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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第二章 マジで死ぬかと思ったよ
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2-8 仕事選び

 えーと何々、雑魚の定番ゴブリン退治から狼退治、ハーピー退治に猪退治、熊退治に蜂退治、スケルトン退治。スライムは無いでやんの・・・・・・まあスライムは子供でも倒せるって話だから、討伐依頼なんてないか・・・・・・


 それにしてもこれでいくと、一番強そうなのは熊くらいかな?


 熊の相手を新米にさせようって言うのも、無茶っていうか結構難易度高そうだが。

 まあこっちだと動物はそれ程強いって思われていないようだ。


 実際素手で格闘しろって話じゃなく、武器を使えば何とかなるのだろう。


 そうだな・・・・・・僕ならもうワンランクくらい上の相手が欲しいところだな。

 初の依頼なのでランク的には、ミノタウロス辺りの討伐がいい。

 ワンランクどころじゃないか?


 だが実際にミノタウロスなら余裕で倒せる。いや、あれはスライムだったからなのか?


 今だと苦戦するのだろうか・・・・・・スライムだった方が強かったとかだったら、洒落にならないぞ。




 ようやく周囲に何も異常が無いと警戒を解いたブレンダが、依頼の一覧をチェックする。


 やはり彼女もたいしたモンスターが載っていないのを見て、少し不満そうだ。


 僕は伝わるかどうかわからないが、ブレンダがこちらを向いた時に人差し指を二本突き出して、頭の上に角って感じの合図を出す。続いて手に斧って感じのジェスチャーをして見せる。

 あ、伝わったっぽい。


 上半身だけとはいえ人型に近くなったので、ジェスチャーの表現力が上がったかもしれないな!


 付き合いはまだまだ浅い仲だが、意思疎通が出来るようになるのはいいな~


 「すみませんが少しクエスト一覧の相手が、小物過ぎるのでもう少し対象のランクを上げてもらえないでしょうか?」

 「不満に思うかもしれんが、こちらとしても無理な斡旋をして何かあっては責任問題になるんでな。ギルドの面子にかかわって来る。そこは我慢してもらうしかないな」


 やっぱりそうなるか。




 こちらの実力を証明出来れば、大丈夫って判断してもらえると思うのだけれど・・・・・・


 ここでごねてもルールならば仕方ないかな。

 役所仕事はだいたい融通が利かないっていうのが常識だ。

 ここは熊辺りの討伐依頼が妥当かなって考え、みんなの様子を探ると、レイシアのバックパックが目に入る。

 ひょっとした、モンスターから集めた討伐部位を入れたままじゃないか?


 生徒達が集めた討伐部位は、普段冒険者ギルドなどで換金する事で、生徒達自身のお小遣いとなっているらしい。

 ようはモンスターを一杯倒せる生徒は、自身の装備を充実する助けにそれらのお金を使う事が出来るし、普通に贅沢品にお金を使ったりして楽しんだりも出来る。

 贅沢や楽をしたいなら、頑張って稼げよ! しかし無理はするな! っていう、学校の方針だと考えられる。


 今は学校の考え方などどうでもいい。


 レイシアは今まで落ちこぼれって言われ、ろくにモンスターを倒した事も無かったので、それら討伐部位を拾いはしたがまだ換金していない。


 ブレンダとの雑談で知ったのだが、僕と出会うまでまともにモンスターを倒した事がなかったそうだ。


 スライムは討伐部位が残らないそうだし、そもそも何か残しても引き取ってくれないだろうなー




 とにかくだ。こっそりと換金していたら別だが、ずっと一緒にいたからまだ持っているはずだ。


 レイシアは、宿舎に討伐部位を残しておくようなうっかりさんではないと思う。

 一応それらは現金のようなものだしな。


 あまり考えたくはないが、残して行って盗まれでもしたら大変だろう。


 そうなると、まだバックパックの中に入れたまま、持ち歩いている可能性が高い。それか冒険者ギルドに来る予定になっていたので、ついでに換金しようと持ってきている可能性もある。

 それらを見せれば実力は十分だと、納得してもらえるのではという考えが頭をよぎった。


 なかなかいいアイデアでは?




 レイシアにバックパックを示すように合図を送る。


 首をかしげながらもレイシアがバックパックを下ろして、僕が中身を見やすいように入り口を開けてくれた。


 何だろうって表情をして、バックパックを持っている。さすがにこちらの考えを推し量ることは出来なかったようだな。

 ブレンダも、よくわからないって感じだ。


 ではでは手にまとう炎を消してバックパックの中を漁り、これかなって感じの物を引っ張り出す。


 取り出したのは、ミノタウロス討伐の時に回収された戦利品の数々、ついでにリザードマンの物も引っ張り出す。

 それを見てブレンダがなるほどって感じで、出したアイテムを受付の前にある台に並べ始めた。


 これが僕達というか、僕のなのだが実力証明になればいいが・・・・・・果たしてどうかな?


