黄色く微笑む花
ハヤテに乗り地上へ降り立つ。
三人は砂浜に降り立った。グリードさんたちが何事かと思って出てくるとアイアンイーグルであるハヤテの姿に驚いていた。
「な、なぜアイアンイーグルがここに……!」
「テイムした。意外といい子だぞ」
私はハヤテの羽をさする。この硬質の羽の手触りが心地よくなってきた。
「……アイアンイーグルは本来、騎士団まとめて相手しなければ勝てない魔物なのにこのお方はっ!」
「……そうなのか? 確かに本当に苦戦したな。運がよかったというのもある」
翼の付け根あたりに攻撃が当たってなかったら勝ててなかっただろう。
翼が動かなくなり飛べなくなったら一気に攻撃手段を失う魔物なんだろうな。
この羽は剣を通さない。やりづらい相手だった。
「で、これが花だ」
私は黄色い花を取り出しグリードさんに手渡した。
グリードさんは奥さんであるエイミーさんと顔を見合わせた。エイミーさんの目から涙がこぼれ落ちる。
「これで娘はっ……!」
「感謝する。本当に……ありがとう」
私たちの手を握り、お礼の言葉を述べてきた。
エイミーさんは花を持ち、家の中に入る。私たちも続き中に入り、エイミーさんは薬の調合を始めていた。
ごりごりと花をすりつぶし、何かの蜜に混ぜる。
「あなた」
「ああ」
出来上がった薬をグリードさんは受け取り、奥の部屋に入っていった。
私たちも入るとベッドの上に体の半分が苔に覆われた女性がいた。私は思わず声を上げそうになったが失礼だと思いとどまり、声を殺す。
なんだこの病気は。胸が上下してるところを見るに生きてはいるようだが……。人間に苔が生えるなんてことありえるのか?
私がそう思っているとエイミーさんが私の後ろに立つ。
「あれはミドリゴケ病っていって、苔が体から生えてくるの。むしってもむしっても生えてきてむしるたびにやせ細っていって死んじゃう病気なの。治す方法はあの花以外ないの。不治の病なのよ……」
「そうなんですね。恐ろしい病気があったものです」
だからあの花を手にしたとき……。
グリードさんは薬を飲ませているようだった。
「リーラ、どうだ?」
「不思議な味……。うっ」
「リーラ!?」
リーラと呼ばれた女性は突然声を上げたかと思うと、胸のあたりを押さえる。そして、そのままリーラさんは苔をむしり始めた。
普通の人間の体に戻り、リーラさんは起き上がる。
「あーーー、痒かったぁー」
「り、リーラ? だ、大丈夫なのか?」
「う、うん。みたい。苔むしったけど生えてこないし」
苔に覆われていた左手をぐーぱーして見せびらかしていた。
「って、うきゃああああ!? 父さん出て行ってぇ! そこの男たちも!」
「は、はいいいい!」
男たちは出ていく。
リーラさんはそういえば裸だった。エイミーさんは涙を流しながら笑顔を浮かべている。
「あ、えっと、そこのあなた。そのタンスの中に服が入ってるので……」
と、私に向かって言ってくるので素直に出してあげる。
ひらひらとしたレースのドレスだったり女の子らしい服が入っていた。私は一着手渡すとリーラは下着を身に着けその上からドレスを着た。
「えっと、あなたが助けてくれたのかな。ありがとう」
「あ、ああ。よかったな」
「よかったわぁ。もうなんともないん?」
「ええ、この通り。ずっと寝込んでたので体力がほんとにないですが、それはまぁ、頑張りますとも」
リーラさんは笑顔を向ける。強い子だな。
「あ、そうだ。あなたたちにはお礼をしないとね。元魔法師団団長として、魔法でも教えてあげようかしら」
「ええの!? うち使いたい! まほー!」
「私はいい。刀だけで充分だ」
「そう? でもあなたにもお礼を……。剣はたぶん主人から教わるような腕前じゃないでしょう?」
「……まぁ」
「だから魔法をと思ったのだけれど……」
うーむ。
魔法か。どうしたものか。正直使うつもりはないんだがな。
「いい。気にしないでいい。私はハヤテを手に入れたからな。それだけで満足だ」
「わかったわ。無理して教えるものでもないものね」
そういってエイミーさんはキャトラと一緒に行ったのだった。
グリードさんは外に出ておりギルたちに剣を教えている。私はそれが終わるまでリーラさんと話してることにしよう。
《特別クエスト:天使の花は黄色く微笑む をクリアしました》




