万病に効く花を守る鳥 ①
私たちはグリードさんの家の裏にまわる。
家の裏には確かに山があったが、木々が生えた山というわけではなく岩山と呼ばれるものだった。というか、山ではなく崖のようなものに近い。
歩いて登るんじゃなく、岩をつかんで登るしかないということだ。
「……これ登るの?」
ギルたちもこの岩山をみて絶句している。
「この上に必要な薬草がある。頼んだ」
「……」
ギルとクロロはなかなか登ろうとしない。
行きたくないという顔をしている。
「ふむ」
私はとりあえず少し登ってみた。
たしかにこれはつらいかもな。ロッククライミングの経験はないが……。なんとなくできそうでもある。
ただ、先が見えない。目視できないほどこの山は高いらしい。だがしかし、頼まれたんだ。やるしかないだろう。
「ほら、お前ら行くぞ」
「あ、ああ」
私たちは岩山を上っていく。
岩の出っ張りをつかみ、体を持ち上げまた先の出っ張りをつかむ。ふむ、なかなか楽しいな。今度現実でもやってみようか。
私は楽々登っていく。一心不乱に登り続けて数十分後、なにやら頂上が目に見えてきた。
雲を突き抜けやっと頂上といったところだ。私は頂上に降り立つと、黄色い花があたり一面に咲いている。
「なるほど、これが……。だがしかし、番人はどこだ?」
グリードさんの話だとこの花を守る番人がいるという。
だがしかしそれらしき影はみつからない。花が咲いているところをみても魔物の姿はなく、そよ風に花が揺られている程度だった。
「戦わないのか……。残念だ」
私は花に近づき、一本取ろうとしてしゃがむ。
すると、突然風が巻き起こった。風が花を大きく揺らす。
「キエエエエエ!」
「ああ、なるほど。近づいたら出現するのか!」
崖の外には大きな翼をはばたかせるワシのような見た目で人間より大きい鳥が私を睨んでいる。
一本花を摘んでみるとそのワシの翼から何かが飛んできた。私は刀でそれを防ぐ。が、少し腕にかすってしまった。
ダメージを受けた。飛ばしてくる羽に当たったらダメージか……!
「ちっ、崖外だと私は戦えんぞ」
遠距離攻撃を持っていない。
キャトラがいたらいいのだが……。キャトラはまだはるか下にいる。逃げるように降りてもいずれかは追いつかれるだろう。
だから戦うしかない。今、ここで。
「こい」
「キエエエエ!」
ワシは翼を大きく広げ突進してくる。
私は刀で受け止めると、羽が金属のような硬さだった。ガキィンと金属が打ち合ったような音が響く。
ワシは翼で何度もたたいてきたのだった。私は防戦するしかなく、ただただ受け止め流している。
「キイエエエエエ!」
すると、今度は氷の弾丸がとんできた。
魔法、だろう。この鳥魔法も使えるのか。魔法を使えるのは一部の魔物と人間に近い種族と聞いていたが……。この鳥はその一部に入るらしい。
私は鑑定してみる。このワシは”アイアンイーグル”という鳥らしい。羽が鋼のように硬く剣を通さないという。
胴体のほうは柔らかそうだから剣士が狙うとしたら体か……。体もでかいが、体より翼のほうが二倍くらい大きい。隙をつかなければ防御されてしまうだろう。
「……苦戦する理由がわかるな。燃えてきた」
こういう敵と戦う。それは私が大好きなことだ。