 「えっと私達は、以前ダンジョンに潜った時にリザードマン、ミノタウロスなどのモンスターなら問題なく倒せるだけの戦力を持っています。これでも上位の依頼を見せてもらうことは出来ないでしょうか?」

 「えっと少々待ってくれるか。今鑑定家の方で念の為に調べてもらうから」

 「わかりました」


 そう言うと受付の人は、提示された討伐部位を持って奥へと引っ込んだ。




 受付の人が帰って来るまで、ここでボーとしていてもしょうがないな。

 とりあえずカウンターの後ろに長椅子が置いてあるので、そこで座って待つ事になった。


 そんな僕達の行動を、酔っ払いであるはずのベテラン冒険者達は何気に観察していたみたいだな。酔っているはずなのに、ちゃっかり情報を収集してやがる。


 酔っているのは演技だったのか? それともベテランとして常に周囲の情報を集めているのか?

 彼らのざわめきが聞こえて来た。

 暇潰しにそれらの会話に聞き耳を立ててみると・・・・・・


 「おいおい、学生でミノタウロスが余裕だなんて、どんな才能だよ」

 「いやいや、上位精霊がいるのなら逆にそれくらいは楽に倒せるだろうよ」

 「上位精霊に勝てる奴なんか、この町になんかいやしねえよ。倒せるやつって、一部の最上級冒険者じゃないか?」

 「あーそういや、上位精霊なんかほとんど化け物並みの強さだからな、ドラゴンでも連れて来ない限り、相手にもならないのか」

 「そう考えると、やっぱうちのパーティーに引き入れたいな」

 「馬鹿言え、俺達のパーティーにこそ相応しい。こっちは、ドラゴンや悪魔なんかとも戦っているんだからな」


 がやがやと騒がしいかった。


 でも直接の勧誘には来ない。そこは紳士なのか?

 聞こえるように喋ってはいるようだが・・・・・・


 それにしても、まだレイシア達は学校も卒業していないぞ。勧誘すんなー




 しばらくそんな騒がしさの中、僕達以外の有益な情報とかないかと聞き耳を立てていると、受付の人が戻って来た。

 ブレンダが素早く受付の前へと移動したので、一緒に前に出る。


 他のパーティーメンバーは、のんびりと後ろから歩いて来ていた。


 ちなみに受付の人が直ぐに来たので、僕達の噂話しか聞き取れなかった。

 何かしら有益な情報も欲しかったのだがな~

 ホットな情報は、今この場にいる僕達だったらしい。


 「それじゃあこっちの依頼一覧から選んでもらえるか?」


 その言葉を聞き、ブレンダと一緒にその一覧表とやらを覗き込んだ。


 リザードマン退治、マイコニッド退治、スペクター退治、ジャイアント退治、ミノタウロス退治、ラミア退治、ヴァンパイア退治。

 おー、一気に討伐ランクが上がったな。これなら満足出来そうだ。


 しかし念の為僕はヴァンパイアを指差して、首を振っておいた。

 こいつだけは頭がいい場合、僕達では苦戦しかねないと考えたからだ。


 ただでさえ格上っぽいのに戦術まで使って来た場合、こっちが危険だろう。


 レイシア達はまともに連携出来ないからな。


 こっちを見たブレンダが、わかったって感じで軽く頷く。

 まあ他の相手ならどれでもいいかな?




 ブレンダは一覧をじっと見詰めた後、受付に向かって声をかけた。


 「すみません、ではこのジャイアント退治の詳しい情報をお願いします」

 「あいよ」


 受付の人がいくつかの羊皮紙を見て、そのうちの一枚をブレンダの方へと差し出す。


 やっぱり浪漫あふれる羊皮紙だが、日常的に使うのには向いていないな。


 出来れば海賊とかが描いた、宝の地図が欲しい。

 羊皮紙を広げながら、宝探し! 憧れるな!




