万病に効く花を守る鳥 ②
私は刀で胴体を突き刺す。
アイアンイーグルは苦しそうに鳴き声をあげた。
「うぐっ……」
私の体力は半分削れていた。
というのも、飛んでくる鋼の羽が厄介だった。飛んでくる数が多くて対処しきれていない。羽が私の体力を削っていったのだった。
「キエエエエエ!」
「なんのこれしき!」
アイアンイーグルはその足の爪で切り裂こうと突撃してくる。
この鳥はどうやら接近戦が得意なようで、こういう風に突撃してくることが多い。私は刀で受け止め、はじき、攻撃を加える。
アイアンイーグルも疲労がたまっているようだった。
「キエエエエ……」
「ただ、状況は不利のままだな……」
体力レースで負けている。
このままだと私が力尽きるのが速いだろう。だがしかし、勝負の行方はわからん。最後まで戦ってみるしかないだろう。
私は刀を構えなおす。
「キエエエエ!」
「うらああああああ!」
私とアイアンイーグルの爪が再び交差した。
アイアンイーグルは何度も足で蹴ってくる。私はすべていなし、反撃の機会を待つ。ただただひたすら待つ。
いずれ隙をさらすことになる。それまで耐えるのだ。
怒涛のアイアンイーグルの連撃、アイアンイーグルは攻撃の手を緩めようとしない。
「キエッ!」
「見えた!」
アイアンイーグルはとどめと言わんばかりに大きく足を振りかぶる。
私はそのまま胴体を刀で突きさした。アイアンイーグルは攻撃をやめ、地面に墜落する。どうやら翼の付け根あたりを斬ったらしく飛べなくなったようだった。
アイアンイーグルは私を見たかと思うと、力を失った。生きているようだが……。
「まさか、ひと思いにやれ、ということか?」
「キエー」
「それが敗者である自分の運命だというか。潔いな、お前」
私は刀をしまう。
「花を取らせてくれればそれでいい。勝利したのは私なんだからとってもいいだろう?」
「キエー……」
「殺さないのかって? まぁ、むやみやたらに殺すわけはない。お前はこの花を守る使命があったんだろう。害したのはむしろ私のほうさ。すまなかったな、だが、花はもらっていく」
私は黄色い花を摘んだ。
アイアンイーグルはこちらを観察するようにじっと見てくる。すると、鉄の羽がまた飛んできたかと思うと、私の背中を優しく押した。
アイアンイーグルの前に立たされる。
「キエ」
《アイアンイーグルをテイムすることができます》
テイム?
ようするに使役することができるということか。
「キエー」
「わかった。テイムしよう」
《テイムする場合は名前を付けてください》
名前、か。
こういうのは苦手なんだと何度言ったら。
私は頭を使って考えてみる。名づけというのは大事なのだ。
アイアンイーグル……。鋼のワシ……。ハガネワシというのも考えたが安直すぎるしダサい。うーむ。
私は数分考えて、ある名前をひねり出した。
「じゃ、じゃあお前は……ハヤテだ」
かっこいい名前だと思う。
そういうと、アイアンイーグルの体が光りだす。
光がやんだかと思うと、アイアンイーグルは翼を大きく広げ、天を向く。
「キエーーーー!!!」
甲高い咆哮をあげると翼を折りたたみ、私に背を向けた。どうやら乗れといっているようらしい。
私は背中に乗る。ハヤテは翼を大きく広げた。
「キエーーー!」
「よし、じゃ、飛んでみるか」
ハヤテは翼を大きくはためかせる。
ハヤテが地面からどんどん離れていった。私はアイアンイーグルの背中につかまり、下を眺めてみる。
「すごい、本当に飛んでるな……!」
「キエーーー」
機嫌がよさそうだった。
数十分、空の旅を堪能したあとハヤテにさっきの岩山まで戻るように指示を出す。ハヤテは私の指示に従い岩山まで戻ると三人がようやくたどり着いたようだった。
「な、なんやぁ!?」
「か、構えろ」
三人は武器を構える。
私はひょこっと顔をだすと三人は驚いたような顔をしていた。
「よう、遅かったな」
「み、ミツネ……?
「この鳥はアイアンイーグルといってな。さっきテイムした。名前はハヤテという。花もとったしあとは降りるだけだ」
そういうと、三人は真顔になった。
「俺らが頑張って登ってきたというのに……」
「ただの登り損だな」
「もー、最初から任せときゃよかったわぁー……」
三人から落胆の声が聞こえた。
「まあ降りるときはハヤテに乗ればいいだろう。いけるか? ハヤテ」
「キエッ」
余裕だと視線で訴えてくる。
「じゃ、降りようか! 乗れ!」
ハヤテは三人を背中に乗せ、翼をはためかせた。




