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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
最終章

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54 マッドサイエンティスト

 どうやって、ソフィア王女を更生させるか?


 魔王様でも匙を投げた問題に向き合うアルベール。


「姉上のことだが、伝説の転移魔法を開発した功績は大きい。しかし、やったことは歴とした犯罪だ。厳正に対処せねばならん」

「まずは、話を聞いてみませんか?」

「そうだな・・・」


 すぐにソフィア王女の元に向かった。

 研究室に着くと、何やら怪しげな実験を繰り返していた。


「アルベール、何か用?忙しいのよ」

「姉上、自分がやったことを分かっているのですか?」

「転移魔法を開発したことでしょ?別にご褒美とかはいらないわ」

「そっちもそうですが、魔石を大量に宝物庫から盗んだことです」

「ああ・・・そのうち返すわよ。それでいいでしょ?」


 全く反省していない。

 というか、悪い事をしたとも思っていないようだ。


 アルベールも頭を抱えている。

 私はアルベールに言った。


「私に考えがあります。ソフィア王女も我が転職神殿の転職者です。転職神殿としても転職者に責任を持たなければなりません。なので、こういうのはどうでしょうか?」


 私がアルベールに提案したのは、盗んだ魔石の代金分だけ、ホープタウンで労役をさせることだった。


「いい案だと思うが、素直に従うかどうか・・・」

「そこを言い含めるのも「魔勇者」の仕事ですよ」

「そういうことなら、努力してみよう」


 結局、ソフィア王女はこの案を呑むことになった。

 そこまで待遇は悪くないし、研究も続けられる。ただ、町や国への奉仕活動はしないといけないけどね。


「まあいいわ。とりあえず、魔石代を稼げばいいのね。だったら・・・」


 ソフィア王女が言うには、魔王国の主要な箇所に転移スポットを設置すれば、交流も活発になり、交易などで、多くの収益が得れるとのことだった。


「研究の結果、固定の転移スポットを設置すれば、コストは大きく下がるわ。転移スポットから転移スポットへの転移だったら、そんなに魔石は必要ないのよ」

「だったらなぜ、魔石を勝手に持ち出したのですか?」

「やっぱり、自由に転移したいじゃないの。まあ、1回であれだけ魔石を使うから、もうやめようとは思うけどね」



 それからは、オーガの里、獣人の里やドワーフの里、エルフの里に転移スポットを設置することになった。

 これで益々、行き来が活発になり、転職者も増えるし、交易も活発になる。次はホーリスタ王国との街道の商業都市マージにも転移スポットを設置しようという話も持ち上がっている。




 ソフィア王女は、刑罰の意味もあるので、転職者に無償で魔法の指導をしてもらっている。

 思いのほか評判がいい。

「赤い稲妻」の上級魔道士のステラが言う。


「あんなレベルの魔導士から指導を受けられるなんて、ここに来て本当によかったと思うわ。彼女以上の魔導士なんて、この大陸を探してもいないだろうしね」


 ソフィア王女が真面目に指導しているのは、反省しているからではない。

 ステラを筆頭に多くの魔導士から尊敬を集め、称賛されるからだ。


「姉上の一挙手一投足が、彼らに見られていますからね。くれぐれも恥ずかしい事はしないでくださいね」

「分かっているわよ。彼らのイメージを崩さないように、頑張っているんだからね」


 まあ、何はともあれ、真面目に働いてくれているので、良しとしておこう。



 ★★★


 ある日、私たちはエルフの里を訪れた。

 エルフシャーマンのエランシアさんと、テイマーのミロスが出迎えてくれた。

 ミロスが言う。


「エクレア先生、少し困ったことになって・・・」


 事情を聞くと、精霊様が大変なことになっているらしい。

 ミロスのテイムしているドラゴンのドラスの指導やエランシアさんの通訳によって、精霊としての実力はついてきたのだが、今度は、調子に乗って、他の妖精のことを馬鹿にしたり、今ではドラスの言うことも聞かなくなってしまったようだ。


「妖精様たちも困っているようです。妖精様によると、急に精霊になったことが原因ではないかとのことです。普通は長い時間を掛けて、妖精から精霊になるらしいのですが・・・」

「ドラスも困っているよ。この前は『もう習うことは何もない。ごちゃごちゃ言うな』と言われていたよ。ドラスも怒って、指導しなくなったんだ」


 転職で駄目になる、典型的なパターンだ。

 転職直後から、実力を発揮する転職者に多い傾向にある。ただ、ランカスター転職神殿では、指導者が猛者揃いなので、すぐに態度を改めるんだけどね。


 そういえば、精霊様に転職者に対する研修を行っていなかった。

 精霊を指導するなんて、想定外だからね。


「とりあえず、面接をしてみましょう。転職をさせた、私にも責任がありますからね」

「ありがとうございます。ただ、かなり横柄になってます・・・」


 久しぶりに精霊様に会った。

 向こうも私のことをよく覚えていたようで、駆け寄って来た。


「いつかの転職神官・・・そうだ!!・・・早く私を大精霊にさせろ・・・妖精はうるさいことばかり、言う・・・早く大精霊にしろ」


 流石にこれは・・・

 アルベールが私に聞いてくる。


「これは酷いな・・・魔族以上かもしれん」

「そうですね。私に考えがあります。任せてもらっても、よろしいでしょうか?」

「それは構わんが・・・」


 私は精霊様に言った。


「ここでは転職はできません。一度、ホープタウンに来てもらわなければなりません」

「だったら行く・・・エランシア・・・すぐに準備しろ」


 こうして、迷惑な精霊様をホープタウンに連れ帰ることになってしまった。

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