手を組まないか?
イベントまであと残り三日。
私の家のほうでも動きがあり、監視カメラが犯人を捕えていた。というのも、あの女だった。ミロクはすぐに行動に移し裁判を起こしたという。
で、慰謝料をもらった。そして接近禁止令も出されたので嫌がらせはもうないだろう。あの女性の父は必死に頭を下げてきたので許した。
「とりあえず問題は解決か。イベント前だってのにこうトラブルばかり起きる……」
「厄年なんかねぇ」
「そうかもな」
今年は災難に巻き込まれすぎだろう。
私は魔物を討伐しながらそうぼやいた。ぼやいていると突然横から矢が飛んでくる。私はそれを躱しそちらを睨むと矢を放ったであろう二人組がたっている。
私は男たちを睨んだ。
「今の躱すって実力は噂通りなんだ」
「普通の人じゃ絶対躱せないぜあんな不意打ち」
男たちは笑顔のまま近づいてくる。
「笑顔で不意打ちとはずいぶんなご挨拶だな」
「うちらとやるつもりなんか?」
「いや、そうじゃない。アンタらの実力を確かめたかっただけさ。謝るよ。すまなかった」
男は軽々しく謝ってきた。
「俺はギルド”ギルティクラッシュ”のギル。こっちはクロロ」
「よろしくな」
「……」
真意が読めん。
笑顔が顔に張り付いているこの男。何のために私に近づいてきているのか。矢を放ってきたという時点ですでに信頼はない。
行動次第では殺してやるしかない。
「そう警戒するなよ。もう攻撃しない」
「いきなり矢を放つ相手を信じられるわけないやろ」
「なら……」
ギルと名乗った男性は武器を捨てた。
武器を地面に投げ、拾いに行く素振りも見せることはなかった。
「俺らはただ話に来ただけだ」
「……話?」
「ああ、イベント、近々あるだろ?」
ギルはそう切り出すと。
「その時、俺らで手を組まねーか?」
という提案をしてきたのだった。
ギルたちと手を組む。ふむ。実力もわからんが割と強そうというのはわかる。足手まといにはならないだろうが……。だがしかし。
「断る。こちらにメリットがない」
「そうだよなァ。あんたらめっさ強いって話題だから俺らごときじゃメリットにならねーか」
「俺らも別にあんたらより強いとか思ってるわけじゃねえしな。ま、最後まで聞いてくれよ」
まあいいだろう。最後までは聞いてやろうか。
「俺ら、別に勝利とか望んでないわけ。イベントに参加するのもある理由があるんだよ。イベントでしか起こらない特殊クエスト。俺らはそれ目当てで参加するってワケ。だから俺らがポイントを手に入れたら譲渡してやるよ。採取バトルサバイバルだろ? 採取ってんなら俺らだって活躍できる。お前らは俺ら分のポイントが手に入る、俺らはお前らという心強い用心棒が手に入る。ウィンウィンな関係だろう?」
ふむ、たしかにそっちのペアの分のポイントが手に入るというのは大きいかもしれない。
キャトラもそう思っているのか悩んでいる顔だった。
「……裏切った瞬間に即殺す。それでいいな手を組もう。」
「せやね。いきなり矢を放つ相手は信用ならんわな」
「交渉成立、ととらえてもいいのか?」
「ああ、手を組もう」
私がそう言うと男たちの顔は笑顔になる。
「よかった。安心してください。俺はアンタらを敵に回したくない。敵に回したくないからこそ手を組むって言うのもあります。裏切ったらそれこそ敵に回すだろう? 俺らは約束する。決して裏切らねえ」
「裏切ってもいいぞ? 戦えるのなら」
「いや、勘弁してくれ……。俺らだってお前らに敵うってうぬぼれてねえつってんだろ。実力は見誤らないほうだぜ俺ら」
なんだ、戦えないのか……。
「戦えないって知ってがっかりしとる……」
「裏切ったほうがいい感じなのか?」




