時計塔技工士シュバルツの記憶 ③
キャトラが見つけた階段を下りていくと一本道に繋がっていた。
「はや!? 四階やろここ。もうボスなんか?」
「そのようだな。気を引き締めいくとしよう」
私たちは長い一本道を歩く。
そして、町長の記憶と同じような鉄扉……。ただし今回は青銅のような色ではなく、赤い真っ赤な鉄の扉。
たぶん、ミノタウロスとは比べ物にならないくらい強い魔物なのだろう。私は扉を開き中に入る。
キャトラも弓を構えながら中に入り、戦う準備はすでにできていた。
そして、部屋が明るく照らされる。
「なんだ、こいつは……」
目の前にいる魔物は人間の体に牛の頭が三つ、ケルベロスのようについており、腕が六本もある。その六本の手には棍棒がたくさん握られていて強そうな見た目をしているミノタウロスだった。
鑑定してみるとアシュラタウロスという名前らしい。
「見た目超きっしょ! 早く終わらすで!」
キャトラは嫌なようだ。
私は刀を引き抜きそのまま地面を蹴り飛び上がる。そしてそのまま刀を思い切り振り下ろした。刀は胴体にあたり胴体の中心に縦に傷がついた。
「ブモォオオオオオオ!」
空中に飛んでいる私めがけて棍棒が飛んでくる。片方は刀で防げるが背後からくる攻撃は防げん。が、そこはキャトラが……。
私は片方の鉄棍棒を刀で受けとめ、弾き飛ばされる。壁に当たりダメージを受けた。
だがしかし、片方の腕にはきちんと矢が刺さっている。
「無茶するなやミツネ! 死んだらおしまいやで!」
「ああ。ちゃんとキャトラが弓矢で援護してくれると思ったからいったまでだ」
「ったくもう……。ハラハラさせんなや」
キャトラはやれやれといった感じで矢を放っている。
私は起き上がりアシュラタウロスへ向かっていった。私はキャトラを足蹴にし、先ほどより高く飛び上がる。
「うちを踏み台にして……。また援護せえっちゅうんやろ!?」
「よくわかってるな。頼むぞ」
「もーやったるわ! 好き勝手やりよんなあもうほんまに!」
私はミノタウロスの顔付近まで飛び上がる。
そして、目玉に刀を突き刺した。ミノタウロスは目玉を押さえようとこん棒を自分の顔めがけて振り下ろそうとしてきたんで刀を引っこ抜き重力に身を任せ落ちていく。ミノタウロスの棍棒は自分の顔に当たってダメージを受けていた。
「アハハっ! ばっかでー! 自分でダメージ受け取るやん!」
「知能は低そうだな。このまま押し切るぞ」
「任せとき!」
そういってキャトラはアシュラタウロスの一つの顔の目玉めがけて矢を放つ。すごい勢いで飛んでいった矢は目玉に突き刺さり、アシュラタウロスは目を押さえ暴れていた。
どしんどしんと地面が揺れるほど暴れていてうかつに近づけなくなってしまった。
数分後、暴れ終わったかと思うと落とした棍棒を拾い上げ血の涙を流しながらこちらをにらみつける。
「ブモォオオオオ!!!」
アシュラタウロスはこちらに勢いよく突進してきた。
突進を防御して攻撃しようと思っていたが予想外なことに棍棒を無我夢中にぶんぶんと振り回している。
あれじゃガードができないから避けるしかないか。
と、私とキャトラは横に逸れたが。
「きゃっ!」
「ミカエルっ!」
こちらに向かってくるアシュラタウロスをよけようとした途端にミカエルが躓いてしまった。ユウキは少し悩んだ顔をした後ミカエルの前に立ちふさがる。
あれじゃ共倒れになる。アシュラタウロスをユウキだけで止められるとは思えん。
「仕方ない。私が盾になってやる」
私はアシュラタウロスめがけて走る。
振り回される棍棒をうまく刀でいなしつつ距離を詰める。どうにかして止めないといけん。近づいたはいいが防ぐだけで精いっぱいかもしれん。
ま、ここは死ぬ覚悟も必要か。
「ふん!」
私は棍棒の攻撃を防ぐのをやめ、そのまま足を横なぎに切り付けた。
アシュラタウロスはその場で転ぼうと前のめりになる。その瞬間、棍棒が私の背中に当たりそのまま吹っ飛ばされたのだった。




