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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第二章 マジで死ぬかと思ったよ
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2-5 新米PT

 「えー、来週からこの時間は町の冒険者ギルドに行ってもらい、自分達に合った依頼を引き受け、それを達成してもらいたいと思います。

 実力的に厳しいと思われる人は、ギルドでベテラン冒険者の人を勧誘するなどして、依頼をこなす事も可能です。ただしその場合は、評価自体多少下がる場合が出て来るかもしれません。無理せず、自分の出来る範囲でがんばってみてください」


 午後の授業の終わりに、先生からこんな事を言われた。


 自動車学校でいう、仮免って感じかな。


 討伐系とかならまあレイシアと二人だけでも何とかなると思う。


 レイシアは学外実習に向けて、必要な知識や準備などを整えて行った。サバイバル知識だな。




 新たな学外実習の話が出て、周囲の生徒達がさっそく打ち合わせなどを始める。


 教室から出て行く者は、おそらく他の学科のパーティーメンバーと話をするのだろう。

 見た感じ、レイシアはソロっぽいけれどな。


 だが本人はさほど気にもしていない。これは僕がいるからだろう。


 まあイフリートがいるなら、火属性の相手以外、何とでも出来そうだよね。


 冒険者ギルドで依頼を受ける時に、討伐相手にだけ気を付ければいけるだろう。




 書庫でサバイバル知識などを読み漁っていたら、ブレンダがやって来た。


 「いたいた。ちょっといいかしら、レイシアさん」

 「ブレンダ? 何?」

 「ちょっと提案があるんだけれどいいかしら? 一緒にパーティーを組まない?」

 「え? ひょっとしてバグがいるからとか?」

 「まあ正直に言えばそれもあるわね。レイシアさんも魔法が使えるようになったみたいだし、バグに頼るだけでなくちゃんと勉強もしているみたいじゃない。この先どうなるのか、ちょっとレイシアさんそのものにも興味が湧いたわ。

 一緒にいられたら、いろいろと楽しい事が起こる予感がしたのよ。だから嫌じゃなければパーティーを組んでくれないかしら?」


 ブレンダは結構人気者らしいので、どこか他のパーティーにでも行くのかと思ったのだが、何故かレイシアに興味を持ちパーティーに誘って来たようだ。


 レイシアはちょっと迷っている感じだな。

 確かにパーティーを組むのなら、ここは慎重に選ばねばなるまい。下手すれば生死にかかわるからな。

 ゲームなら死んでも神殿とかで復活出来るのだが、リアルは死んだらそれまでだ。そうだよな?

 復活の神殿とかあったら、ここがゲームの世界だと思ったいそうだ。


 「他のメンバーは?」

 「私達二人って訳ないわよ。魔法使い二人だけっていうのはバランスが悪いから、盾役の人と回復職が欲しいわね」

 「わかった。任せる」

 「了解。伝があるから早速誘ってみるわ」


 どうやらこれからパーティーメンバーを集めるみたいだ。集まるのか?




 急な話でしばらくはメンバー探しになるかと思ったのだが、翌日にはパーティーメンバーを集めて来たようだ。

 なのにレイシアがちょっと複雑な表情をしている。何でだ?


