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誕生日パーティ ②

 弥勒の誕生日パーティは立食形式で、好きなテーブルで食べていいということだった。私は四人で一つのテーブルを囲む。

 中華料理が並んでおり、小籠包にシュウマイ、餃子などの匂いが鼻をくすぐる。


「ったく、弥勒も大変やねぇ……」

「失礼します」


 私たちのところにウエイターの人がやってくる。


「お飲み物は何にいたしますか?」

「うちウーロン茶」

「俺ハイボールでいいわ」

「ワインで頼む」

「僕もウーロン茶かな」

「かしこまりました」


 ウエイターの人は去っていく。

 

「酒飲まねえのか?」

「うち酒弱いんよ。ジョッキ一杯でもうべろんべろんや。うちでなら飲むで」

「僕は酒がそんなに好きじゃないからね……。幽音さんは飲むんだ?」

「日本酒とワインならいくらでも飲めるな。ハイボールもいける」

「俺と好みが一緒だな。俺もハイボールとワインが好きだ」


 城崎も私と好みが同じだという。

 そして、私たちの目の前に飲み物が運ばれてきた。ワイングラスに入った赤紫色の液体の香りが広がってくる。

 弥勒のことだからいいワインを使ってるんだろうなぁ。


「っと、弥勒がしゃべるみたいやで」


 弥勒が壇上に上がる。客の視線は壇上に向いていた。


『今日は俺の誕生日パーティに来ていただいたこと感謝いたします。ここにいるのはすべて俺がお世話になった人たちであり、助けていただいた方でもあります。あなた方のために精一杯のもてなしとさせてください。まぁ、長い前置きはなしにして本日は楽しんでいってください。では、皆様、飲み物をお持ちくださいませ』


 と言われたので飲み物を持つ。


『乾杯!』


 弥勒がワイングラスを掲げる。私たちもそれに倣いグラスを掲げ乾杯と大きな声で叫んだ。 

 私はワインに口をつける。葡萄の香りが鼻を突き抜けていく。うん、美味い。


「じゃ、早速食べようや!」

「そうだね」


 私は箸で餃子と小籠包を取り皿にのせる。

 餃子を食べてみる。おいしいな。うん、美味い。総菜の何十倍もうまい。


「餃子のつけたれって好みあるわなぁ」

「そうだな。俺は酢が2の醤油が7、ラー油が1が黄金比だと思ってるぜ」

「僕は醤油9の酢が1かな」

「うち醤油6の酢4やな。ラー油入れんなぁ」

「もったいねぇ。ラー油入れてこそだろう」

「辛いのそこまで得意じゃないんよ」


 三人は餃子のタレ論争を始めてしまった。

 私はもくもくと食べ進める。ちなみに私はたれにつけない派だ。そのままの味を楽しむのが私。変わり種であるというのは自覚している。


「おお、これはこれは猫原さん。ご無沙汰しております」

「新星堂の社長さん。どうもどうも。CMに起用していただいてありがとうござました」

「こちらこそありがとうございました。あなたのおかげで湿布の売れ筋が伸びて伸びて」

「伸びとるのは社長さん所の品質がいいからですよ。うちは宣伝の駒っちゅうだけですから」

「ほめていただきありがとうございます。これからも私どもは猫原さんのスポンサーとしてよろしくお願いいたします」

「こちらこそ頼んます。練習場とか提供していただいてて感謝しかありませんわ」


 大人の会話だ。

 たしかにミケも割とテレビで見るようなアスリートだもんな。普段から見ているから忘れていたが。

 リュウのほうを見るとリュウも挨拶に来ている人がいた。城崎と私だけぽつんと一人だ。


「すいません、隣よろしいでしょうか?」

「ん? ああ、かまわ……ないですよ」

「ありがとうございます」


 私の隣に高校生だと思われる年齢の女の子と小さい女の子がたつ。


「はじめまして。私は八十家の八十 大樹と申します。男のような名前ではありますが女の子なので」

「私はねー、真珠っていうのー!」

「どうも。宗形 幽音です」

「宗形……? 宗形ってまさか……百戦無敗の?」

「知っているんですか」

「知ってますとも! 兄が百戦無敗の宗形様に憧れて剣道を極めようとしてるのです! 兄があそこにおりますので是非ご挨拶をさせてくださいませ!」


 そういって八十さんはあそこで談笑している兄のところにいくと腕を引っ張ってこちらに連れてきていた。


「なにするんだ大樹。せっかく話していたのに」

「兄さま! 兄さまが憧れてる人が前にいるのになんてことを言うのですか!」

「憧れてる人……? って、百戦無敗の……」

「宗形 幽音と申します」

「八十 菩提ぼだいといいます。あの、俺、昔あなたの剣道の試合を見て憧れていた……んです。サインもらっても」

「構わないですよ」


 サインと言ってもそんなのないんだが。


「嬉しいなぁ……」

「ふむ」


 私はサインを書きながら菩提と言われた男の子の体を見る。

 筋肉もきちんとついている。がっしりとしたたたずまいを見るに相当強そうだ。戦ってみたい。


「……今度戦わないか? 剣道で」

「えっ……」

「嫌ならいいんだが。体つきとか見ていると強そうだと思ってな」

「大丈夫です! 百戦無敗の宗形様に指導をいただけるということなら大歓迎ですとも! ぜひ明日にでも俺の家に来てください。あ、連絡先も交換いたしましょう」

「ああ」


 連絡先を交換していると弥勒が近づいてくる。


「なんだ幽音。八十家のところと仲良くなったのか?」

「弥勒。剣道をやってるというからな。強そうだし戦ってみたいと思って」

「そうか。ま、頑張れよ。そいつも強いからな」

「わかってるさ。私は実力を見誤るようなことはしない」


 強そうで素晴らしい。

 こういうやつと戦いたかった。




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笑う門には福来る!
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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