表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第二章 マジで死ぬかと思ったよ
25/39

2-6 模擬戦闘

 相手をしてみた感想としては・・・・・・

 レイシアにいたってはド素人って感じで、完全に何をしていても無視していて問題がない状態だ。


 この子、何で冒険者なんかになろうって考えたのだろう・・・・・・


 ランドルは腰が引けまくって全然盾の意味がない。

 役目が盾なのだから、攻撃を受け切らなければ役割を果たせないのだ。それなのに受けると吹き飛ばされる。

 年齢はともかく、体格なら既に立派な成人男性に見えるのだがなー。もっと肉を食え! 食って体重を増やすのだ。


 おまけに真正面から受け止めるものだから、衝撃をもろに受けちゃって、これじゃあ自分より弱い相手の攻撃しか受け止められない。

 やっぱり体重を増やしても、駄目だろう。




 フェザリオも、これでよく自衛くらいは出来るなんて自己申告したものだと言いたい。


 はっきり言ってレイシアより体力がありますって程度で、戦闘が出来るレベルには達していない。

 もし僕が指導者なら、基礎訓練から始めるんじゃないかな?

 何が悪いって指摘する状態じゃない。全部だろう。


 まあ神官についてはよくわからないので、そっちは役に立つのかな?

 回復専門って感じだと思う。


 それはそれで、パーティーには必要不可欠な存在だ。自衛出来るという宣言が見栄を張った感じなのだろう。




 最後ブレンダは唯一まともな判断と、ちゃんとした攻撃をして来ているけれどまあこの程度なら怖くないな・・・・・・


 パーティーのみんなとお互いに無言で見つめ合う。


 まあ会話出来るのであれば、いろいろと指摘したりも出来るのだが、残念ながら自分達で気付いてもらうしかない。

 どうしようかなって感じだよね。


 ブレンダ以外は手も足も出なかったさっきの模擬戦闘をぼんやりとして思い返していると、ブレンダはここまでとはって感じで呆れているようだった。


 今までは個人で頑張って来たのだからな。パーティーを組んで直ぐは仕方が無いだろう。


 これでも個人では上手くやれていたのか、実際に組んでみたら技術不足が発覚したって感じなのか・・・・・・


 相手がただの的で、今まで学んで来た技術を披露してもらえば、そこそこかなとは思う。


 だがこれから相手をするのはモンスターなのだ。動きもするし、反撃だってして来る。

 それに人間と同じ体格をしていることなど、極稀でしかない。

 それぞれに対応した戦い方を身に着けるべきではないだろうか。まあそこの部分が経験なのだろう。




 あー、会話出来ればいろいろと指導出来るのにな~

 まあ無理なら無理で、他の方法でも考えるか・・・・・・


 だがいずれは格上と思えるようなモンスターとも、戦う時が来ると思うぞ。

 そういう時の為にパーティーメンバーの特性を理解し、連携していかなければいけない。それが出来て始めて冒険者といってもいいだろう。


 今はまだ学生だからってところだろうな。

 最悪僕が片付けていけば問題ない。相手次第だがなー




 「キュキュル(いでよ、サラマンダー)」


 仕方ないので下級精霊に属する炎の精霊を召喚、模擬戦闘のレベルを思いっきり引き下げる事にした。


 精霊召喚については、確か上位の精霊は、下位の精霊を支配出来るって小説などに書いてあったので試してみた。


 正確には出来るのではって推測したら、どうやらこの体が自然とその方法を知っていたのだ。


 日本のラノベ知識が凄い! 異世界でもその知識がばっちりと通用するぞ!

