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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第二章 マジで死ぬかと思ったよ
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2-11 廃墟に潜むもの

 途中少々ごたごたはあったものの予定より一日遅れで、目的地の村に到着した。

 村で軽く休憩と食事をして、直ぐに廃墟を目指して出発するみたいだな。

 というのもこの村から山を一日登った先に目的の廃墟があるのだが、どの道進む途中のどこかで野宿する必要が出て来るので、時間的にはいつ出発してもそう大差が無いという判断だった。


 それでも昼過ぎに出発したせいか、わりと早くに周りが暗くなって来てしまった。

 慣れない山の中の行軍で、余計な時間がかかったのだろう。一応山登りや山中でのサバイバル訓練は受けているようなのだが、そこまでしっかりと身に付いてはいないようだ。


 そんな訳で山に入って早々、野営出来そうな場所を探す羽目に・・・・・・




 不幸中の幸いか野営を決めて早々小動物を捕獲出来たり、食べられそうな草や果物などを見付ける事も出来たので、夕食代くらいは浮かせる事が出来たようだ。

 ブレンダは貴族だからお金には困っていないだろうが・・・・・・


 そして僕はまたもや、それを横目に周囲の警戒だ。


 こうして考えるとモンスターは楽でいいけれど、嗜好品的な感じで食事くらいはしたいよな。

 今のこの体では、燃えて炭になっちゃうからなー

 無念だ・・・・・・


 まあ僕の事は別にいい。彼らはまだ山道に不慣れで未熟な冒険者である。


 ここは下手に動き回って怪我をしたり消耗するよりこのまま寝る事にして、翌日夜明けと共に改めて出発する方が確実じゃないかって話になった。要するに疲れたから今日は休もうって事だな。


 で、見張りは僕と召喚された狼になった。


 まあこいつら学校でぬくぬく育てられている新米冒険者だから、仕方なくやるけれど・・・・・・本来は見張りも自分達でキッチリやらないと駄目なのだぞ。

 見ると全員爆睡している。


 そういえば、山賊が出て来たりワニと戦ったりして、疲れているのだったな。

 最初の冒険にしてはハードか・・・・・・仕方ない、ゆっくり休んどけ。




 それにしても今度の狼は僕に不思議そうな目を向ける事はあるが、以前のように見詰めて来る事はないようだ。


 結局あの時の犬っころは、何を思ってこっちを見ていたのだろうか?

 鎖に繋がれた犬を見ると、何時も今どんな事を考えているのだろうと疑問に思ったりする。


 まあそれを知ったからといって何かする訳でもないのだが、猫と違い自由がなくて、幸せなのかと聞きたくなる。

 何が幸せかなんて、本人が決めればいいのだがな。


 今はもう知る事も出来ない過去の犬っころの事を考えながら、朝が来るのを待ちつつも適当に見張りを続けた。




 翌日の朝、なんとなく幸せそうにすやすやと眠っている姿に、不公平だと感じた。なので小さな石を拾いみんなにぶつけて、朝の挨拶代わりにする。

 おーい、朝だぞー。起きろ~


 こっちは二十四時間働き詰めだぞ。いい気なものだなー

 おまけに討伐の仕事も、僕の担当だ。


 あれ? これって僕一人で来ていた方が、面倒がなくてよかったんじゃない?


 逆にお荷物を抱えているぞ・・・・・・


 「痛っ、ちょっとバグ。わかったから、起きるからやめなさいよ」

 「おいおい、今日はいよいよジャイアントとの戦闘があるんだぞ。こういう起こし方とか、勘弁してくれよ~」


 ブレンダと、ランドルがそう言いながら目を覚ます。


 レイシアは殺気でも感じたのか一発で起きてしまった為、ちょっと欲求不満だ。

 何だろう。これも成長っていっていいのかな?


