貴族の後ろ盾
王都に到着し、私たちは拠点に戻りログアウトして明日を待つことにした。
もう夜遅いからな。
翌日ログインし、私たちは貴族街のほうに向かう。ロキ・エレバートン公爵の屋敷の目の前に立つ。
ロキ・エレバートン公爵の屋敷の前には馬車がずらっと並んでいた。
「すごいな」
私はそう漏らす。
これは入れるのだろうか。私は馬車の列を通り抜けると兵士が私たちの前に立ちふさがる。
「何者だ?」
「この先は……」
兵士たちは通せんぼするかのように剣を交差させる。
すると、奥のほうから兵士の格好をした男二人がやってきた。前に助けたあの護衛たちの顔をしている。
「あー、その人たちは通していいです。恩人さんですから」
「はっ」
通せんぼをやめ、私たちは門の中に入れてもらえた。
護衛が私たちの前に立ち、頭を下げる。
「改めて……。助けていただきありがとうございました」
「気にするな。家主の下に案内してくれるだろう?」
「ええ、あなたたちは最優先で通せと言われておりますから」
護衛たちは屋敷の中に通してくれる。
中は豪華なツボなどの美術品が飾られており、メイドさんたちもあわただしく動いている様子が見える。
リアルメイドさん初めて見たな。
「こちらです」
「ああ」
「……このツボたかそー」
「あまり触るなよ。そういうのは高いからな」
「はいっ」
ミロクから注意を受けリュウは触ろうとしていた手を止めた。
割と雰囲気に押されている私たちと一人慣れているのか普通にふるまうミロク。金持ちというのはこういうものなのだろうか。
私たちは応接間に案内されると、中にはロキ・エレバートンが座っていた。
「よく来たな」
「褒美をもらいに来てやったぞ」
「偉そうだな。ま、とりあえず座ってくれ」
笑いながら座ることを進めてくる。私は座らせてもらった。
メイドが紅茶を私の前に出してくる。
「改めて……。助けていただいたこと、感謝する」
ロキが頭を下げた。
側近の人はそれをとがめるが気にした様子はなさそうに頭を上げる。
「早速だが褒美は何がいいだろう。金でもいいし、土地でもいい。俺は王の従兄という立場だから割と何でも用意できる。好きなものを言ってくれ」
「……そうだな。なら、不死鳥の羽……。俺らのギルド名だがそのバックについてくれ」
「支援をしろということか?」
「ああ。貴族様が背後にいるとやりやすくなるからな」
ミロクは隠さずにそういった。
侍従の人がこちらを睨んでいるが……。ミロクは気にせずそういうとロキは笑う。
「そうだな。金を渡すだけでは関係がそこで終わりだからな」
「公爵家の名前を貸してくれればそれでいい。悪いようには使わないと約束しよう」
「オーケーオーケー。いいよ。支援しようか」
「ロキ様! このような信用ならないものに……」
「ハイデル。この人たちは私の恩人だ。信用はできるさ。それに、素直でいいだろう? 貴族のように腹の探り合いが少なくて済む。ああ、ミロク殿。俺からも依頼はしていいんだろう?」
「もちろんですとも。貴族からの依頼も承っております」
「それならいいよ。許可しよう。このペンダントを持っていくがいい」
そういってロキがつけていた紋章がついたペンダントをミロクに手渡していた。
ミロクは受け取りしまう。侍従の人は納得いかないようにこちらを見ているが二人はすでにその条件に納得がいっているようでもある。
ミロクは最初からこれが目的だったんだろうな。貴族の後ろ盾がいるのといないのとでは活動のしやすさも違ってくるのかもしれない。
このゲームは本当にリアルだ。人間関係も現実のような感じに近いものがある。
「これからもよろしく頼むよ、ミロク殿」
「こちらこそ。ロキ様」
「ロキでいいさ」
「俺もミロクと呼んでいい」
「わかった」
「それでは俺たちはこれで」
そういってミロクが立ち上がったので私たちも立ち上がる。
「帰るそうだ。見送ってやろう」
私たちは部屋を後にし、ロキの屋敷から出た。




