですが、しばらくの間上手く魔法などを使えなくなったと聞いています。大失敗の代償でしょうね」

 「そうですか・・・・・・あの、どうして大失敗したんですか?」

 「さあ、さすがにどういう失敗をしたのかはわかっていません。私としてもそこは知っておきたかったのですが、本人は知られたくなかったのでしょうね」


 確かに。普通に失敗した話ではなく、そんなに手酷い失敗をしてしまったとなれば、記録に残したくはないかも。


 しかし重要な事は、錬金合成を試してバグがいなくなる可能性は、限りなく低いという事だよね。

 それがわかっただけでもよかったと思う。


 さて、不安材料がなくなったので、後はバグだけに頼らないで冒険出来るよう勉強をしよう!




 バグがイフリートへと進化した事で、私の生活も大きく変化したみたい。


 今まで陰口を言っていた生徒は口を閉ざし、逆に逃げるように私達に道をゆずるようになった。これはバグが悪戯するからっていうのもあるのかな?


 今までの悪戯はスライムの触手だったけれど、今は炎の鞭だからね。あんなのに叩かれたら危険だわ。

 火傷しちゃう・・・・・・


 ちょっとはいい気味って思ったりするので、まあ程々に止めるように言っておこうかな。


 遠目に見て近寄って来ない生徒達は、今まで通り無視しておけばいいかと思うのだけれど、それよりもバグだわ。


 せっかく人型に近い形になったと言うのに言葉が違うのが不満だった。


 一緒に行動していると、どうしても会話をしたくなっちゃう。パートナーだからね。


 それに今までは一緒にご飯を食べていたのに、精霊になって食生活が変わってしまったので、一緒に食事をする事が出来なくなってしまった。

 やっと喋ったと思ったら言語が違うからお話は出来ないし、それどころか一緒にご飯も食べれなくなるなんて。

 これじゃあ強くなっても私的にはマイナスだよ!


 今まで出来ていた事が出来なくなるって辛いんだなって、初めて思い知った。


 落ち込みそうになっていたところバグ自身が教えてくれたんだけれど、調合で使うアルコールランプを持って来たら、一応は一緒の食事気分を味わう事が出来るみたい。

 でももう少しこう何ていうか・・・・・・

 人間らしく接して行きたいというか。とにかく何かが違うって気分にさせられる。




 それともう一つ大きく変わった事は、以前バグが魔法を使う時に私から精神力を持っていって魔法を発動させていた。


 けれど、今度はその逆で私の方がバグから力を借りて、魔法を使う事が出来るようになっていた。

 しかも長い詠唱を必要としない簡略魔法で・・・・・・


 昔のロウソクの炎のような威力から、一気に魔導師級の威力へと変化していた。

 とはいっても火属性以外は、もっと使えなくなっていたんだけれどね。


 自分が思っていたよりもバグの影響が大きかったみたい。


 でもって私の炎を見た周りの生徒達は、今までやって来た行動に対しての報復でも恐れているのか、淵の方へと逃げて行った。

 私は別に仕返しとか考えてもいないのにね。


 その代わりというのか、ブレンダがよく話しかけてくれるようになったかな。

 ひょっとしたら人間で出来た初めての友達って感じなのかも?


 何故昔はまるで接点がなかったのだろうと思えるくらい、ブレンダとは気さくに付き合えるようになっていた。




 ――――――



 肝試しが通じない!・・・・・・By バグ




 ふと思ったのだが、この異世界の女子って幽霊も虫も怖がったり嫌がったりしないよな。


 全員が全員かはわからないが、漏れ聞いたところではキャーキャー騒いでいる者はいないそうだ。


 アンデットだと、スケルトンやゾンビになってくるが、これは男でもギャーギャー騒ぐ者がいそうなものだ。


 しかし、こちらでは誰も騒がないどころか、普通に殴り倒しているらしい。

 やっぱりありふれたモンスターって意識なのだろうな。




 だからといって、顔色一つ変えずに殴り倒している冒険者っていったいどうなのだろう?


 武器や服に変な汁がこびり付いて、嫌なものではないのかな?

 ランドル辺りならそれでも平気そうな表情を浮かべていそうだ。


 やっぱり僕には冒険者は向いていないって思ったよ。




 何でこんな話をしているのかって言えば、今の僕って幽霊みたいなものに近いだろう?


 炎を消して脅かしてみたのだが・・・・・・誰も怖がっちゃいない・・・・・・


 嫌別の怖がり方をしているといった方が正しいか?


 あいつら、僕をイフリートだと知って怖がっているのだ。


 あっているんだが、なんか納得いかない!


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