 「ありがとうございます」


 受け取ったブレンダがそれを僕達にも見えるように差し出して、情報確認を促す。


 僕も中身をいちべつして土地柄以外はおおむね問題無いと判断する。


 この世界の土地勘なんかないので、どこどこにいますよって書かれていても判断なんかしようがないよね~


 クエストを見ていたレイシアは、ふーんとあまり考えていない様子。どうせ僕に任せればいいとか考えているのだろう。

 冒険者になりたいのなら、ちゃんと自分も動いてくれよ。

 僕としても冒険は望むところだから戦うけれど、何もかも任せるっていうのは困るからな。

 基本自由にやらせて欲しい。


 他の二人は自分達にジャイアントなんか、倒せるのかよってちょっとビクビクした感じ。

 男なのにびびりだなとは思わない。


 本格的なモンスターとの戦闘なんて、早々慣れるものじゃないのだろう。学校のダンジョンは、ミノタウロス以外何とか出来そうなモンスターしか配置されていなかったからな。


 基本一体ずつ、それを一パーティーだいたい五人から六人でたこ殴りにするのだ。

 ちょっと指導を受けた素人にも、十分勝てる相手なのだろう。


 いわば今までの戦闘は、ゲームでいうところのチュートリアル。生徒に倒しやすいよう状況が整えられた戦闘だった訳だ。


 本物の冒険に、いきなり大物相手ともなれば、腰が引けたとしても仕方がなかろう。


 僕は何故かゲーム感覚で楽しんでいられるのだがな!




 そんなパーティーメンバーを眺めた後、ブレンダがこちらを見詰めて来た。

 あー、最終判断って僕なのね。


 問題ないんじゃないかって感じで頷いておいた。


 そもそも僕がしとめる前提だしな。僕に選択権があったようだ。


 「それでは、ジャイアント退治の依頼を受けたいので、受理してもらえますか」

 「おう、本来であればギルド証などの提示義務があるが、今回は省かせてもらうぞ。お前達は学生だからな。それじゃあこっちの討伐依頼内容を熟読して、問題がなければ書類の下のところにお前さんらのサインを貰えるか」


 そう言うと何やら契約書らしき羊皮紙を差し出して来た。


 覗き込んで確認すると、一パーティーに一枚の書類らしいな。


 ようはクエストに失敗してもギルドに対して文句を言いません。依頼を途中キャンセルした場合や、失敗した時などは罰金が発生するとか、そういう契約書だった。

 下手をしたら死ぬ事になるし、自己責任で受けてくださいねって事だな。これがそのまま身内への遺書代わりにもなるようだ。


 成功した場合の報酬なども書き込まれていたが、今回のお金は学校に寄付されるものとなっていた。

 これランクの高い討伐に成功したら、その成功報酬で成績に差が出るって事なのだな。


 お金を一杯稼いで、一杯寄付した生徒が成績優秀者って訳で、稼いだお金はそのまま学校の運営資金となる。

 おー、結構上手い事考えているじゃないか~

 せこいけれど・・・・・・




 こっちで感心している間にブレンダ達は、書類の下の部分にサインをする。


 これって羽根ペンってやつか。

 カリカリやっていて、書き難そうな筆記用具だった。ボールペンのようにささっとはいかないようだな。

 でもなんか面白そうだ。


 交代でサインを書くのにしばし時間がかかり、ようやく討伐依頼を受けることが出来た。


 これでようやく冒険が始められるな!




 ――――――



 初々しいねえ~・・・・・・By とあるギルドの戦士。




 ここリンデグルー城下町にある冒険者ギルドには暗黙のルールが存在している。


 それは冒険者養成学校の生徒にちょっかいを出さない事。


 威圧しない、からかわない、喧嘩を売らない、勧誘しない。

 彼らはいずれ、俺達の後輩になる予定だからだ。


 身内で削りあうのも馬鹿らしいし、新人の数を減らすメリットが存在しない。そもそも冒険者なんていつ死ぬかわからん職業にとって、新人が入って来ないなど死活問題でもあるだろう。

 こっちだってメンバーに欠員が出れば、補充しなきゃならねえ。


 新人がビビッてやめて行くのは、こっちにも痛手だ。


 まあ、そんなやつらはそもそもこんな職業には向いていないんだろうけどな!


 まあとにかく、学生をいじめるなって感じだ。




 だが有能な戦力となればどうしても勧誘したくもなる!


 少しでも興味を持ってもらう為に、俺達のパーティーに入ればドラゴンと戦えるぞとアピールする事を忘れない。

 気付いてくれたかな?


 あんまりおおっぴらにアピールするのは、ギルドと他のパーティーにも制裁されかねん。

 ここはさりげなくだ。うーん、まだピンと来ないか?


 仕方ない、自分達の事で忙しいのだろう。


 こうなったら酔った振りしつつも、しっかりと顔を覚えておかなければ!

 町中でも見かけたら、それとなくアピールせねばならんからな!


 卒業するのが今から待ち遠しいな!


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