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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第二章 マジで死ぬかと思ったよ
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2-12 ジャイアント

 ブレンダが僕を見て突撃ってサインを送って来る。


 その後直ぐにみんなにも散開するよう指示を出していたので、全てを僕だけに押し付けるつもりがないようだ。

 たぶん自分に出来る事をしてくれるのだろう。


 ジャイアントはまだこちらに気が付いていない。完全な不意打ちだ。

 一気に仕留めてしまおう!


 「キュキュルキュウ(焼き尽くせ、ファイアランス)」


 放たれた炎の槍は、吸い込まれるようにジャイアントの後頭部へと飛んで行く。その数は六本。


 「炎よ燃えろ、ファイヤアロー」


 僕のさらに後方に控えていたレイシアも、僕の魔法に混ざるように追撃を加える。


 先制攻撃だったので、避ける事無く全弾命中したようだ。レイシアの炎の矢が命中したのは背中辺りかな。

 広い背中なので狙いやすい。


 グガァ!


 こちらに気が付かず食事を続けていたジャイアントは、後頭部をバットで殴られたかのように頭をガクンッと下の方へと振り落とす。


 なんか予想していたような結果じゃないな。

 ぱっと見で、たいしたダメージが入っていないように見えるぞ。


 ジャイアントは後頭部を手でさすりながら、後ろを振り返る。無論レイシアの攻撃跡も皆無だった。


 こいつは魔法抵抗でもあるみたいだな。あるいは火属性無効とかか?


 予想を大きく覆され、身を隠すのが遅れた。

 ジャイアントは僕の事を発見し、怒りながら立ち上がるとこちらに向かって襲い掛かって来る。


 デカい。確か身長五メートルは超えるとか資料に書いてあったか・・・・・・

 実物を見るまではピンと来なかったが、まさに巨人だ!

 それが怒りの形相で走って来るのは、恐怖以外の何者でもないな。




 「凍てつく刃よ、アイスソード!」


 僕から見てジャイアントの右後ろから、ブレンダの魔法が撃ち出される。


 魔法の系統は、僕の火属性に対して対極にある水の属性。そのワンランク上に当たる氷の魔法。

 僕とレイシアの魔法が当たった時の感触を見て、おそらくジャイアントは火に対する耐性があるとのだと判断したのだろう。


 しかし残念ながら、ジャイアントの左足に当たった氷の魔法は、足の表面を少しだけ凍らせただけで大した効果があったようには見えなかった。

 足を狙ったのは、ジャイアントの移動を妨害する為だろう。狙いは悪くない。


 それにしてもこいつは魔法全般に耐性があるのか?

 そうなると、僕はほとんど無力になってしまう可能性が高いぞ・・・・・・魔法系のモンスターだからな・・・・・・




 「だったらこれでどうだ!」


 魔法が通じないって可能性は考えていなかったので、ちょっとやばいかなって考える。


 すると、ブレンダの反対側の木の陰に隠れていたランドルが、持っていた片手剣で攻撃を仕掛けた。


 残念ながら彼は盾持ちの戦士だから、パワーファイターのような攻撃力は持っていない。


 それでも精一杯力を込めて殴ったのだろうな・・・・・・逆にしびれる手を抱えて、盾を構えながらの後退を余儀なくされていた。

 こいつ物理抵抗まで高いのか! 完全に予定外だ。


 「いってー、こいつの皮膚。岩でも叩いたみたいに硬いぞ!」


 これで僕達パーティーの誰の攻撃も、効かないって理解出来てしまった。


 まずいな、早めに撤退した方がいいのかもしれない。

 あきらかに格上のモンスターだ。下手をすれば全滅もありえる。


 しかしジャイアントからしてみれば取るに足らない相手から攻撃をされて、しかも対してダメージはないものの半端に痛みを味わったであろう相手を逃がすつもりはないようだ。


 完全にこちらを敵と判断して怒り狂ってしまっているようだ。

 これは簡単には逃がしてくれそうにないな~


 まあジャイアントからしたら人間なんて、ただの餌だからそもそも逃がそうと思っていないだろうがな。




 予想は当たっていた。意外と素早い動きで一番近場にいたランドルを追いかけ始めたのだ。

 素早いというか、単純に身長差から一歩が早いだけだな。


 動作自体は非常にゆっくりに見える。身長に釣り合った動きだろう。

 だからか、必死に木を利用して逃げているランドルの動きに、付いて行けていないようだ。

 ただ一歩の踏み出しで、せっかく開けた距離が詰められるのを見ると、時期に追い詰められるのは目に見えている。


 「ウオォォォ!」


 メキメキメキッ


 突然叫んだジャイアントは、その有り余る馬鹿力を発揮した。


 ランドルが木を上手く利用しているのが余程癇に障ったようで、力尽くで圧し折り障害になっていた木を跨いで来たのが見えた。


 ちくしょう、これだから脳筋の巨人ってやつは好きになれないのだ!

 何でもかんでも力尽くで突破して来る。


 今までのように木を挟んで距離を置く方法が使えなくなったぞ。


 ランドルを支援する為にレイシアとブレンダが魔法攻撃を仕掛けるけれど、やっぱり効果はないようだった。

 僕としてもただ見ていた訳じゃない。


 せめて視界を遮ってランドルを追わせないようにと、炎の槍を顔に向けて飛ばしてはいるけれど、ダメージは入らないようだな。

 多少目潰しの効果があるくらいだ。


 さすがに生物として火は怖いのか、顔を横に向けて炎の槍から逃れたのがわかる。


 よし、今のうちに逃げろって心の中でランドルに言っていたのだが・・・・・・横を向いてしまったせいなのか、折れた木を見付け、それを持ち上げてランドルに向かって投擲しやがった!