 余計なところだけ成長しやがって・・・・・・




 フェザリオはみんなより少し大きめな石をぶつけたので、一発で起きたが今は頭を押さえてうずくまっている。


 こいつは・・・・・・まあどうでもいいや。


 「ランドル。そうは言っても今日のジャイアントは、たぶんバグがメインで戦う事になるんだから。貴方の体調より優先させるのはバグの・・・・・・機嫌かも?」

 「確かにそうね、体調は問題ないだろうからバグが拗ねない様に、機嫌を取った方がいいのかもしれないわね」


 レイシアの意見にちょっとびっくりだったが、意外にもブレンダがその意見に同意して来た。

 まあ確かに新米冒険者であるみんなは、あまり役に立たないかもしれないしな~

 そう考えるとがんばる僕がずっと見張りをしていて、ほとんど見学のみんながぐうぐうと寝ているのは、やっぱり納得出来ないな。


 労働環境が悪過ぎる。


 精霊だからか、まるっきり疲れないのが余計もやもやさせるところだな。

 順応しそうで怖い。


 「あー、バグ。今日はその、よろしくたのんます!」

 「よ、よろしく!」

 「私はちゃんと戦うから。まああまり手助け出来ないかもしれないけれど、一緒にがんばりましょう」

 「私も、少しはがんばる!」


 さすがにみんなが機嫌を窺うように、出来るだけ頑張るよって主張して来た。


 はぁ、仕方ないかね~


 軽く腹ごしらえをして、僕らは早速廃墟へと移動を開始するのだった。




 廃墟へと移動開始して、何時間くらい山を登った頃だろうか? 気配を感じる。


 いや僕は飛んでいるというか、浮遊しているので山登りって感じではないのだが・・・・・・レイシア達はへとへとになりながら移動していた。

 人間って大変だね~


 それは仕方がない。彼らは重力に縛られているのだから。


 問題はこれから行く先の廃墟だ。ジャイアントの住処になっているはずなのだが。


 まだ距離的には廃墟には到着していない。けれど、ごろごろと大昔の物と思えるような石の柱などが見え始めた。

 そして不穏な空気が漂っているように感じる。


 昔の痕跡はそれなりに浪漫がかきたてらえるのだが、いちいち見てもいられない。


 なんと言えばいいのか、まだ少し距離はあるのだが、強そうな存在がいる気がした。

 どのくらい強いのかはわからないけれどね。


 「キュルルウ(近くにいそうだ)」


 一応言葉は通じないのだが、警告を促がしておいた。




 「召喚、ウルフ。ジャイアントの偵察をして来て」


 レイシアが狼を呼び出して正確な位置を調べようとする。おそらくは夜一緒だった狼とは、違うやつかな。


 下手に動くとジャイアントに発見される可能性があるのでしばらく待機らしく、僕も見付からないように炎を消して存在そのものを薄くした。


 偵察に出た狼が戻って来るまでの間、僕達はほとんど動かずに喋らず、しかし緊張感を維持して待ち続ける。

 深い森にいるようだから身を隠す場所には事欠かない。


 逆にいえばいきなりジャイアントに遭遇しても、おかしくはないのだが。たぶん大丈夫だろう。


 ジャイアントと言われるモンスターは、見た目デカいだけの人間って感じだけれど知能は獣並みで、かなりの怪力だと言われている。

 残念な事に、レイシア達がまともに正面から相手をして勝てる相手ではないだろう。


 しかし知能が獣並だからこそ、付け入る隙はある。

 何も馬鹿正直に正面から挑む必要はない。こっちは騎士じゃないのだからね。勝てばいいのだ。




 それにしても、今回は僕がいるからジャイアント討伐に来ただけで、完全に討伐ランクを間違ったクエストといってもいい。

 評価としてはおいしい相手ではあるのだが、彼らの経験的にはどうなのだろう。


 レイシアの場合は、どうやら召喚している僕の経験で強くなるようなのだが、ブレンダ達は経験にならない。


 討伐に参加出来れば経験になるのだろうが・・・・・・


 僕だけで倒したら、レイシアだけおいしいのだろうな。


 言葉が通じないので指摘出来ないのだが、これもある意味経験だね。


 まあ討伐が成功すれば、好成績が貰えるので経験値は二の次になるかな。

 そもそもゲームのように自分のステータスが見られないので、この世界の住人達に経験稼ぎの概念がなさそうだ。特訓や修行みたいなものはあるのだが、経験値を稼いだらLVアップっていうものがない。


