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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
最終章

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64 戦場の転職神殿 5

「剣聖」とは、剣士系ジョブの最高クラスのジョブだ。

 文献には、「上級剣士」の一部が修行の結果、たどり着けるジョブだとされている。上級職の更に上のジョブだが、私には転職させることができるようだった。上級職への転職が一般的ではないのだから、その上のジョブへ転職ができるなんて、誰も思わなかったみたいで、研究もされていない。


 シバレウス皇子がベリオス将軍に語り掛ける。


「ベリオス将軍よ、もう気付いたであろう?魔族が野蛮な種族ではないと」

「しかし・・・」

「だったら真実を話してやろう。転職神殿本部とマーズ教会のこれまでの悪事をな・・・」


 シバレウス皇子は、魔族のこと、転職神殿本部の実態、そして私についても、詳しく説明を始めた。


「そんなことが・・・我が帝国も利用されていたのですか?」

「そうだ。転職神殿本部とマーズ教会の影響力を高めるために魔族という仮想の敵を作り出し、私腹を肥やしていたのだ」

「ですが、もう止められません・・・各国は、魔族殲滅のために動き出しているのですから・・・」

「いや、まだ間に合う。そのためには貴殿の協力が必要だ。未来の「剣聖」殿のな。まあ、我に協力してくれるのであれば、「剣聖」への転職を支援してやってもよいぞ」


 ベリオス将軍は、協力することを了承した。

 転職を取引材料に使われるのは、あまりいい気はしないけど、それでも戦争が起こるよりはマシだ。



 ★★★


 ここ数日は、かなり忙しかった。


 あれからベリオス将軍は、すぐに帝都へ引き返し、魔族や駐屯地の現状を報告するとともに、転職神殿本部やマーズ教会の悪事についても、皇帝に報告したようだ。

 そして5日前、帝国文官のトップであるメディアス宰相を連れて帰って来た。


 駐屯地を視察したメディアス宰相は驚いていた。


「情報は本当だったのですね。それに魔族も野蛮な種族ではないと分かりました」


 シバレウス皇子が言う。


「これでどうにか、この馬鹿げた戦争から手を引けないか?」

「正直、厳しいですね。もう既に戦争の準備は整っておりますし、恥ずかしい話、帝国の中枢にも神殿本部の息の掛かった人間も大勢いるのです」

「何とかならんのか?」

「問題はホーリスタ王国です。卑怯な手段で王都を奪われたホーリスタ王国にしてみれば、我らを許すことはできないでしょう。そうなると、多額の賠償金の支払いや領土の割譲を求められるかもしれません。そうなると、プライドの高い我が国とは、まとまる話も・・・」


 アルベールが言う。


「だったら、ホーリスタ王国とが同意すれば、いいのだな?」

「それはそうですが・・・」

「そうか。カール先輩、出番ですよ」


 アルベールは、転移スポットを使って、既にカール王子を呼び出していたのだった。


「僕はホーリスタ王国第三王子のカールだ。我がホーリスタ王国とアバレウス帝国との戦端はまだ開かれていない。そちらの話を聞く準備はできている。それに他ならぬ後輩の頼みでもあるしな」


 そこからは、三ヶ国による会談が持たれた。

 カール王子が言う。


「つまり、帝国のプライドを傷付けなければ、和平は成立するのだな?」

「そうですが・・・」

「だったらこういうのは、どうだ?」


 カール王子が説明をする。

 どうやら、事前にアルベールとシバレウス皇子と話がついているようだった。


「そんな事が可能なのですか?」

「ああ。ただその代わり、賠償金ではなく、()()()は貰うがな」

「ええ、適正な額であれば・・・本当に有難い・・・」


 話はまとまったようだ。

 その後も、アルベール、カール王子、シバレウス皇子の三人にメディアス宰相を交えて、細かいすり合わせをしていた。


 そんな様子を見ながら、物思いにふける。

 不思議なことにあの三人は、同じような不遇な環境に置かれていた王子だ。そして、私の教え子でもある。それを思うと、何か運命的なものを感じてしまう。

 実家の転職神殿を追放されたことも、もしかしたら彼らに出会うためだったのかもしれない。


 そんなことを思っていたら、カール王子に声を掛けられた。


「どうしたの、エクレア先生?ボーっとして」

「いえ・・・三人とも立派になったなと思いましてね」

「そうか!!この中では僕が一番先輩だ。僕が一番立派になっただろ?」

「それは・・・」


 答えづらそうにしていたら、アルベールが助け舟を出してくれた。


「カール先輩、先輩は先輩でも、俺たちはライバルだ。これからの活躍を見てもらえば、いいのではないか?」

「そうだな。まあ、僕に追いつけるようにアルベールもシバレウスも頑張れよ」

「この中では、我が一番の新入りだ。これからも指導を頼むぞ」


 カール王子をアルベールとシバレウス皇子が上手く、扱っている。


「よし、話はまとまったから、明日の準備だな」

「エクレア殿の晴れ舞台だからな」


「晴れ舞台というのであれば、神殿長に就任するザクサス神官のことでは?」


 シバレウス皇子が言う。


「それもあるが、エクレア殿は大聖女で、ランカスター転職神殿本部の本部長でもある。それを大陸中に知らしめる意味もあるからな。もちろん、帝国としてはこの件を利用させてもらうが、我は心からエクレア殿に感謝しているのだ。最高の開所式にしてみせよう」


「おい、シバレウス。何を手柄を独り占めしようとしているんだ!!」

「そんなことはないぞ。カール先輩の働きも素晴らしい」

「ふん、分かっていればいいんだ」



 次の日、ランカスター転職神殿支部の開所式を迎えた。

 メインイベントは、私がザクサス神官を支部長に任命するイベントだ。その前にアルベールやカール王子、シバレウス皇子を筆頭に私を称賛する来賓のスピーチが続いた。もちろん魔族も大勢スピーチしてくれた。

 みんな大げさに言うので、かなり恥ずかしかった。


 この開所式には、なぜか多くの記者たちや、三ヶ国以外の王族も多数出席していた。

 政治的な理由だろうと思うけど・・・


 最近はよく三人で、悪だくみをしているから、それの一環だと思う。まあ、私はしがない転職神官だから、国際政治については、彼らに任せればいい。


 そんなことを思っているうちに式典は進む。


 そして、私の出番がきた。

 支部長となるザクソン神官に激励の言葉を掛ける。


「転職神官は、転職者の人生を背負うこともあります。自分の行ったことが正しいのか、正しくないのか、迷うこともあるでしょう。そんな時は、自分の良心に従い、行動しなさい。そして、転職者と共に成長する転職神官となってください。神様は見てくれています」


 会場は、大きな拍手に包まれた。

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