 まあいいそのパーティーは、レイシアを含めて四人編成のパーティーだった。


 パーティーバランスはいいのかどうか、ちょっと微妙かな? 魔法職が多い贅沢なメンバーともいえる。


 ところでブレンダ以外のパーティーからもお誘いは来ていたのだが・・・・・・彼らは何というか下心が透けて見えていた。

 レイシア自体は初歩的な魔法も満足に使えないままだが、それでも火属性だけは使えるようになったって事と、その欠点を補って余りあるとされる、僕の戦力を見込またようだ。


 以前では考えられない、幾つかのパーティーから誘われるという変化が起きていたけれど、まあレイシアは即断っていた。

 初めからソロで活動しようと決めていたらしい。もしくは、ブレンダのパーティーで行こうと決めていたみたいだな。

 後者の場合は、向こうからお誘いがあった時の話だったらしい。良かったな、お誘いがあって。




 さてさて肝心のパーティーメンバーなのだが、まず一人目は前衛として戦士科教室から盾持ちの戦士、ランドルという生徒が参加。

 神官科教室からは、回復と自衛くらいの戦闘が出来ると言っているフェザリオが参加するようだ。

 どちらも男だな。


 何で急にパーティー募集した話なのに、参加する事になったのか。

 聞く所によれば、ブレンダの実家の関係者の子供だという話だ。

 まあ親戚とかではないので、ほぼ他人というかせいぜい顔見知り程度の繋がりらしいな。


 ブレンダ自身が貴族らしいので、いろいろと融通出来るのだろう。そういえば学校に寄付もしていたって言っていたな。

 なるほど、伝はいろいろと持っていそうだ。


 まあそんなメンバーで実習に参加すると、学校へは報告したようだ。




 冒険者ギルドで受ける依頼は、当日ギルドで受けられる討伐系を中心にこなす事にしたみたい。


 探し物や護衛、収集系などさまざまな依頼の中で、学校の評価が高いのが討伐系らしい。

 その中でもそれなりにランクが高いモンスターを倒す事が出来た者は、卒業後かなり高い評価の冒険者として、ギルドに紹介されるそうだ。

 下積み時代が無くなるって事だろうな。


 普通は卒業後、新米として地道な活動をしていくのが基本なのだそうだ。

 お使いや収集系、討伐も無理なく危険がないよと判断された依頼しか紹介してくれないみたい。


 まあ勝手に高ランクの依頼を受けて、死なないようにって言う配慮もあるのだろう。

 実際にどうしてもランクの高い依頼を受けたいって人は、受けることが出来るようなのだ。その場合、冒険者ギルドは冒険者の生死に一切関知しないらしい。これは当然だろうな。

 忠告を無視して依頼を受け、自滅するやつのサポートなんかするはずもない。

 周りから何故止めなかったと非難されたとしても、本人がどうしてもと聞かなかったといって、一切取り合わないのだそうだ。


 身の丈に合った依頼を受けよう。




 他の生徒達の話を何気なく聞いてみると、大体は安全な収集系の依頼から始めるようだな。

 ゲームでよくある初心者がやる依頼だろう。


 内容は薬草集め。

 一見一般人でも出来そうな依頼ではあるが、町の外に行けば当然モンスターが襲って来る場合がある。

 これは運次第ではあるのだが、万が一を考えれば冒険者に頼む方が安全だ。お金をケチって命を落とすなど、馬鹿のする事であろう。

 おかげで初心者の冒険者が、日金を稼ぐことが出来るという。


 まあ夢はないがな。


 それにいきなり討伐系から入って、怪我をするのも馬鹿らしいからまずは軽く肩ならしって意味合いもあるかもしれない。戦闘が苦手な者もいるから、当然こういう依頼もあった方がいいのだろう。

 何で冒険者なんかになったといいたいが・・・・・・




 周囲の話をいろいろと収集してみたが、やっぱり討伐系の依頼がおいしそうだな。


 なんといっても内のパーティーには僕がいる。


 そこそこランクの高い討伐依頼でも狙って行けると判断して、メンバーを考えたってブレンダが言っていた。

 まずパーティーに一人は盾役が必要だろう。それと絶対に怪我をしないという保証はない。


 そんな考えの下、誘われたのが盾持ちの前衛と回復職である神官だったらしい。

 実力はまだわからないが、必要最低限の職業メンバーがそろったと見ていいのかな?


 パーティーの準備や依頼の方向性が決まった後は、当日までパーティー内での連携を試しておく事になり、訓練場でお互いの意見交換がおこなわれた。

 意見交換というか、模擬戦でこのパーティーで大丈夫かどうかの確認だな。




 結果なのだが・・・・・・


 「キュルル(弱い)」


 僕が撃ち出した炎の鞭が、盾戦士のランドルの持つ盾を強打した瞬間、彼は体勢を崩して尻餅をついてしまった。


 真剣にやると圧倒しちゃうので、程々に手を抜いて相手をしている。


 こういう模擬戦みたいな戦い自体、嫌いではないので結構楽しんで相手役をさせてもらっていた。

 しかし手加減はしていてもなるべく実戦形式になるよう、容赦なく戦わせてもらおう。どんどんかかってこいやー


 ちなみにみんなが実戦に出て死なないようにっていう優しさであって、いじわるでこんな事をしているのではないのだよ~


 体勢を崩したままの彼の横を悠々と通過して、パーティー唯一の回復職であるフェザリオの前へと躍り出る。

 パーティー戦で何が一番厄介かっていえば、やっぱり回復薬の存在だよねー

 積み重ねたダメージを回復されたら、それまでの努力が無駄になる。これはセオリーなのであって、戦術なのだ!

