◇時計塔管理人の諦観 ①
俺たちは時計塔の管理人に話を聞くことになった。
時計塔の管理人を訪ね、鍵のことを聞いてみるが案の定忘れてるらしい。時計塔にはしばらく入っておらず、時計塔の鍵のありかも何もかも忘れてしまったという。
俺はベルを取り出し鳴らしてみた。
管理人はベルの音を聞いた瞬間に前に倒れこむ。シラトリとリュウが支え、床に寝かせた。寝かされた管理人の上に黒い靄が集まる。
神父の話によればこの中に入って魔物を討伐するという。ダンジョンになっているから気をつけろということだ。
「それじゃ、いくか」
「うん」
「うっす」
俺らは靄の中に飛び込む。
そして、目の前の光景が鮮明に映った。ここはどこなのだろう。建物の中じゃないようだ。森の中……?
森のダンジョンか。
「すごいっすね。でかい木ばかりっす」
「道はあるといえどこの様子は手入れが忘れられてる感じがするな」
「ちょっと怖いね」
不気味だ。
だがしかし、足を止めるわけにはいかないだろう。俺は剣を抜けるように警戒をしつつも進んでいく。
ダンジョンのどこかには必ず下に行く階段があり、その階段を降りると次の階へいくという。
魔物も出るらしいから気を引き締めなくてはな。
すると、俺たちの頭上から何かが襲い掛かってきた。
「ふん!」
「っと」
シラトリとリュウが武器を引きぬき自衛している。
鳥の魔物のようだ。だがしかし、体は影のように真っ黒に染まっており鳥の甲高い鳴き声が聞こえる。
リュウとシラトリは鳥を切りつけた。
「まるで影のような敵っすね! 一撃じゃ殺せなさそうっす!」
「レベル差が結構あるね。三人で来てよかった」
「……気合い入れろよ。油断したらすぐ死ぬからな」
「うっす!」
「オーケー!」
俺らは魔物と戦う。
俺とリュウ、シラトリはレベルが低い。そもそも戦いにそれほど参加しないというのもある。シラトリはソロだったし高いかと思っていたがレベル上げが面倒でやっていないということだ。肝心な時に。
交戦して数分後、やっと倒し終わり足を進める。
俺らが歩いていると頭に声が聞こえてくる。
《みーんな、何もかも忘れとる》
《このまま忘れ行く一方なのだろうか。寂しいが仕方のないことやもしれん》
《忘れることはもう、仕方ない》
あの管理人の声だった。
これは管理人の記憶というよりかは感情なのだろう。忘れることに対しての諦めの感情のようだった。抵抗できないことだからこそ諦める。
忘れるのは仕方ない。本当にそうなのだろうか。忘れないことだってできるはずなのだ。
「……この街にはきっと忘れることに対して思う人もいるんすね。この人はもうあきらめてるっす。自分の力が及ばないからこそなんすかね」
「そうだと思うよ。でも、その考えって寂しいなぁ」
「寂しいと思うなら早いところ攻略して思い出させてやろう。思い出すだろうからな」
諦めない。
忘れることを仕方ないことだと割り切らない。俺はそう教わっている。
「階段があったっすよ! 持っててよかったマッピングスキル!」
「よし、じゃ、下に降りるぞ」
俺らは階段を下る。