 「死ぬ――!」


 少しでも離れようとジャイアントに背中を向けて走っていたランドルは、直前で危険でも感じたのか、微かに後ろを窺った。そして飛んで来る木を見て、思いっ切り横に向けてジャンプする。


 ナイスジャンプ!


 直前で飛んだ為、木に押し潰されるのは避けられた。まさに危機一髪ってやつだな。

 ひょっとして金属鎧を着ていたら、避け切れなかったのでは?

 そう考えると、鎧を買える財力がなくて助かった感じだ。


 まあジャイアント相手に金属鎧を着ていたとしても、鎧の役目は果たせないだろう。フルプレートだったら、金属の棺桶だな。

 魔法の鎧でもなければ駄目じゃないか? やっぱり有るのかな・・・・・・魔法の武具!

 異世界といえば、やっぱりそういうのも有ってほしい。




 ちなみにジャンプした後の事など考えてもいない飛びっぷりだったランドルは、ゴロゴロと転がった後木の幹に叩き付けられてやっと止まっていた。


 これは結構なダメージがあったのでは?

 戦士として最低限の鎧を着ていたから、酷い怪我はないだろう。


 そっちはまあいい。

 投げ付けられた木の下敷きになるより余程ましだろう。


 しかし問題は直ぐ起き上がれないランドルに向かって、ジャイアントが突進すればアウトだって事だ。

 ここは一か八か時間稼ぎもかねて、筋力で相手の窒息でも狙ってみるしかないか。


 動かないランドルに狙いを定めるジャイアントの、背後に回り込む。

 一旦炎を消し、ゆっくりと忍び寄ってジャイアントの首へと襲い掛かる。


 ランドルに夢中になっていたジャイアントは、僕に気付く様子もなくあっさりと首に攻撃が決まるが・・・・・・

 あー、皮膚が硬いって事は首を絞めようにも、そもそもその硬い皮膚を素手で砕く程の筋力がいるって事だよね。

 これはいろいろと計算違いだった。というか、もっとよく考えるべきだった。

 取り付いた後でこの行為が無意味であった事を、理解したけれど今更もう遅い。ぜんぜん首を締め付けられていないようだ。


 せめてもの救いは、ランドルから注意がこっちに向いた事くらいだな。

 もう少しヘイトを稼いでおこうと、全身の炎を燃え上がらせる。

 せめて本能で恐れる火をまじかで感じで、取り乱せ!




 「グア、ギャギャ」


 さすがに火だるまになった生き物に張り付かれているのは嫌だったのか、ランドルへの注意は完全に逸れたようだな。


 しかしその後、首に巻き付けていた腕を力任せに振り解かれ、腕を掴まれたまま地面に叩き付けられた。


 筋力で対抗出来ないとはわかっていたが、まさかほとんど抵抗する暇もなく振りほどかれるとは。予想外過ぎて対応出来ず、なすがままダメージを受ける。

 いや、ダメージ自体は無いな。


 一瞬にして転地がひっくり返っていたのと、叩き付けられた時の衝撃にビックリして思考が真っ白になっていただけだ。

 基本物理攻撃があまり効かない体であったのが、幸いだったというべきか。油断し過ぎだな。


 正確には、どうもこの体は魔力か霊力か何かの塊で構成されていて、魔力が宿っていない武器などではダメージが無いようだ。それで助かったのだと思う。


 小説やゲームでよくある精霊の設定だな。この世界でもどうやら有効な設定らしい。


 普段は壁など通り抜けられるのだが、逆にこちらからも物質に触れる事は出来ない。しかし、体の密度を高める事でその部分が物質に干渉出来るようになるみたいだ。


 今回ジャイアントに振りほどかれたのは、腕の密度を高めていたからだろう。

 逆に体はそのままだったので、ダメージらしいダメージは無かったって感じだろうか。


 今まで何気なく物を触っていたのは、人間だった頃の感覚で、無意識にその操作をしていたみたいだな。

 意図してやれば、腕と胸の部分だけ密度を高めて首を絞める事も可能だったのだが、代わりに相手の物理攻撃もわずかだが効くようになってしまった。


 地面に叩き付けられる前に密度を散らさなければ、普通にダメージを喰らっていたところだったよ。


 危険に反応して、自然と密度を散らしていたんじゃないかな。




 ――――――



 魔法の耐性・・・・・・By レイシア




 そういえば授業で習った事があるわ。


 モンスターの中にはいろいろな耐性を持つ者がいるらしいの。


 例えばスライムも、打撃が効きにくいみたい。ただ比較的簡単に核が潰れるので、耐性があるようには見えないよね。




 今回のジャイアントの場合は、魔法に耐性があるようね。


 そうなると、単純な物理戦闘能力で、大きく劣っている私達には手出し出来なくなりそうよ。


 バグの攻撃は魔法による攻撃なのだから・・・・・・

 ひょっとして私達って、ピンチじゃない?


 でもバグならきっと、何とかしてくれるはずだわ!


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