妖精の鎮魂歌 ①
私は肩に妖精を乗せながら歩く。
妖精は私の髪をぎゅっと握り、少し怖がっていた。
「妖精は人間が怖いの?」
「当たり前ですよぅ! 人間は昔妖精を乱獲してたんですぅ……。妖精は結晶へと姿を変えられて力を絞られるんです……。い、今はそんなことしないってのは聞いてるんですけどっ!」
「過去のことがあるから怖いというのも当たり前か」
だがしかし、この妖精は私だけは怖くなさそうにも思える。
私は妖精の案内を聞き、入り口まで行こうとすると。
「なんやミツネ。肩にちっこい人形乗せて……」
「ん? ああ、キャトラ」
キャトラと出会った。
キャトラの装備が少し変わっている。どうやら装備を新調したようで、その帰りらしい。妖精は私の首の後ろに姿を隠す。
私は優しい声で言い聞かせた。
「大丈夫だ。私の仲間だ」
「ミツネ様のお仲間さんですかっ、なら安心ですねっ」
「私の仲間というだけで信頼するというのはちょろすぎないか」
私はキャトラに妖精のことを説明してみる。
「なんやそれファンタジーやん! うちそういうの待ってたんよ! 妖精さん初めましてなぁ! うちキャトラ! ちっこくてめっちゃかわええわぁ」
「初めましてぇ! 妖精です! キャトラさんよろしくねっ!」
妖精はキャトラの周りを飛び回る。
「ああ、キャトラ。今から敵を倒しに行くんだけど来る?」
「バトル? ええよ。いこか。他のメンバーはどする?」
「うーん、キングヒグマ一体で勝てる強さって言ってるから余裕じゃない?」
「キングヒグマの強さって相当強いやつやん!? うち無理やで!?」
「私がいる。大丈夫だ」
キングヒグマより弱いというのならまだ勝ち目はあるだろう。
キャトラを連れ妖精が囚われてるという地下に繋がる階段に案内されることになった。
街の路地という路地を抜け、そこにあったのは一つの石像。騎士のような姿をかたどった石造が不自然に置かれており、妖精は魔法を唱えると石像は木っ端みじんに破壊されたのだった。
そして、木っ端みじんになった石造がなくなると階段が見えるのだった。
「よっし、これで中に……」
「ちょっと待ってくれないか」
私たちが階段を降りようとすると騎士のような恰好をした男たちを引き連れた男が私たちを止める。
男は胡散臭そうな笑みを浮かべていた。
「誰だ?」
「俺はこの領の領主、リビルド・スタッカートだ」
リビルト・スタッカート。スタッカート男爵というと子供っぽい精神年齢をしていると聞いてるがどうも話と違う。
どう見ても大人だといえる。
私が刀に手をかけていると騎士たちも応戦できるように剣を引き抜けるように体勢を整えている。
「領主様がどんな用で?」
「俺は先祖の過ちを正しに来ただけさ」
「先祖の過ち?」
私はリビルトをにらみつける。
「そう睨まないでくれよ。俺はとやかくするつもりはない。俺はその石像をどかしてくれる奴を待ってたのさ。俺の先祖が妖精を捕えててね。それを解放しにここまで来た」
そういうが、男はどうも胡散臭い。
「胡散臭い顔してるやん? 絶対嘘やで?」
「ふぐぅ」
「ああ、たしかになにか考えてそうな目だ。信用できん」
「ぐあっ!」
「貴様らリビルド様を侮辱するようなことをいうな! こう見えて捨てられた子犬を35匹も保護してるぐらい優しいお方なんだぞ!」
「ぐああっ!」
「それにこんな胡散臭そうな顔してても俺らを気にかけてくれるほどやさしいお方だ! 顔はあれだが!」
「もう、やめてくれ」
こいつら庇ってるように見せかけて貶めてないか?
まあ、ここまで慕われてるんなら信じてもいいだろうが……。
「顔は生まれつきだよこんちくしょうがっ! 俺はこの顔のせいでいっつも損をするっ! いいから行くぞお前ら! 先祖がしでかしたことは俺がぬぐってやらねえとなぁ!」
そう叫ぶリビルドは涙目だった。
「私たちも戦おう」
「……お前は無関係じゃないか。付き合わなくてもよいのだぞ」
「気にするな。妖精から頼まれただけだ」
私はリビルドの後ろについていくことにした。




