オブリビオンの街からの解放
袋がパンパンになるくらい宝石を採取し、私たちは鉱山を後にした。
噴水広場のほうに向かうと、町長がたっている。町長は台に乗り演説をしているようだった。
「もうみなさん、思い出したでしょうか! 私たちは思い出したのです! あの悪魔が討伐されたのでしょう! 皆さんの大事な地元を、人間を、過去を忘れさせる悪魔は滅びたのです! 我々は忘れていた過去を思い出し、次に進む時が来ました!」
町長はとても晴れやかな笑顔だった。集まった町の人も涙を流し喜び、演説を聞き入っている。冒険者だと思い出した人も、帰らなくちゃいけない人も全員町長の話を聞いている。
これで一安心だろう。よかったよかった。
「わが街を、皆さんを救ってくれた英雄をお呼びいたしました! おあがりください!」
そういうと壇上に誰かが上がってきた。
ミロク、リュウ、キャトラ、ユウキ、ミカエルの五人だ。あの悪魔討伐したということで表彰を受けるのだろう。
私も頑張ったんだが……。まあいいさ。
「この街はこの人たちに救われたのです! ミロクさん、リュウさん、キャトラさん、ユウキくん。ミカエルさん。街を代表して私が感謝の言葉を述べましょう。本当に救っていただきありがとうございました」
「……俺はほとんどなにもしてないんですけどね。でも、よかったです」
ミロクがそう述べると集まった人たちの歓声が沸いた。
「ありがとうございました。本当に……。私たちは何もかも忘れて過ごすところでした。では皆さま、ミロクさん、キャトラさん、リュウさんの三人は今日この街を後にするということです。英雄様を笑顔で見送りましょう」
そういうとミロクたちは壇上を下りる。
そして、こちらにやってきた。ミロクは待たせたなと笑う。
「MVPはミツネなのにな。すまないな、活躍を奪って」
「気にするな。縁の下の力持ちという立場でいい。目立つのはそんな好きじゃない」
「ライドンバード召喚するでー。帰ろー! 王都に!」
「ああ」
私はライドンバードを召喚した。
ライドンバードに五人またがる。そして、私たちは見送られながらオブリビオンの街を後にするのだった。
森の中を突っ切るとユミルの街付近に出る。
「でれたぁーーーーー! もうこりごりやで閉じ込められんのは!」
「そうだな。それじゃひとまず王都に戻ろう。第二エリアが解放されたということだから明日から第二エリアにいくとしようか」
「第二エリアに泊まるんならユミルの街に泊まってもいいんじゃないかな」
「いや、ロキ・エレバートンからの褒章をもらわんとな」
そうだな。お礼がしたいといっていたし。
「あー、せやね。あっちでもそっちでも表彰されんのかなぁ」
「まぁ、貴族を救ったということは大きな借りになるだろうし、助けた相手の爵位は公爵だ。褒美には期待できるだろう」
「そうっすね」
「そういや気になるんだが結局あの宝石は何に使ったんだ? 宝石使う間もなく終わったが」
「ん? ああ、完全に倒すために必要だったんだよ。心臓を攻撃しても消えなくてな。宝石を投げたら宝石に吸い込まれて砕けて消えた」
「なるほど……」
宝石がなかったら完全攻略とはならないということか。
「序盤で死んじゃったのが悔やまれるっすねぇ! 戦いたかったぁ……」
「私も最後見たかったが……。まあいい」
あの悪魔の断末魔を聞きたかったな。




