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剣星のタイガ ②

 ミツユが私をスケッチしている。

 私は剣道の構えのまま姿勢を保っていた。


「さすが姿勢が本当に綺麗ですねぇ。ここまで姿勢が綺麗な人見たことないですよ」

「武道は美しくやるというのも大事だからな。所作や姿勢も重要になる」


 乱れた心は剣に現れるという。

 普段から冷静で、姿勢を正していればどんな時も美しく見えるものだろうと思っている。


「こんな感じでどうでしょう?」


 見せてきたのは私の似顔絵だった。

 袴を着ており、凛々しい顔、まっすぐ前を見つめる鋭い瞳。現実の私と同じ後ろでまとめ上げられたポニーテール。いいんじゃないだろうか。

 私に近い……というか、私の絵だなこれは。


「いいんじゃないか? 私にすごく近い」

「……いいんですか? 髪形など変えずに掲載して」

「構わん。ろくでもない悪役じゃないんだろう? 強豪校に通ってるやつで今まで剣道で負けたことがないという相手なだけだ。そこまで私に悪評がたたん」

「ならお言葉に甘えて……」


 ミツユはスケッチブックをしまう。


「あ、ミツネさん。もう一つ頼みたいことが……」

「ぜひフレンドになっていただけないでしょうか」

「フレンド? ああ、いいぞ」


 そういうとミツユからフレンド承認申請が届いた。

 私は了承するとミツユとフレンドになりましたと表示され、フレンド欄にミツユの名前がでていた。

 

「それにしてもゲームしてていいのか? 週刊連載は大変だと聞いているが」

「今週の分は描き終わってるので大丈夫ですよ。今はネタ集めと異世界というこのゲームの中で背景などに使えそうなところをスクショしたりとかしてるだけですから」

「異世界? 剣星のタイガは現代日本だろう?」

「次の作品の舞台ですよ。それに、こういうのはあっても無駄じゃないですからね。使えるような景色は何でも使いますから」

「なるほどな」


 漫画というのはよくわからないが……。たしかにいろんな素材があっても困ることはなさそうだな。

 現代日本でこんなおもちゃのような街はないだろうが異世界だとするとあるかもしれない。異世界というのはたまに教え子たちも話しているのを聞いている。


 やれ異世界転生したいだの異世界転移して女神さまからチートもらいたいだのといっている。チートって何だ? 異世界があるってわかっていってるのだろうか。

 教え子たちの言葉はたまに謎なのである。


「剣星のタイガのキャラが異世界に転生したっていう二次創作があるとするとこんな世界に来るのかな……」


 ミツユは手でトリミングし覗き込む。


「漫画のことしか考えてなさそうだな」

「常に漫画のことしか考えてませんよ」

「仕事人だな」

「ははは、ま、漫画を描くことが趣味なので趣味人ですけどね」

「私と同じようなものだな」


 ミツユと私は笑いあう。

 割と気が合うな。ミツユは少し話しやすい。物腰が柔らかというのもあるが、ちゃんと話を聞き、ちゃんと自分の意見を言うような奴だからだろう。


「おーい、ミツネ」

「おっ、あれは不死鳥の……。ミロクさんですね。見た目もいいし漫画の主人公とか恋愛漫画のヒーローにできそうだなぁー」

「ほんとに漫画のことしか考えてないんだな」

「いや、あれ以上に漫画の中のキャラクターっていう人いないですよ? 今度取材できないかな……」


 仕事人は時に怖い。






次からちゃんとゲームします。たぶん。

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笑う門には福来る!
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