妖精王ケット・シィの頼み事
私はレベル上げをしようと街の外に出る。
街の外は魔物が出るのと、王都付近より魔物が強いというのもありしばらくは相手に困らなさそうだと思っていた。
するとその時だった。
「グル」
「またキングヒグマか?」
私の目の前にクマが現れたのだった。
その姿は前に見たキングヒグマと同じ大きさだ。キングヒグマは私を見ると、突然しゃがみこんだ。そして、乗れと言わんばかりに顔を動かしている。
私はキングヒグマにまたがってみるとキングヒグマは立ち上がり、走り出す。
「どこいくんだ!? 戦うんならここでもいいだろう!?」
「グルル」
「戦うのが目的じゃないとかそういうことなのか!?」
そういうとキングヒグマは黙った。
沈黙は肯定しているととらえてもいいのだろうか。
キングヒグマは森の中に入っていく。
道なき道を強引に突き進んでいくキングヒグマ。私は木の枝などにぶつかるために低姿勢を取る。
そのままキングヒグマに身を任せていると、開けた場所に出てきた。
「ほう……」
キングヒグマは立ち止まる。
連れてこられたのは泉だった。日の光が入らない森の奥深く。だがしかし、太陽の光などがあ入ってこないのに泉は妙に明るい。
それもそのはず。光る物体が泉の周りとふわふわ浮いているからだ。
「なんだここ……」
「おー、連れてきたんですねぇ」
「何者だ?」
私は刀に手をかけながら振り返る。
振り返ると、そこには二足歩行の三毛猫がいた。腰には小さい剣を差しており、片方の目が傷でつぶれている。
なんだ?
「ようこそ、妖精の泉へ。僕は妖精を束ねる妖精王のケット・シィというんだ。よろしくね」
「私はミツネだ。それより……妖精?」
妖精。それはおとぎ話でもよく出てくるような奴か。
小人みたいな感じだと思っていたが猫なのか。猫ちゃん……。
「君は妖精騎士王キングヒグマと互角の実力を持つ獣人さんっていう話を聞いてね。ぜひとも君に頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと?」
「君たちはおもちゃの街にいただろう? 実はあの街の地下には囚われてる妖精がいてね。助けて欲しいんだ。あれは強すぎる。キングヒグマ一体でも勝てるけど、彼は図体がでかいから入れないんだ」
おもちゃの街の地下に妖精がいる? そんな話聞いたこともない。
もしそういうことなら、伝承などで伝わっててもいいはずなのに。
「君がもし、妖精を助けてくれたら妖精王としてお礼をしようかな。妖精の力を君に貸してあげるよ」
「あ、ああ。わかった。引き受けよう。だがしかし、入り口は全くわからないぞ私は」
「それなら妖精に案内させよう。そこの妖精さーん」
ケット・シィが呼ぶと妖精はふよふよと近づいてくる。
ケット・シィが妖精に何かを話すと、その妖精は私の周りをくるくる飛ぶ。そして、私の肩の上に妖精は止まると、妖精はちっちゃい人の姿になった。
ちょこんと可愛く座る女の子の妖精。妖精はよろしくー!と元気よく挨拶をしてきた。
「ああ、よろしくな」
「早速だけど頼むね。君は妖精の泉にいつでも入れるようにしておくからさ」
「わかった。道は覚えてないが……」
「道ならこの私にお任せですよミツネ様! 私はどこにいても泉の場所はわかりますからねっ! ふふんっ」
「頼もしいな」
私は指先で妖精を撫でてみる。妖精は気持ちよさそうに目を細めた。
「それじゃ、やるとしよう。行ってくる」
「良い結果を期待してるよーん!」
《特殊クエスト:妖精の鎮魂歌 を開始いたします》




