乱気流ケルベラ ②
ケルベラと一緒に街の郊外にやってくる。
すでにキャトラたちもいた。キャトラの隣には申し訳なさそうな顔をしているミロクとリュウ。そしてむすっとした顔のナックル。
まぁ、会いたくないというようなわがまま言えるようなクエストじゃなさそうだもんな。
《緊急クエスト:スタンピード を開始いたします》
そうして、私たちは魔物めがけてつっこんでいく。
刀を引き抜き、魔物の急所を狙い切り捨てる。スタンピードの魔物はどうやら体力がものすごく少ないらしい。が、数が多いためきついのだという。
私は羊の魔物を斬り、牛の魔物をつき、命を奪っていく。
昔あった戦争というのはこういう感じなんだろうか。止まっていられない。止まったら死んでしまうだろうな。
「面白い。やってよかった。いくらでも命を懸けるような場面が来る」
私の気分は高揚している。
私が戦っていると後ろから何かが走ってくるような音が聞こえる。「どけどけどけ」と乱暴な声はケルベラの声のようだ。
ケルベラは手で魔物どもを薙ぎ払い、魔物の中を無理やり突っ切るような感じで倒している。
「ミツネ! お前ここにっ!?」
「ああ、ケルベラは何で来たんだ?」
「スタンピードはあの奥にあるダンジョンコアを破壊しなきゃ終わらねーんだよ!」
「ダンジョンコア?」
私は奥に視線を向けると紫色に輝くひし形の物体が浮いている。
あれがダンジョンコアというやつなのだろうか。しかし、ダンジョンコアがこんな地表にむき出しって……。ダンジョンコアとしてどうなのだろう。
だがしかし、終わらせる方法は理解した。
「退きやがれ! 乱気流ケルベラ様のお通りだ!」
「乱気流?」
「俺の呼び名だぜ! 荒々しく暴れることからつけられた! 俺は気に入ってる!」
「たしかに。ぴったりかもな」
決まった型がなく荒々しいほどの戦いぶりだ。これが喧嘩というものなんだろう。
「私もそういう風にしてみるか。型にはまらず動けばいいんだろう」
私は刀で次々と斬っていく。
居合斬りなどである決まった型などではなく、自由に振り下ろし、自由に振り上げる。喧嘩を剣術に応用すれば負けることはなくなりそうだ。
「オラァ! ダンジョンコアまであと少し! てめえら邪魔すんじゃねえ!」
「もっとかかってこい。死ぬ気で私と戦え。私も死ぬ気で戦ってやる」
ケルベラはダンジョンコアめがけて走って向かう。
魔物が守ろうとコアの前に立ちふさがるがケルベラはそれを意に介さずぶん殴り殺した。そして、ケルベラはダンジョンコアをぶんなぐっている。
ダンジョンコアにひびが入った。そして、そのひびはどんどん大きくなっていき、全体にまで及ぶ。そして、コアは弾け、周囲に散らばった。
私たちが戦っていた魔物が消える。死体も一匹残さず消えていた。
「いっちょ上がりだ。それにしても、最近妙に多いぜスタンピード」
「最近?」
「ああ、最近ある。うぜえくらいにな。何らかの陰謀を感じるぜ? もしかしたら魔王復活の兆候かもしれねえな」
「魔王?」
「知らねえのか? 未開の地に住む魔王だよ。魔王は人間が住むところを侵そうと未開の地から侵略しに来たんだ。だが、勇者が討伐したっつー話だ。有名なおとぎ話だろ」
「そうなのか。無知だった」
魔王、魔王か。




