忘れることは素晴らしきかな ①
ユウキとミカエルも呼び寄せ、ミロクは時計塔の鍵を開ける。
私たちは時計塔の内部に入ることに成功した。私は刀を引き抜けるように警戒しながら階段を上っていく。
塔というのだから縦に伸びている。時計を動かすための仕掛けが中央にあり、それに沿うように階段が伸びていた。
横に踏み外したら一気に落下して死ぬのは間違いないだろう。
「緊張するっすね……」
「ボス戦っていうことだもんねー」
私は戦闘を歩く。
特に何もないまま、最上階についた。最上階の扉に手をかけ、私は勢いよく開けると悪魔ノームだろうものが時計の外を眺めている。
「来たかァ」
「ああ、来てやったさ」
ピンク色の体をした魔物がこちらを向いた。
頭に角が生えているような人間で吹き出物みたいなのがたくさん顔にある顔をしている。猫背の男性の様な身なりだ。
「君たち神の使いも酔狂だねェ。忘れることを拒むだなんてさァ」
「きっも……」
「俺は人間のために力を使ってるんだよォ? 人は誰だって、辛い過去、醜い自分を忘れたいだろォ? 過去を思い出すから傷つくんだよォ」
「そんなわけないっ! 過去があるからこそ未来があるんだって俺は思ってる!」
ユウキが前に出て叫んだ。
過去があるから未来がある。まぁ、そうだろう。人が行く未来には人が紡いだ歴史がある。自分の未来にも自分の過去のことだって必要になる。
それを忘れるというのはばかばかしいな。
「ったく、うるさいガキだねェ。ガキは無知だから俺は嫌い、なんだよォ!」
と、ノームは何かを飛ばしてきた。
ユウキはとっさの攻撃だったためか防御することしかできず、目をつむる。私は刀を引き抜きその飛ばした弾のようなものを斬る。
「よーし、戦闘開始やな」
「ちっ、卑怯だと思わないのかねェ! 一人を大勢で殴るなんてさァ!」
といいながらもノームは魔法か何かを使っている。
「君たちも技を忘れなよォ!」
と、私に弾が当たった。
《スキル:十文字斬りが使用不可能になりました》
ちっ、
ダメージも受けている。どうやら受けるとスキルが使用できなくなるらしい。まぁ、構わないがな。
私はノームに近づき刀で斬りつける。
「いでぇっ!」
ノームはよろめいた。
そして、ぎろりと私を睨む。
「”一矢強化”」
私の横を矢がかすめた。
キャトラが放った矢はノームの顔に刺さる。ノームは刺さった矢に手を伸ばし引き抜いた。イラついたように私たちを睨む。
「どいつもこいつもうざいなァアアアアアア!」
と、ノームは体勢を整え、こちらに距離を詰めてくる。
狙ってるのはキャトラだった。意外にすばやく、すぐにキャトラは距離を詰められている。キャトラは逃げようと後ずさるがその余裕はなさそうだ。
ノームが手を振り上げる。いぼいぼの腕の手の爪は鋭い。
「キャトラ!」
ミロクが剣を引きぬき、キャトラの前に立つ。
ミロクは攻撃を防御しきれずに爪の先が体に当たっていた。
「女の子を守る騎士でも夢見てんのかなァ!? だけど無駄だよォ!」
「させないっすよぉ!」
シラトリは背後から剣を突き刺した。痛がるそぶりもなくノームはシラトリを睨む。
「うざいねェ」
「……っ!」
シラトリは急いで剣を引き抜こうとしているが抜けないようで苦戦していた。
ノームは体に刺さった剣を引き抜いた。そしてその剣をシラトリめがけて振り下ろす。シラトリはそのまま切られ塵となって消えた。
「まずは一匹ィ……。君たちも同じように、殺してあげるよォ」
油断できんな。
まだ次の章何するか決めてないんですよね。でもボスです。




