町長の記憶の世界 ②
かなり奥深くまで潜ってきたような感じがする
私は階段を下りて行った。すると、そこは今までのような街のどこかというわけじゃなく、廊下みたいな長い通路だった。
石造りの無機質な壁が続いている。私は奥へと進んでみるとデカい鉄扉があった。
鉄扉は簡単に開き、私は中に足を踏み入れる。
完全に中に入った時、鉄扉が勝手にしまった。
「なるほど、これは期待できそうなやつが出てきそうだな」
その時だった。
部屋が明るく照らされる。私の目の前にいたのは私よりはるかにでかい牛男。こういうのをミノタウロスというのではなかっただろうか……。
ミノタウロスの右手にはでかい鉄のとげが付いたこん棒が握られており、あれにあたってしまえばひとたまりもない。
私は刀を引き抜き、構える。
「ブモォオオオオオオ!」
ミノタウロスの雄叫びが部屋に響く。
ミノタウロスはその巨体に見合わぬ速さで近づいてくるとこん棒を振り下ろしてきた。私は避ける。
こん棒は地面を砕く。
「気が抜けんな」
私は脛のあたりを切りつける。
ミノタウロスはブモオオと叫ぶ。ダメージを与えられているようで少し体力が減っていた。こう、バトルの時に敵の頭上に表示される体力バーというのは便利だな。
「ぶも、ブモオオオオ!」
ミノタウロスは口から液体を吐き出した。
唾を飛ばしてくるとは! 野蛮な牛だな。私は地面を強く蹴り唾を斬る。そしてそのまま口めがけて飛んでいった。
ミノタウロスは食ってやろうとしているのか大きな口を開ける。私はその口の中に入り、刀で舌を切り取った。
「おっと」
ミノタウロスは痛さのせいか思い切り暴れ、私をぺっと吐き出した。
私は地面に着地し再び次の攻撃を仕掛ける。こういうのは隙を与えるのはだめなのだ。砕いた床の破片を私はミノタウロスめがけて投げつけた。
その破片はぎろりとにらんでいるミノタウロスの目に当たる。ミノタウロスは目を押さえた。
「はああああ!」
私は大きく横なぎに切り払う。そして、そのまま縦にたたっきる! 十文字斬りとでもいうべきだろうか。
《スキル:十文字斬り を取得しました》
取得できた。
「ぶも、ぶも」
「これで終わりだ暴れ牛よ。私の敵としてでてきたこと感謝する」
私はそのままミノタウロスを切りつけた。
ミノタウロスの体力はすべて削れ、そのまま倒れこむ。土ぼこりが消えると、ミノタウロスはどんどん塵と化していったのだった。
ドロップのものを落としたので拾ってみる。ミノタウロスの棍棒とミノタウロスの鼻輪というものを落としたのだった。
「さて、これで記憶は戻るはず……」
その時だった。
突然地震が起きる。ぐらぐらと立ってられないほど揺れが強く、天井やら壁が崩れ始めていた。
私の目の前に魔法陣が出現する。どうやらこれで帰れということだ。私は魔法陣の上に乗っかると私の見ている光景が一瞬にして変わる。私の目の前には町長の部屋の光景が写っていた。
「元の世界に戻ったようだな」
私はそう笑う。
町長の頭にある黒い靄が霧散し消えていく。町長は目を覚ましたようだった。
「あれ、私は何を……」
「早いお目覚めだな。思い出したか?」
「思い出し……? あっ……」
町長はソファから勢いよく立ち上がった。
「こうしてる場合ではございません! みんなの記憶を……って私、なんでこんな大事な決意を忘れていたんでしょう? 私は忘れるべきじゃなかったのにっ……!」
「もういい。悔しさをかみしめるのは後にしてくれ。それより聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
町長は私のほうに目を向ける。
「時計塔に入るための鍵を持っていないか? あの時計塔に元凶がいる」
「時計塔の鍵……。ああ、ありますよ」
「本当か?」
「本当のものじゃないんですけどね。本当のものは時計塔技工士のシュバルツが持ってるんです。私のは要するにマスターキーですね」
「だよな。まあ入れたらいい。貸してくれないか?」
「それはさすがに無理ですね。マスターキーは時計塔だけの鍵じゃないんです。この街のすべての鍵をあけることができる鍵なのです。そう簡単に渡せません」
そうか。そうだろうな。
簡単にホイホイとかせるわけがないか。
「わかった。では、時計塔の鍵だけを探すことにしよう。本当のものは……」
「シュバルツが持っております。私の記憶が正しければですがね。シュバルツの工房の地図をお書きしましょう」
次はシュバルツという技工士か。
また、ダンジョン攻略だろうな。




