表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
第二章 魔王選

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/69

19 魔勇者誕生

 転職神官として、褒められた行為ではないけど、それ以上に私はお父様に会いたかった。

 私の生い立ちや追放されてここに来た事情を話すとアルベールは、自分のことのように怒ってくれた。


「なんて酷いことを・・・それでも腐らずに努力してきたエクレア殿は、素晴らしい女性だ。それに比べて俺は・・・」

「アルベールさん、大切なのは過去ではなく、これからですよ。貴方はもう立派な「魔勇者」なんですからね」

「ああ、「魔勇者」としての使命を果たすよ」


 因みにアルベールの母のシャタンさんも転職することができた。

 ジョブは「魔忍者」で、人間で言う隠密行動に優れたレアジョブの「忍者」だった。



 転職が終わり、喜んでいるアルベールに言った。


「事前の説明でも言いましたが、「魔勇者」に転職してすぐは、ステータスがかなり下がります。今まで普通にできたことが、できなかったりします。これは、絶大な力を持つ者への試練だと言われています」


「分かった。どんな試練でも、俺は乗り越えてやる」


 気合いは十分だったが、実際はそうはいかなかった。訓練でゴブリンソルジャーたちに軽くあしらわれていた。プライドの高い者なら、ここで修業を投げ出したりするんだけどね。そういえば、私が指導した人間の勇者は、「もう修行やめる!!」とか言って、3日も訓練をサボったからね。


 しかし、アルベールはそんなことはなかった。


「まだまだ!!もう一本頼む!!」

「お、おう!!無理するなよ」


 訓練の相手をしているゴブリンのほうが、びっくりする程アルベールは気合い十分だった。



 ★★★


 そんな修行の日々を過ごしていたアルベールだったが、ある日相談に来た。


「そろそろ、王都に戻らなくては魔王選に間に合わない。期日までに王都で手続きをしなければ、魔王選への出場資格がなくなるのだ」

「しかし、今のまま修行を中断するのは許可できません。アルベールさん、今が一番大切な時期なんですよ」

「そこを何とか・・・頼む!!」


 アルベールが「魔勇者」になったのも、魔王選を勝ちぬいて魔王になるためだし、何とかしてあげたい。


「考えられる方法は、王都を目指しながら修行を続けることですかね・・・それには私が同行して、指導をすればいんでしょうけど、こちらの転職神殿を留守にするわけにも・・・」


 そう言ったところで、ゴブミに遮られた。


「大聖女様、行ってあげてください。それにお父様にも会いたいでしょうし。転職神殿のことは、私に任せてください。これでも私は転職神官の端くれですからね」


 オーガラも続く。


「ゴブミのことは任せておけ、それと俺も少し頼みたいことがある」


 オーガラの頼みとは、魔王選のことだった。

 毎回、鬼族の代表としてオーガが魔王選に出場していたのだが、今回はオーガラより強い者はいないので、オーガラに白羽の矢が立ったそうだ。しかし、オーガラは魔王選に興味がないようだ。


「以前の俺なら、強い奴と戦えると思って、喜んで出ただろうが、今は違う。魔王選に出る必要がない。ただ、鬼族から誰も魔王選に出ないとなると鬼族が舐められてしまう。それに形だけ弱い者を出しては、逆効果だ。オーガルからは、何度も出場を打診する書状が届いているんだ。だから、鬼族の代表はアルベールに頼もうと思う。コイツが魔王になれば、オーガやゴブリンを不当に扱うことはしないだろうしな」


「オーガラ殿・・・」


 結局、アルベールと同行するのは、私とゴブキチとゴブコになった。

 そして、途中でオーガの里に寄って、族長のオーガルにアルベールが鬼族の代表になることを伝えるといったものだった。



 ★★★


 3日後、私たちは王都に旅立った。町の人たちに盛大に見送られた。

 道中は、しばしば強力な魔物が襲って来た。ゴブキチが得意気に討伐する。


「ゴブキチの馬鹿!!アンタが倒したら、アルベールさんの訓練にならないじゃないの!!」

「俺とラッシュが強いってとこを見せたかったのに・・・」


 ゴブキチとゴブコは相変わらずだった。

 アルベールはというと、まだ「魔勇者」として覚醒していないようで、かなり苦労していた。私も熱心に指導する。


「アルベールさん!!力も弱く、魔力もほとんどなくても戦い方を工夫すれば、何とかなります。しっかりと考えて、戦って下さい。この時期にしか学べないことなんですよ」


 実際にそうだ。

 人間の「勇者」を例にすると、覚醒してしまった勇者は、そこら辺の魔物なら無双できる。最初から力が覚醒しないのは、戦い方を工夫することを学ぶためだと言われている。


「分かった。だったら、ファイヤーボールを目くらましに・・・」


 ファイヤーボールで上手く目くらましをしながら、剣で攻撃、最終的には投げナイフで何とか討伐していた。

 ゴブキチが言う。


「俺だったら、あっという間に討伐できるのに・・・」

「だ・か・ら、これはアルベールさんの修行だって言っているじゃないの!!本当に馬鹿ね」


 ゴブキチがそう思うのも分かる。

 オーガラが言うには、ゴブキチもゴブコも魔王選に出場してもいいレベルだそうだ。勝ちぬけるかどうかは分からないけど、いい勝負はできるらしい。


「ではアルベールさん。早速討伐した魔物を解体し、料理をしましょう。こういったことも、「魔勇者」には必要ですからね」

「す、少し、休ませてくれ」

「駄目ですよ。時間が無いんですからね」

「う、うむ・・・」


 シャタンが呟く。


「アルベールもいい人に巡り会えたかもしれないわね・・・」

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