嫌がらせ
イベントがあるのは一週間後。
私は剣道の素振りを終え、郵便がないかポストを見に行った。ポストを開けてみると、郵便物がなぜか濡れている。
そして、なにか臭い液体が中に入っているようだった。この匂いは……。
「すごい匂いだな……。ものすごく臭い」
中を覗き込んでみた。
中には魚のようなものが入っている。入れていたであろう缶詰もあり、シュールストレミングと書かれていた。
シュールストレミング。世界一臭い缶詰だったか。いやがらせ……だろうな。このポストはもう捨てるしかないか。匂いはとれなさそうだし。
「それにしても誰が入れたんだ? 十中八九嫌がらせだろうが……」
誰かから恨みを買った覚えはない。
少なくともこの街の人とは関係も良好だし嫌がらせするような幼稚な人はいない。街の人じゃないとしても、そこまで親しい人はいないのでその線も違うのだろう。
「警察に相談すべきかな……。でもこういうのって介入してくれなさそうだしな……」
この嫌がらせが今日だけで終わるとは思えんし。
こういうのは探偵とかを雇って犯人を突き止めたほうがいいだろうか。
そう考えているとある人が頭の中に浮かんできた。
思い出すのは弥勒の誕生日パーティ。私の名前を騙ってパーティに出席しようとしてきた女性。あの人が逆恨みして……。というのもあるのだろうか。
あり得るな。あの女性とはかかわりはないがやりそうだ。
「弥勒に相談しよう」
私は道場の中に入りゲームにログインした。
ゲームにログインするとミロクがすでにログインしており、メッセージを飛ばすとすぐに向かうと言って、数分後に拠点にやってきた。
「珍しいな、ミツネから呼び出すのは」
「ああ、相談したいことがあってな」
「相談?」
私は今朝の嫌がらせのこととあの前に私の名前で参加しようとした人について尋ねてみるとミロクは顔色を変える。
笑顔で対応してくれていたはずが真顔になっていた。
「……分かった。まずは証拠を押さえよう。またいたずらしてくるかもしれないんだろう? 今日急いで監視カメラをつけさせる」
「今日来るのか?」
「ああ、早いほうがいいだろう?」」
といってミロクはログアウトするといってログアウトするのだった。
「……頼もしいな」
だがしかし、嫌がらせがあるのは現実だけでもなかった。
私がキャトラと歩いていると。
「なんか後ろから誰か尾行してきてないか?」
「なんか気配感じるなぁ……」
誰かに尾行されている。
後ろを振り向いても姿が確認できなかった。
「なんかしたんか?」
「いや、特にした覚えはないが」
「そうよなぁ。だったらなんで尾行してるんやろ。気色悪いわぁ」
キャトラと同じ気持ちだ。誰かに見られ続けているというのはどうも気色が悪い。
「……ああっ、くそっ。なんかやる気そがれるわ」
「そうだな」
なんかぞわぞわする。
すると、私たちの前に数人の女性が立ちふさがった。装備がきちんとしており、顔はとても怒っているような顔だ。
私は刀に手をかける。
「なんだ?」
「あんたミロク様から離れなさいよ!」
女は甲高い声で怒鳴る。
ミロク目的か……。どんだけモテるんだあの男は。
「友里恵さんがかわいそうじゃないの!」
「友里恵……?」
「あんたが追い出したんだってね! 宗形!」
「追い出した? ああ、もしかしてあのパーティの」
なるほどな。あの女の本名は友里恵というのだろう。
「あんたのせいで泣いてたのよ!」
「知るかそんなもの。私の名前を勝手に使って入るのが問題だろう」
私はそういうと女は口答えするなと怒鳴る。
そして、もう話が通じないと思ったのかいきなり剣を向けてきた。
「もう死ねっ!!!!」
「ずいぶんと短絡的だな」
女は剣を振りかぶって突進してくる。
私に剣を向けるということは戦う覚悟があるんだろう。やってやろうじゃないか。
私は刀を抜き、そのまま横に薙ぎ切り捨てる。女は死ぬ間際に剣を振り下ろしてくるが私は腕を刀で突きさした。
女は剣を落とし、そのまま塵となって消えていく。
「なっ……!」
「さて、次はどいつだ? お前ら全員武器を抜いてるということはやる気があるんだろう? かかってこい」
「ひ、ひいいいい!?」
女たちは逃げだした。
私は刀をしまう。
「戦う覚悟もないくせに武器を抜く愚か者どもが……」
「あんた怖いわぁ……」




