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前世を思い出したわがまま姫に精霊姫は荷が重い  作者: 星河雷雨


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第25話 裏ルート



 それが今から二か月ほど前のこと。


 それから精霊姫候補として学園に入学するまでの短い期間、ステラは一生懸命貴族としての常識、立ち振る舞いを勉強した。

 しかし、元々平民なうえに、前世の記憶を思い出したステラにとって、貴族としての生活は何もかもが窮屈だった。

 新たに父となった男―マーチ伯爵とその家族は、ステラによくしてくれたが、ステラは一向に貴族の生活には馴染めなかった。カラビナ王国を出る際、伯爵はステラに言った。


「ステラ、窮屈な思いをさせて済まない。だが、君は精霊に導かれたのだ。精霊姫にならなくとも構わない。しかし、きっと君にしかできない君の役割が、学園にはあるはずだ」


 ステラが貴族には向かないことを、伯爵は早い段階で気付いていた。しかし、当のステラは伯爵の心配は杞憂だと思っていた。

 なぜなら「ステラ」は『姫騎士』の主人公。ステラが精霊姫になることは決まっているのだ。だから、ステラは伯爵に言った。


「ありがとうございます。お父様。わたしきっと、精霊姫になるわ」


 伯爵はステラの言葉を、自分たちに気を使ってのことと捉えた。精霊姫になることを期待されて貴族の養子となった以上、何等かの成果を出さずに終わることは許されない、そう思っているのだろうと。


 通常はそうなのだろうが、ステラに関することは、すべて伯爵が精霊の意図を汲んで勝手に行ったこと。 

 しかも精霊と直接言葉を交わしたわけではないのだ。伯爵は健気なステラを不憫に思った。


「ステラ、学園生活を楽しんでおいで」


 精霊姫になろうともならなかろうとも、ステラが精霊に導かれた者だということに変わりはない。ステラを幸せにすることが、あのとき自分を助けてくれた精霊に対する恩返しとなる。伯爵はそう思っていた。

 

 

 ステラは伯爵家の人間のことが好きだった。伯爵も、伯爵夫人も、義理の弟もステラに良くしてくれた。


 ステラが精霊姫になれば、あの人たちもきっと喜んでくれる。ステラはそうも思っていた。それに…。前世、攻略は無理と諦めていたディランを、今度こそ攻略できるかもしれないのだ。まだ会えてはいないが、ディランはこの世界に確実に存在するだろう。本物のディランに会える。そう思うだけでも、ステラの胸は高鳴った。


 ただひとつ心配だったのは、ここが強制力や修正力のあるゲームの世界なのか、それともあくまでもゲームの世界を模したに過ぎない現実の世界なのか、どちらなのか分からないということだ。


 むしろゲームによる強制力や修正力が働く世界のほうが、ディランを攻略するのには都合がいいかも知れない。攻略対象が、主人公であるステラを好きになるのは、ある意味当然だからだ。そのほうがステラも安心できる。現実に、何のアドバンテージもなく十四人もの異性を自分に惚れさせるなどさすがに無理がある。


 だが、もしここが現実だった場合、ディラン攻略はどうすればいいのだろう。直接、他の攻略対象をとばして、ディランを攻略してもいいのだろうか。わからないことは山ほどある。


 しかし、ステラは前世と同じように諦める気持ちにはなれなかった。ゲームではいくら攻略したとしても、所詮は二次元のキャラクターであるが、この世界のディランは本物だ。すでに攻略対象であるロイド、サミュエル、リディアス、クレメンス、マークスには会えた。


 二次元と三次元の違いはあれど、一目でそうと分かるほどに、彼らはゲームのキャラクターそのままだった。

 そう。この世界の人間は皆驚くほどに美しいのだ。


 ステラの両親や、町の住人たちだって、前世で会っていたならモデルや芸能人かと思うほどに美しかった。それは造形も含まれるが、髪や肌、体形などが、二次元のそれに近い質感とでもいえばいいのだろうか。全体的にレベルが高いのだ。


 もしかしたら、本当に二次元の世界に転生して、ステラがこの世界を二次元と認識できていないだけなのかも知れない。でもそれでも構わない。だってこんなにも楽しいのだ。何の問題があるのだろうか。ステラはそう思っていた。


 美しい世界で、美しい攻略対象たちと恋をする。ディランと恋をする。この世界が二次元だろうと三次元だろうとステラにとっては大した問題ではなかった。


 ディラン攻略のキーパーソン。それが、ゲームの登場人物のひとりであり悪役令嬢であるフィーラ・デル・メルディアだ。

 

 通常ルートでは彼女は精霊姫候補を外れ、普通科に在籍している。特別クラスの外側から、他の精霊姫候補を操り、ステラの邪魔をする存在だ。このルートでは正式な攻略対象しか攻略できない。


 しかし、裏ルートを開示させる場合、フィーラは候補を外されることなく、特別クラスに在籍しなければならない。それが、裏攻略対象を攻略する場合の条件だからだ。

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