ミロク様から離れなさいよ!
あー戦いたい。
イベント二日目。私は素材を採取しつつそう考えていた。
昨日はとても濃い一日ではあった。アイアンイーグルのハヤテと戦ったこともあり満足感がある一日で終えられた。
二日目は森の中での薬草採取。ポイントを集めるために薬草を採取していたのだった。私は警戒をしているが近づいてくるような奴はいない。
私は木の皮を刀で傷つける。
単に暇つぶしなのだが。こういう地味な作業は嫌いではないが好きでもない。道場の庭の草むしりとかは好きなんだがな。こういう薬草とか見分けることは私には無理だ。鑑定を使うのも面倒くさい。
完全に手持無沙汰である。
「っと、誰か来た」
私は刀に手をかける。
がさがさと茂みが揺れた。採取していた三人も手を止めてそちらを見る。茂みから現れたのは二人の女性だった。
見覚えがある。昨日……。
「見つけた! よくもやってくれたわね!」
「ああ、昨日の……」
「ミロク様に近づくチャンスだったのに! っていうかあんた……いつもミロク様に近づいてる羽虫!」
私を指さして罵倒してくる。
「あんたミロク様から離れなさいよ!」
「とんだ言いがかりだな。私はミロクから望まれて近くにいる」
「ミロク様があんたみたいなブス相手するわけないじゃない!」
ブス、か。初めていわれたな。これでも自分は容姿はいいほうだと思っていたが。
高校の時は割とモテていたほうだと思っている。だからブスということはないと思うが……。こいつ、私をブスといって精神的ダメージを与える作戦か。悪くはない。精神的に動揺を誘えれば一気に優位にはなる。
が、相手が悪かったな。私はその程度じゃ傷つかない。
「いいから離れなさいよ!」
「無理だな。雇用契約されてる以上辞表を出さなくてはやめれないし、辞表を書くのが面倒くさい」
「そういや一応は雇用されとるんやっけ……。自由にやっとったから忘れとったわ」
「あんたら仕事上の関係なの? え? ゲームやるだけで給料もらえんの? ずるくね?」
「ゲームが仕事って羨ましいぜ……」
わかる。仕事というのは普通はゲームじゃない。
本来ならばもっと社会のために働くのが仕事なのだ。ミロクは自分のために私たちにゲームを差せている。仕事というよりかは奉仕か?
「うるさい! いいからあんたは離れなさいよ! さもないと殺すわよ!」
「そうか。やってみろ」
私は刀を引き抜いて首元に突き付ける。刃が首筋に当たっていた。
女は顔を青ざめ、わなわなと震えている。
「どうした? 武器を抜け。殺すんだろう?」
「な……ななっ……」
「ほら、戦うんだろう? 正々堂々と殺し合いをしようじゃないか。昨日は不意打ちだったからな。今度は真正面からやりあおう」
「し、しないわよ! もう帰る!」
女は踵を返し怒りながらどっかに言ってしまった。
言葉だけか。殺すというのならば殺して見せればいいものを。




