忘れることは素晴らしきかな ②
ノームはシラトリの剣を装備している。
シラトリを倒したことでひっひっひっと不気味に笑い始めた。
「せいっ!」
と、剣を思い切り振り下ろす。
太刀筋に迷いはないが一直線。単純な剣筋なので素人だろうなとは思う。力任せに振り下ろしているだけにしか過ぎない。
だがしかし、それを何回も続けばやばいかもしれないが。
「こんの……」
「ミロク、防御するな。何度も撃ち込まれ体勢を崩すぞ!」
「わかっっったぁ!」
ミロクは一歩後ずさる。
「ふんっ!」
「あぶなっ」
ノームは乱暴に剣を振り回す。
ミロクは近づけないでいるし、キャトラは矢を放ってはいるが全部はじかれて攻撃できていないという状況だ。
私はノームに近づき、剣を刀で受け止める。
「じゃ、次は私が殺されてやろう」
「そう素直に殺されに来てくれるのは俺好きだよォ! 俺嬉しいから楽に殺してあげるねェ!」
「ま、抵抗はさせてもらうがな」
私は刀を思い切り振るう。
剣とぶつかり、力負けしたのか剣が思い切りはじかれた。私は腕を切り裂く。ノームの腕がぼとりと床に落ちた。
ぴくぴくと動いていたが次第に動かなくなる。
「君、素直じゃないねェ。素直じゃない子は嫌いだよォ」
「そうか? そりゃ悪かった」
斬られた腕は再生するらしく生えてきていた。
私はもう一度体を斬る。だがしかし、痛そうなそぶりを見せはするが倒れるそぶりはないな。ダメージが少ないということだろうか。
「こりゃ分が悪いかもねェ……。でもここは離れたくないんだよなァ。やっぱ殺すしかないかァ」
「何をぶつくさいってる?」
「そうだねェ。本気で殺しにかかろうかなァ」
そういうと、黒い靄がノームのところに集まっていく。
私は思わずその場を離れた。ノームの体がどんどん大きくなっていき天井に頭をぶつけるくらいに大きくなっている。
『さァ、俺の本気の姿を倒せるかなァ? 本気の姿は覚悟の姿。俺の弱点とかも言っちゃおうかなァ』
「弱点?」
『俺は再生能力もあるけど、この外に出してある心臓だけは再生できないんだァ。俺はこれを守り抜く。これは俺の覚悟だよォ! さァ! 始めようかァ!』
そういって私たちめがけて爪を振り下ろそうとした時だった。
バキィ!と大きな音を立て私たちがたっている床が抜けたのだった。ノームもろとも私たちは落下していく。
私たちは階段に落ちた。結構な高さを落ちたな。よく無傷で入れたものだ。
だがしかし、まずいことに私の後ろの階段からは途切れている。ノームが落ちたからだ。時計塔は割と縦に大きい。ここでもまだ下が見えないぐらいには高い。
ここは塔の真ん中あたりだろうか……。
「心臓はっ!?」
「多分上だろう。あいつだって落ちたんだ。ゆっくりでも……」
「いや、そうはいかないみたいだね」
リュウは階段の下をのぞき込んでそう言った。
私ものぞき込むと、真ん中の時計塔を支える大きな支柱をよじ登ってきていたのだった。
「チキンレースか! お前ら、急いで登るぞ!」
「わかった!」
私たちは階段を走った。




