宝石眠る鉱山に隠れる貴族 ①
昨日の厄介だった黒煙の闇との出来事から一矢が立った。
ミロクはまだ不機嫌そうにしている。私たちが機嫌とる必要もないとは思うがどうもイライラしてる顔を見るのは嫌なものだ。
「おい、ミロク。イライラしてるんなら私と手合わせするか? 気がまぎれるだろ」
「……いや、いい。遠慮する。すまない」
「……ったく、イライラする気持ちはわかるがさっさと切り替えないといつか大変な目にあうぞ」
気持ちの切り替えというのも大事だ。
まぁ、切り替えられないのもわかる気はするがな。ミロクは割と優しい。だからこそなんだろうな。
「そう、だな。わかった」
「今日もレベル上げ行くんだろ?」
「いや、今日は別のことをする」
「別のこと?」
別のこととは何だろう。
ミロクがついて来いというので私は黙ってミロクの跡をついていく。オブリビオンの街の郊外には鉱山らしき山があり、トンネルが掘られていた。割とちゃんとした鉱山でそこら中に鉱脈があるのがわかる。
「お、やっときたなぁ」
「採掘するのか?」
「そういうことだ。ここは鉄鉱石が豊富にとれる。運が良ければ金の鉱脈があるという。素材をたくさん集めようってことだ。鍛冶屋にもってって自分らの武器のためにも鉄鉱石は必須だからな」
「なるほど。わかった」
「それに、神父が言うにはこの鉱山にある鉱脈の中にアウイナイトとガーネットの宝石があるという。それがノーム攻略に必要だといっていた」
なるほど。
「ガーネットとは聞いたことがあるがアウイナイトとはなんだ?」
「宝石だな。言葉は過去との決別だったか」
「宝石にも花のように言葉があるのか?」
「ああ、あるぞ」
そうなのか。勉強になる。
私はそのガーネット、アウイナイトを探せばいいのだろう? ミロクがつるはしを私に手渡してきたので近くの鉱脈に振り下ろしてみる。
すると。
《鉄鉱石を採掘しました》
という幻聴が聞こえ、袋の中には鉄鉱石が入っている。
なるほどな。じゃ、また……。そう思って鉱脈を見るとすでになくなっていた。どうやら一度しか掘れないようだ。
「こう、専門の職業ならもっと効率よく掘れるらしいが、まぁ、地道にやってくしかないだろう」
「そうだな」
「鉱脈は時間経過で復活するらしいから今日掘れなくても明日がある」
「わかった。気ままにやるとしよう」
私は鉱脈を見つけつるはしを振り下ろした。
数時間もたっているが未だにガーネット、アウイナイトという宝石は出てこない。
トンネルの奥深くまで掘り進めたが鉄鉱石が多かった。そして、なんとつるはしが壊れてしまったというのもあり、私は続行不可能となった。
「っと、なにかいるな」
私は刀を引き抜く準備をした。
奥のほうから足音が聞こえてくる。人の足音だろう。私たちは奥のほうをじっと眺めていた。警戒しつつ近づくのを待つ。
「何やら騒がしいと思ったら誰だ……?」
「……何者だ」
私は刀を引き抜く。
「俺か……? 俺はこの鉱山のうわさを聞き付けた地質学者だ」
男はそう語る。
ミロクは男を審議するかのように目を細めていた。
「嘘つくな。お前のようは気品がある地質学者がいるか。仕草とか隠し切れていないぞ」
「へぇ。もしかして君も貴族なのかな」
「いや、違う。が、そのようなものだと思えばいい。君もということはお前は貴族なのか?」
「そ。今は訳あってここにいるけど公爵家の長男さ」
男はナイフを地面に捨て手を上げた。