 神官に対しても炎の鞭で攻撃を加えて行く。


 男女差別とか、いじめじゃないよー。そこはわかってくれ。


 まあさすがにレイシアとブレンダを攻撃するのはためらわれるのだが・・・・・・前衛で戦えるとか言っていた男二人ならば問題なかろう。

 存分に攻撃させてもらった。




 何度も繰り返し模擬戦をしているのだが・・・・・・大体盾が一人しかいないのにそれを突破されてしまえば、残りの三人は丸裸も同然じゃないのか。


 当初の予想に反して、この盾役はあまり役に立っていない気がする。

 炎の鞭で攻撃すると大体一撃で吹き飛ばせるのだ。


 吹き飛ばす方向を他の三人から引き離すよう調整してやれば、問題なく他の三人に攻撃を加えられる。

 これも経験なのだろう、死なない程度に蹂躙させてもらうぞー


 盾を突破した僕に対して援護射撃の攻撃が、後衛の二人から飛んで来た。


 「焼き尽くせ、ファイアアロー」「飛沫よ凍れ、フリーズブリッド」


 レイシアの魔法は僕にとっては、避けるまでもなく回復が飛んで来たみたいなものだな。


 ゲームでもよくある属性回復だ。


 イフリートは火属性の精霊であるので、同じ火属性の攻撃を受けると攻撃を無効化するだけでなく、火を吸収して逆に回復してしまうのだ。

 つまり、ブレンダの攻撃からダメージを受けても、レイシアから回復をもらっている事になる。

 何やっているのだか・・・・・・


 まあ確かに、属性吸収までするモンスター自体は、数が少ないのだろう。

 しかし属性を無効化するモンスターならば、そこそこの数がいると思うぞ。そこのところ覚えておかないとだな。

 喋れないので忠告も出来ない・・・・・・

 仕方ないのでレイシアは無視しだ。


 さて、このパーティーで一番まともなのがブレンダになるのだが、残念ながら根が素直なのかねー。それとも基本に忠実なのか、攻撃が単調になっている。

 いや、呪文を省略出来ないから、つけいる隙が出来ているのかな? 経験不足ともいえる。


 だからブレンダの攻撃は盾を作るまでもなく回避してそのまま、フェザリオを手加減して撃ち払った。

 ちなみにフェザリオは、何なのだろう?

 武器などを構えてはいるようだが、どこか素人っぽいな。肉壁か?




 結果をまとめれば、こいつらパーティーとして全然連携出来ていない。


 個々としてもまだまだ未熟と言わざるをえない。

 まだ学生だからこんなものなのかな?


 よくゲームでパーティーを組んだ時にわかる事なのだが、人が集まればそれでパーティーとして機能するっていうのは間違いだ。

 それは個人が近くに集まって、それぞれに行動しているだけなので、集まってソロの行動をしているだけになる。


 連携っていうのはお互いの行動を予測して、それに連動して動かなければ意味が無い。

 まあだからこその連携訓練なのだろうが、実習開始までにまとまるのかね?


 そんな事を考えつつ、みんなの敵役として暴れ回った。そう、暴れまわった!


 どうせ会話が成り立たないから指摘出来ないのだし、ここは存分に戦わせてもらおう。


 せっかくモンスターとして転生したので、とても楽しく暴れさせてもらいました!





 ――――――



 出番がやって来た!・・・・・・By ランドル&フェザリオ




 「なあ。俺達今回初登場回なのに、台詞が無くないか?」

 「え? あっ、本当だ。本当に台詞が無い!」

 「畜生バグの奴、男の声は聞こえないとでも言うのか! これだから主人公ってやつは・・・・・・どうせそのうちハーレム築くに決まってんぞ」

 「いや、男生徒の台詞はばっちりありますね」

 「え? って事はどういうことだ? ・・・・・・はっ、まさか。俺達があまりにも頼りないからって、俺達の発言は聞き流されたって事か!」

 「それに関しては本当に申し訳ないです。今後ぜひ精進して役に立ちたいと考えていますので、見捨てないでいただけると・・・・・・」

 「いやいや、いくらなんでも見捨てられたりはしないって。ほら、俺達名前付いてるし、モブじゃないから」

 「確か以前の話で、名前付きのモブさんがいたような・・・・・・」

 「マジか! あーやっべ。マジで台詞二行のモブの奴がいるじゃんか・・・・・・おいフェザリオ、死ぬ気で強くなるぞ! このままじゃ、気が付いたら消えちまう」

 「はい! このままフェイドアウトなんてさせられてはたまりませんからね!」

 「次回こそは活躍してみせるぞ!」

 「ううっ。僕は活躍出来そうにありません。誰か活躍の場をください・・・・・・」

 「おいおい、頼むぜ相棒。先が思いやられるなー」


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