元騎士団長グリードの頼み事
海辺の洞窟から抜け、私たちは砂浜を歩く。
海のほうを見ると透明感のある水色の海だ。汚れも何もない綺麗な海。海辺の洞窟は満潮になると洞窟内にも水が入ってくるらしく、私たちは急いで避難したところだった。
「家があるな。あれか?」
「あれだ」
私たちは特別クエストのために海岸を歩いていた。
さっきあそこにいたのも、ここに来るための時間稼ぎということもある。ギルとクロロが仕入れてきた情報では海辺の洞窟の近くにある家に老夫婦が住んでいて誰かに頼みごとがあるという。
老夫婦は昼頃いかないと留守にしているということだったので海辺の洞窟で昼になるのを待っていたのだ。
私はログハウスの玄関の前に立つ。
ギルは扉をノックした。
「すいませーん」
そういうと、扉が開かれた。出てきたのは厳しい顔をしたおじいさん。おじいさんはいらっしゃいと無愛想に言うと家に入れてくれた。
「もしや街の人から頼みごとがあると聞いてやってきたのかね?」
「そ、そうです。あなたたちが頼みごとがあると」
「ああ、だがしかし、生半可な実力じゃ頼めん。まずは手合わせしてもらおう」
そういうとおじいさんは壁に掛けてあった木剣を手に取った。
「誰が戦う?」
「ミツネさん、お願いできるか?」
「わかった」
そういうとおじいさんは私に木剣を投げてよこした。
私たちは表に出る。このおじいさんの筋肉のつき方は、ずっと剣をふるってきた騎士のようだった。
たぶん、騎士で働いていた過去を持つんだろう……。私はそう考えながらも剣を握る。刀ではなく剣で戦うというのは久しぶりだな。
両手で柄を握りしめる。
「では、手加減なしで頼む」
「無論そのつもりだ!」
おじいさんは砂浜を蹴り距離を詰めてくる。
剣の一撃が飛んできた。私はそれを受けとめる。パワーがすごく押し負けてしまいそうだったので流し、そのまま今度は私が剣をふるう。
「なんと!?」
私はそのまま横なぎに剣をふるう。
防御されてしまった。が、問題ない。手数で勝負するしかないだろう。
「うぐぅ……」
私は矢継ぎ早に次々と一撃を加えていく。
おじいさんは防御するしかなかったようで剣を振ってこない。
「ふんっ!」
私は剣をはじいた。
おじいさんが持っていた木剣が砂浜に突き刺さる。そして、私はおじいさんの喉元に剣を突きつけたのだった。
「おしまいだ」
「……強いな。俺も本気を出していたんだが」
「まだまだだ。私はまだ強くなれる」
私は剣をおじいさんに渡した。
「これで合格だろう? 頼み事というのを聞かせてくれ」
「わかった。とりあえず家に入ろう」
私はおじいさんの家の中に入っていったのだった。
私たち四人は椅子に座らされ、おばあさんが入れてくれたお茶を飲む。
「改めて……俺は元騎士団長のグリード。こっちは元魔法師団団長のエイミーだ。お前らに頼みたいということはほかでもない。ある薬草を手に入れてきてほしい」
そういって、グリードさんは図鑑を見せてきたのだった。
図鑑には黄色い花が写っている。万病に効く薬草ということらしい。
「これはこの後ろにある山の上に生えている。だがしかし、番人がいてわしでも敵わんのだ。だから頼みたい」
「わかりました。俺らに任せてください」
「ああ」
《特別クエスト:天使の花は黄色く微笑む を開始いたします》




