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まともそうに見えて

 変な女に絡まれたが気に病まずゲームをしよう。

 私は冒険者ギルドに入るといつにもましてプレイヤーの数が多いような気がした。受付は行列ができており、すぐに対応してくれそうにもなく、こんだけいるとクエストもないだろうなと思ったのでギルドを後にする。


「なんや今日はみんな忙しそうやなぁ」


 キャトラはそう漏らしていた。

 私たちは路地裏に入っていく。路地裏の奥のほうの行き止まりにつき、私たちは立ち止まる。


「そろそろ姿を現さないか?」


 私がそう言うと、後ろから影が伸びてくる。

 誰かがたっている。私は振り返ると、あの時の女性だった。その顔は憎悪に染まっており、私を鋭く睨みつけている。

 こいつが友里恵……という女だろう。


「なんで私をつけてたんだ?」

「……さい!


 つんざくような怒鳴り声。

 私はうるさくて思わず耳をふさぐ。


「なんであんたのような貧乏人がミロク様のパーティーに呼ばれるのよ! 身の程を知りなさい! あの時はアンタが素直に身を引くのが正解だったのにっ!」

「いや、そうでもないやろ。人の名前使って入る時点で身を引くもくそもあらへんやん」

「うるさい!」


 女が怒鳴ると火の玉が飛んでくる。

 キャトラはギリギリのところで躱した。本当に不意打ちだった。私とキャトラは武器を構える。

 すると、女の後ろから仲間が三人くらい現れた。全員杖を持っている。魔法使いか。


「ほんっとムカつく!!! 死ねよもう!!!」


 全員が一斉に魔法を放つ。

 飛んでくる火の玉。私はギリギリのところでジャンプして躱す。そして、後ろに回り込むと刀で背中を切りつけた。

 視線が全員こちらを向くとキャトラが放った矢がもう一人の首に刺さる。


「なっ……」

「ほら、武器を構えろ。戦うんだろう? そのつもりならいくらでも相手してやる」

「ひいっ」


 女は私の気迫にびびったのか手が震えている。

 私は喉元を突き刺した。


「殺し合いの最中にびびったら負けだ」

「う、うああああああ!!」


 一人が私めがけて魔法を放ってくる。もう一人はキャトラめがけて魔法を放っている。

 私は刀で魔法を切り裂いた。そして、そのままその魔法使いを切り捨てる。キャトラのほうも対処はできたようだ。

 あとは友里恵と呼ばれていた女性が一人。その女性は私たちにビビって腰を抜かしている。


「ほら、立て。殺し合いはお前が武器を構えないと始まらないだろう」

「た、助け……」

「怒ってるわけじゃない。逃げたいのなら逃げればいい。戦うか、降伏するか選ばせてやろう」

「ミツネ……」

「私と生死をかけたデスマッチをするか? 私を殺したいほど憎いんだろう? ならやるしかない。立つんだ」

「ミツネ、あんた変やで……? ここまで怖いミツネ初めて見る……」


 女は涙目のまま這いつくばって逃げ出した。

 私は刀をしまう。


「ミツネ……。あんた戦う時本当に性格変わるんやな」

「別に。変わったわけではない。もとよりあんな性格だ」

「……狂っとるなぁ。あんた、まともに見えて相当狂っとる」

「自覚はしている。だがしかし、狂ってるのはお互い様だろう」


 私がそう言うとキャトラは目を丸くする。


「……いや、うちはまともやで?」

「いや、私が見るに相当狂ってると……」

「んなわけないやん!?」

「狂ってないやつがいきなり服を……」

「あれは完全に酒のせいやん!? 酔っぱらっとって記憶ないんよ!? またそれでからかうつもりなんか!?」

「私の純潔を……」

「やっぱりほんとに一線超えてたん!?」


 からかうのはやはり楽しい。

 酒の失敗談でからかうというのは楽しいものだ。


「冗談だ」

「もう忘れてーな……」

「いや、無理だろう。パーティー直後にログインしたらお互い気まずかったじゃないか。見ていて面白かったぞ」

「サディスティック! あんたSやなぁ!?」


 ははは、人が嫌がる姿は面白い。





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笑う門には福来る!
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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