時計塔に奴はいる。
結局私はミロクたちを見つけることができず一足早く時計塔の下に突っ立っていた。
不甲斐ない。聞きこんでは見たのだが誰も知らないと答えるばかりで手掛かりもなかった。この街にきっといるはずなのだ。
私が突っ立っていると通りのほうからキャトラがやってくる。
「ミツネは見つけたか? うちは見つけられんかったわ」
「私もだ。ミロクたちは来てるのは確実だろうが……まだ全域見れたわけじゃないからな。明日も探そう」
そういえばシラトリは?
約束の時間なのだがシラトリの姿が見えない。私はきょろきょろと探しているとシラトリが陽気な足取りでこちらに近寄ってくる。近くにはミロクとリュウがいた。
「見つけてきたっすよー」
「迷惑かけたな」
「ここまで来させちゃってごめんね」
ミロクたちがいた。
シラトリ……。見つけてくるとは思っていなかった。シラトリって私たちが軽く扱ってはいるが意外と有能な奴だったりするのだろうか。
「さっすがやなぁシラトリ! お礼ならうちがしたるで。ギルド入るんやったらうちがミロクを説得してやっても……」
「あ、俺はいることになったっす」
シラトリがそういうので私とキャトラはミロクのほうを見ると「本当だ」と肯定する。シラトリはギルドに入れる許可をもらったようだ。
こいつ……。軽そうな見た目しているがミロクが認めるほどの働きをしている……。すごいな。素直に脱帽する。
「それよりお二人とも、俺たちは倒すべき敵ができたっすよ」
シラトリはそういってきた。
倒すべき敵?
「この街はある悪魔に支配されているようだ。神父から聞いた話ではノームという悪魔が迷い込んだものの記憶を消去させこの街から出さないようにしてるという」
「なるほど。じゃ、うちらはノームを探せばええんやな」
ノームという悪魔を探し倒すこと。それが私たちの使命。
だがしかし、一から探すというのもなんだか厳しい。この街の人に化けているとしても一から人を当たっていくのは時間がかかる。
ノームの特徴さえ分かればいいのだが……。
「ノームの居場所はすでに分かっているから探す必要はないぞ」
「そうなのか?」
「ああ。ノームはこの時計塔の中にいる」
ミロクは時計塔に近づき壁をたたいた。
「この時計塔の鐘の音にノームの魔力が込められているそうだ。その鐘の音を聞くと記憶が徐々に失われる……という」
「なるほど。今からやるんか?」
「いや、時計塔にはまだ入れん」
「場所もわかっていて入れないだと?」
「鍵がかかってるそうなんだ」
鍵、か。
壊していくことは……できないのだろうな。
「じゃあ鍵を持ってるやつのところに行けばいい」
「それがそうもいかんらしい。その鍵をもつ人がこのリストの中の一人だということ、そして鍵を持つ人は鍵をどこに置いたか忘れている可能性が高いという」
ミロクは紙を取り出してきた。
紙には八人の男女の絵と名前が書かれている。この中の誰か一人が鍵を持っているがどこにあるか覚えていないだろうという。
思い出させることはできないのだろうか。
「そりゃ厳しいなぁ。うちらでこの八人の家を探すか?」
「それも無理だ。必ず家にあるわけじゃないらしい。自分の職場においているか、家に置いているかとかその人によってどこにしまうかが変わる」
「ならどうするんだ? 行き詰まりではないか」
「だから思い出させる」
ミロクが懐からベルを取り出した。
「これは思い出のベルといってな。忘れたやつの近くで音を聞かせると別空間が生まれる。その別空間をなくすと記憶がよみがえるという」
「な、なるほど?」
「だがしかし、その別空間には魔物がいるんだってさ。だから、二人の力が必要だよ」
「なるほど。戦闘か。ならうちらやな」
戦うのか。面白い……。
「で、時間をかけずにやりたい。だから、ミツネ、キャトラ。二人に分かれてくれ」
「……まじか。うち遠距離しか攻撃できんで?」
「俺はキャトラならできると信じている。俺らも三人で一つ攻略するつもりだ」
「重い期待やなぁ……。絶対に攻略できるとは限らへんで?」
「俺はこんなことができないようなやつを誘ったつもりはない」
私とキャトラはあくまで一人で。すごく重い。
キャトラもこれ以上言っても無駄だと理解したのか受け入れていた。ミロクはきっと私たちならできると信じているのだろう。ミロクは無駄な期待はしなければ心配もしない。確信を持っていう男だ。間違いはないのだろう。
「ならうちはこの副町長んとこにしたるわ。一人でやるんやから選ぶ権利はくれやー」
「じゃ、私は町長にしよう。こういうのは偉いやつが持ってると相場が決まっている」
「わかった。じゃ、二人に思い出のベルを渡すよ」
私はミロクから思い出のベルを受け取った。




