妖精の鎮魂歌 ④
フランケンシュタインとの戦闘を終えてドロップしたものを確認した後、私たちは液体の中に入っている妖精たちを解放するためにガラスを割る。
液体が中から飛び出して、妖精がそれと一緒に流れてくる。私についてきた妖精が駆け寄る。が、妖精の顔色は優れないままだった。
私は何となくいやは予感はしていた。
もうこの妖精たちは……。そんな考えが頭によぎっている。私は確認するために妖精に尋ねる。
「生きてる、か?」
私はそう尋ねると、小さい妖精は力なく首を横に振った。
「死んでる……。力のかけらも残ってない……。こ、ここにあるのはただの……」
「体だけということか」
案内してくれていた精霊は死んでしまった精霊から離れ、私の肩に乗る。悲しげな顔をして何もしゃべらなくなった。
「……お前ら。感謝する。そして、妖精殿。すまなかった」
「…………」
「許されることじゃないだろう。人間を恨んでもいい。だが、罰を受けるのは俺だけにしてくれないか。俺以外には罪はない」
「いいや、お前以外にも罪はあるよ」
私は後ろを振り向いた。
そこにはケット・シィがいた。ケット・シィはリビルドを睨む。
「お前たちの街の住人は知らずとも妖精の恩恵を受けてたんだ。知らなかったですむ問題じゃないんだよ。知らないだけでも罪になるんだよ」
「…………」
「妖精だってこの世に存在する生き物さ。君たち人間が欲するような力もある。その力を欲し、生活に役立てていたのはお前たち人間じゃないか。罪のない妖精から力を搾り取って豊かに過ごしていた。その代償はどうするの? まさかここまでやっておいてお前ひとりだけで済ませろなんていう甘いことは言わないよね?」
ケット・シィは強く攻め立てる。
リビルドは黙ってしまった。反論の余地もない。一人だけに背負わせるという考えは甘いのだ。誰か一人犠牲になったとしてもすまされる問題じゃないだろう。
この街に住むすべての人が知らず知らずに恩恵を受けていた。その人たち全員に罪がある。
「ま、でも……」
「でも?」
「君が作ったこの街は評価に値するね。妖精は遊ぶのが好きだからさ」
「……おもちゃのまちってまさか」
「ああ、俺が妖精たちのために作らせた。俺は……そういうことでしか贖罪ができなかった」
「だろうね。あの石像は妖精じゃなきゃ破壊できないようなものだったから。妖精たちのためにこの街をおもちゃにしたってのは素直に感心するね。君は本当に妖精たちを想ってる」
この街が異様にカラフルなのも、遊べる場所が多く遊ぶ道具が多いのも。すべて妖精のため……。
それがこのリビルドにできる唯一の贖罪だったから……。なるほどな。
「これからも妖精たちのために遊ぶ場所を提供してくれるのなら、許すよ。僕は王である前に一匹の妖精だからね」
「……ああ。約束する。俺はもう、妖精たちとの約束をたがえることはない」
リビルドは強く決心したようだ。
「ミツネにも感謝だね。ありがとう。倒してくれて。あとそっちは仲間かな? 僕が報酬を渡すのは依頼したミツネだけだけどありがとうとは言っておくね」
「ええよ。成り行きやったし……」
「それじゃ、ミツネ。僕からのお礼さ。受け取って」
《妖精王の加護を取得しました》
《狐の獣人から特殊進化します》
《九尾の獣人となりました》
《固有スキル:陽炎を取得しました》
私のお尻のほうにある狐の尻尾が増え、九つになった。
「……九尾やん!」
「進化したとか言ってたぞ」
「進化!? 進化するんや!?」
「妖精王の加護はそういうものだからね。猫の獣人も進化はできる。けど、妖精王の加護だけじゃない方法でもできるから頑張ってね」
「うん! がんばるわ!」
「それじゃあー」
ケット・シィは去っていく。
「さて、いくか」
「待ってくれ」
私たちはリビルドに呼び止められた。
「ぜひ、私の屋敷に来て欲しい」