 いろいろと知識を試してみたいところだが、今はこっちに集中しよう。レイシア達が見ているしな。


 ブレンダもこちらを見ていたが、レイシア達と違いその内容は違うっぽい。


 レイシアとランドルとフェザリオは、何か出て来た! って感じだな。


 そしてブレンダは僕に比べてあきらかに格下の相手が現れて、僕が難易度を下げた事を察したようだ。


 しばし悩んだ後、まあそれも仕方ないかって表情を浮かべる。

 こちらの意図がわかったようで、少しだけ自尊心が傷ついたってところだろう。


 よく考えれば、新米冒険者が上位精霊を相手にする方が間違っていたかもね・・・・・・




 後ろに下がってサラマンダーに相手を任せ、次の模擬戦闘を見ていると。

 背後からケイト先生が話しかけて来た。会話、成り立たないのにな・・・・・・


 「苦労しているみたいですね。まあ出来立てほやほやのパーティーでは、仕方ないのかもしれませんが」


 どうせ話しかけても会話が成り立たない事はわかっていたので、頷いて同意し再びみんなの様子を窺う。


 サラマンダーは僕と違って、火の玉を撃ち出しパーティーメンバーをランダムに攻撃。それをランドルが、シューティングゲームのように盾で防いでいる状況だ。


 まあ盾の役割として間違ってはないのかもしれないが、その動きが後衛職の魔法の斜線を防いでしまい、魔法攻撃が出来なくなっている。


 典型的な連携不足と、仲間と組んで戦闘を経験していない者の行動だろう。


 あれは指摘してやらないと、いつまでも気が付かないかもしれないな~


 それにしてもレイシアは何で召喚使いなのに、僕以外の召喚を出そうとしないのだ?

 火属性に火の攻撃は意味ないから、せめて召喚した何かで攻撃なり援護なりした方が有効なのに。


 今まで一生懸命勉強して来たのを見ていて、そこまで頭が悪いとは考えられないのだが・・・・・・とっさの事で度忘れしたか?


 先生に頭を下げると、まだゲームのようなやり取りを続ける彼らの方、その中のレイシアの元まで移動して行く。


 どうせレイシアはいてもいなくてもよくなっているので、戦いを無視してこちらの意見を伝える事にした。

 レイシアならこちらの意思を読み取ってくれるかもしれない。


 それと他のメンバーは僕の管轄ではありません。自分達で改善するように!




 一旦レイシアに合図を送ってみんなから離れた所へと移動すると、レイシアの足元の地面に簡単な絵を描いてみる。


 狼やら鳥といった絵を描いて、対峙する様にサラマンダーを描いた。

 棒人間を狼達の後ろに描いて棒人間から狼へ矢印、同じように棒人間から鳥へと矢印。

 今度は狼からサラマンダー、鳥からサラマンダーへと矢印を描いていく。


 レイシアの様子を窺うと、瞳に理解の印が窺えたので後は様子を見てみようと、先生のいるところまで下がって見学する。


 ケイト先生も、レイシアがどう動くのか興味があるようで、黙って模擬戦を見詰めていた。


 「召喚、ウルフ。召喚、ファルコン、サラマンダーを攻撃!」


 レイシアは、呼び出した配下達に攻撃を指示した。


 いやいくら絵でそう描いたからといって、本当に狼や鷹を出さなくてもいいと思うのだが・・・・・・もう少し火を恐れないようなモンスターとか、呼べなかったのかな?

 あれは例題として描いただけで、呼び出す配下は適当に変えるものだとばかり考えていた。正直呼び出された狼と鷹には申し訳ないと言いたい。


 まあでも、レイシア次第かな?


 ウルフはランドルの右から飛び出してサラマンダーの隙を窺い、鷹は上から隙を窺うように旋回する。

 なんとなく警戒している動物達を見て、相手が悪かったなって思う。


 さすがに呼び出された狼達も、どう攻めていいのかわからずに迷っているようだった。そりゃそうだよな。




 右往左往しながらも、狼達がサラマンダーを牽制しているのが見えた。


 そのおかげで、ランドルに集中出来ていたサラマンダーの注意がそれ、付け入る隙が出来ている。


 特にブレンダがその隙に、氷系の魔法を叩き込んでいるから、さっきまでよりは連携しているといえるだろう。

 ランドルが無駄に動き回らなくなって、支援攻撃がヒットしだした感じだろうな。


 でもってそんな狼達だが・・・・・・さすがに野生のモンスターなら火を恐れて当たり前だろうな。


 しかも全身が燃えているモンスターの相手しろって言われているのだ。

 その心中は察して余りある。そう思うと彼らの表情もどこか困り顔に見えて来る。


 がんばれ! 強く生きろ!

 思わず応援したくなる。


 あー、心の声が聞こえるようだ。ちょっと通訳してみるか。


 (こいつ燃えているぞ、こんなのどうすればいいんや)

 (いや、そうはゆうても、主の命令には逆らえまへんで)


 何でこいつらエセ関西弁?


 あまりの進展のなさに、思わず僕の頭の中が遊び出してしまった・・・・・・


 全体を見回しているとわかるのだが、訓練を続けていてもあまり改善が見られない。


 唯一レイシアが、僕の助言で戦い方を変えたくらいか?