 だから冒険者も、経験値の為に戦うという概念はなく、仕事としてモンスターを倒すだけらしい。

 賞金稼ぎみたいな感じだろうね。


 まあレイシア達が本来冒険者ギルドで貰う報酬は、学校への寄付になるのだがね。




 本来ブレンダの様な貴族様がこんな危険を冒す必要などはないのだけれど、ノリや勢いと優等生のプライドで来ちゃったのだろうな~


 狼が戻って来る間暇なので、ブレンダ達の事を考えていた。


 物音を立てずにじっとするのは結構疲れる。

 僕はただ漂っていればいいのだが・・・・・・日本人の性なのか、何もしないというのはなんとも精神的にきつい。


 せめて本を、せっかく文字が読めるようになったので、暇つぶしに本が欲しい!

 そうしたら読み終わるまで何時間でも待っていられるぞ。


 レイシア達は待つ事がそんなに苦痛ではないようだな。いや、逆に得意なのかもしれない。

 軽く緊張状態なのは見て取れるのだが、つかの間の休憩って感じでのんびりしていた。


 相手はジャイアントだからな~

 だらけ過ぎるなよ?


 奇襲を受ける事態だけは避けた方がいい。体格差もあるので一瞬で全滅する恐れが高いからね。


 出来るならば、こっちからの奇襲で仕留めたいっていう望みもちゃんとある。

 僕が戦えばそう大して手間もかからないだろうとは思うが、わざわざ正面から正々堂々と戦う必要も無いだろう。


 理想を言えばさくっと終わらせて、のんびりと旅を満喫して帰りたいものだ。




 しばらくして戻って来た狼に先導させ、ジャイアントに気付かれないよう再度移動を開始する。


 ここからはみんな物音も立てずに、慎重に歩いて行かないとね。


 そこまでお金がないからか、金属鎧を着ていなくてよかったな。あれはよく煩いと聞くので、隠密行動には向かないのだ。

 念の為に武器は全員押さえているようだが。

 こっちも周囲にぶつけて気付かれるとか、よくあるミスだよね。後は枯れ木を踏んだりとかだな。


 警戒しながら進んでいたのだが、偵察して来た狼が進む先はどうも、廃墟ではないみたいだ。いったいどこに向かっているのだ?

 召喚された狼が寝返る訳もないし、不思議に思いつつも付いて行くと、少しだけ木々が少ない場所の近くで狼の歩みは止まり、その場で伏せて待機する。


 廃墟とはちょっと離れた森の中って感じか? ここにジャイアントがいるのか?


 少し歩いた先で風下から窺って見ると、何故住処の廃墟じゃなく森の中にいるのかを理解した。

 ジャイアントは僕達に背中を向け、野生動物を捕まえて食事をしていたのだった。


 まあ廃墟を守っているとかでも何でもないので、普通に周辺に出歩いているのだろうな。だからこそ人間に発見されて、討伐依頼が出されたのだろう。

 ちょっと考えれば当たり前の事だった。




 ――――――



 予定外の事が多過ぎよ!・・・・・・By ブレンダ




 何故かしら。今回の冒険はバグがちゃっちゃとジャイアントを討伐して、一気に好成績をキープ出来ると思っていたのだけれど、移動するだけでも苦労が絶えないわ。


 途中山賊は出て来るし、休憩したらしたでワニが出て来るし。

 誰か呪われているのではなくて?


 フェザリオかしら? あの子ちょっと不幸体質っぽいわよね。


 そういえばランドルもそうだけれど、私がメンバーにって入れたのに期待外れの結果だわ。


 今回の依頼でパーティー解散って言われたらどうしましょうか・・・・・・




 特訓ね! 戻ったら二人とも猛特訓してもらいましょう!


 レイシアさんとは今後とも、いい関係でいたものね。


 スライムであの強さと知能なんだから、バグには今後も期待していいわ!


 何とかこの縁が切れないようにがんばらないと!


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