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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
第二章 魔王選

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14 オーガ来襲 2

 オーガたちを追い出してから2週間後、オーガの使者がやって来た。

 今回は、態度が大きく、ゴブリンを馬鹿にしているものの、いきなり暴力を振るうような輩ではなかった。腹は立ったけどね。


 村長と共に書状を確認する。


「つまり、この町をオーガに明け渡せということかな?」

「そのとおりだ。偉大なるオーガ族が、下等なゴブリンに代わって、この地を治めてやると言っているのだ。もちろん、ゴブリンたちは、ここに住んでも構わない。いい条件だろ?」


 何が良い条件なのか、全く理解できない。

 村長が言う。


「話にならんな。お引き取り願おう」

「後悔することになるぞ!!1ヶ月だけ待ってやる。それまでに自分たちの間違いに気付き、オーガの里まで謝りに来るのなら、考えてやろう。それ以上は待たんぞ」


 オーガの使者は去って行った。


 その後、緊急会議が開かれた。

 村長が言う。


「以前なら、オーガはゴブリンがいくら束になって掛かって行ったところで、歯が立たなかった。だが、今は違う。なので、オーガによる不当な支配を脱しようと思うのじゃ」


 私は質問する。


「それは十分理解できます。しかし、平和的な解決策はないのでしょうか?それと、いざ戦いになった場合、オーガの戦力はどのようなものでしょうか?」


 村長は丁寧にオーガについて、教えてくれた。

 オーガは典型的な魔族で、力こそすべての脳筋集団だそうだ。特にそのパワーは魔族でもトップクラスらしい。


「一般的にゴブリン20人で、やっとオーガ1人を相手にできると言われておる。ジョブを得た今でも、1対1でやり合えるのは、ゴブキチとゴブコぐらいじゃろう」


 やはり戦闘力は高いらしい。


「ただ、儂の見立てでは、ゴブリン族を根絶やしにしてやろうとは思っておらん。少し痛い目を見せて、より多くの資金や食料を納めさせようと思っているのじゃろう。そこが付け入る隙ではあるがな」


 オーガとゴブリンの関係を少し補足する。

 元々、先祖が同じということで、それなりに良好な関係を維持してきた時代もあったそうだ。ゴブリンが生産活動を担い、有事の際はオーガが体を張って、ゴブリンたちは守る。同じ鬼族として上手く共存していたようだ。


「今の族長になってからは、一方的にゴブリンは搾取されるようになった。今の族長は歴代最強と目される者で、魔王選にも参加を考えているようじゃ」

「魔王選?」

「魔族を統べる魔王を決める儀式のことじゃ。魔王選については、現魔王がその内容を決めることができる。まあ、ほとんどが力比べじゃがな」


 オーガの族長は、上昇思考があるということか・・・


 村長の見立てでは、今のゴブリンの生産力を最大限利用して、魔王選に臨もうとしているという。


「いずれにしても、相手は軽く一捻りにしてやろうと舐めて掛かって来る。そこに勝機はある」


「分かりました。私もできることはします」



 ★★★


 私がやった事、それは生産職のジョブ持ちの一時転職だ。

 私としては、あまり推奨するやり方ではない。しかし、一人でも多くの戦力が必要だ。生産職から一時的に戦闘職に転職をさせていく。

 もちろん、適性があって本人が希望する場合のみだ。まあ、全ての戦闘職適性がある者は、志願したのだけどね。


 その中で一番成功した例は、「ゴブリンファーマー」で生産職のまとめ役、ゴブアさんだ。彼女は、「ゴブリンメイジ」に転職したのだが、水魔法と土魔法にかなりの適性があり、元々のゴブリンメイジたちよりも、戦闘力は高い。


「水魔法と土魔法があれば、農園の仕事も捗るから、戦闘が終わっても、しばらくはこのままでいるわ」


 そんな感じで、一時転職や新たに戦闘職に転職した者の訓練で本当に忙しくなった。

 ただ、一時転職の場合は無料にしているので、儲けはないんだけどね。流石にこの状況で、お金を取れないよ。


 また、忙しいのには訳がある。

 私とゴブミ以外のスタッフは、町の城壁づくりに参加しているからだ。私とゴブミだけで転職業務をやっている。戦闘職ではないゴブリンたちが頑張り、立派な城壁ができた。人間の国でも、この城壁を突破するには、かなり苦労するだろう。攻城兵器が必要なレベルだ。これならゴブリンアーチャーやゴブリンメイジの遠距離攻撃が生かせる。


 転職についてだが、転職させたのは、ゴブリンだけではない。

 ゴブキチが乗っているラッシュとゴブコが乗っているアマラが共に、フォレストウルフからシャドウウルフになった。シャドウウルフは「影移動」というスキルが使え、なんと影を利用して移動することができるのだ。そうなれば、戦術の幅が広がる。奇襲に持ってこいだからね。



 ★★★


 1ヶ月が経ち、オーガたちがやって来た。城門を閉じ、臨戦態勢を整える。

 城壁から確認すると、情報どおりオーガは100人くらい。持っている武器は、棍棒や棒切れ、鎧や兜も着用していない。当然、攻城兵器なんかは持っていない。完全にこちらを舐めている。多分、少し脅したら、ゴブリンが服従すると思っているようだ。


 村長がオーガたちに拡声の魔道具で、警告を発する。


「すぐに立ち去れ、オーガよ!!そうすれば、命だけは助けてやる」


 これに対して、オーガの族長が答える。


「何を血迷った!?少し、痛い目を見ないと分からないようだな?皆の者!!突撃だ!!」


 オーガの集団は突進してくる。

 こうして、オーガとゴブリンの戦闘が始まった。

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