 まあ、召喚獣の選択からしてミスって気はするのだが、あれは他に呼び出せないのか僕が絵に描いてしまったせいなのか・・・・・・そうだとしたら僕のミスって感じかな。


 結局のところランドルは戦士っていっても恐々と盾を振り回すだけの落ちこぼれ、フェザリオも回復専門でレイシアは召喚したモンスターに全てお任せ。

 火力になるのはブレンダしかいないパーティーって事だな・・・・・・


 ブレンダだけはさすが優等生だけあって、高く評価出来る。

 僕はこのパーティーを、そう評価する事にした。


 おのおの創意工夫をして、戦術を組み立ててほしいものだ。


 今はまだ、個人の戦い方を見直しているって段階っぽい。ブレンダからして、どう動くかで頭が一杯なようだしな。

 全体を見回してそれぞれに指示を出すまでの余裕はないみたいだ。


 このパーティーがまとまるのは、もう少し先だろう。




 あまり練習になっていない訓練を当日まで続けて、僕達はいよいよ冒険者ルドに向かう。無論、依頼を受ける為だ。


 そういえばダンジョンから帰って来て、学校で生活して来たけれど、町の中を移動する機会はほとんどなかったよな。

 レイシアに召喚されて支配されているっていうのもあるし、モンスターだから特に買い物したいって事もなかったので、特に気にしてこなかったけれど、なかなかに活気のある町のようだ。

 まあ町の名前すら知らないけれどな!


 どこかに書いてあるのかもしれないが字が読めないし、喋れないから聞く事も出来ない。いったい自分はどこにいるのだろうか・・・・・・


 ダンジョンから出て、初めて町に入ってわりと直ぐの位置に学校があったのは覚えている。

 そんな町の隅の方にあるのは冒険者を育てる学校として、門に近い方が都合はいいからかもしれない。いや、どちらかといえば冒険者ギルドが近い方が有利か?


 そうすると町の他の門から遠くなりそうだから、なるべく中央の方がいいのだろう。

 建物の配置など、僕が考えてもよくわからないか。そこにあるからでいいのかもしれないな。


 学校の目の前を通っている、おそらくメイン通りを左へと進んで行く。

 門から直で来られるからたぶんメイン通りだろう。


 レイシア達が向かって進む先。進行方向の家々の屋根の向こう側に城が見えた。

 石造りの西洋風の城だ。

 テレビとか画像みたいなものでしか見た事がない、実物の城がそこにあった。


 おー、ちょっと離れ過ぎていて、城壁の上が少し見えるだけだが、なかなか見応えがある城がそこにはあった。

 こういう風景を見ると、外国に来ているのか、異世界にきたって感じがするな。


 おそらく土台にあたる部分は、丘のようになっているのだと思う。

 でなければ五階建て、いやもっと階数があるのかな?

 こういう城は天井が高いから、そんなに何階もないのかもしれない。機会があれば見に行ってみたいものだ。




 ところで、あればこの国の王城なのだろうか。


 そうなるとここは王都になる訳だが、周囲を見渡してみると人の数は結構多い。


 現代日本と比べれば、人口過密って程ではないのだけれどね。まあ多い方だと思う。


 それか城を持っている貴族か、領主みたいな人があそこにはいるのかもしれないな。


 そんな事を考え、西洋風の町並みを見ながらレイシア達に付いて行った。




 途中、町を横断する川を眺めつつ橋を渡りメイン通りにそって進むと、進行方向右手側に学校程ではないが大きな建物が見えて来た。


 鎧やローブをまとった四人から六人の者達が出入りしているところから見ると、どうやらここが目的地の冒険者ギルドなのだろう。

 石造りのなかなか立派な建物だった。




 ――――――



 私の集めたパーティーメンバー・・・・・・By ブレンダ




 ダンジョン実習の時とは違い、これから冒険者として活動して行くと仮定するのなら、前衛と回復職は必須よね。


 そこまではまあいいわ。


 伝で学校にいる妥当だと思えるランドルと、フェザリオに白羽の矢を立て、パーティーに誘ったまでは順調といってよかったと思うわ。


 でも実際にパーティーを組んでみれば、これがなかなか思っていたようにはいかないものね。




 まあ、模擬戦相手がバグだったっていうのがそもそもおかしかったんだと、思っておくわ。


 上位精霊だものね。


 後々下位精霊のサラマンダーを出していたけれど、よく考えてみればこれだって過剰な戦力だわ。


 そうよね。もう少し穏便な相手なら、私達だってもう少し上手く立ち回れるに違いないわ。




 でも、バグがいればたいていの敵は問題にならないわよね。


 これで学外実習の成績はトップ間違いなしね!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