忘れられた街
シラトリが地図を広げる。
「そろそろユミルの街につくんすけどそんな都市伝説の街なんてものは見当たらないっすねぇ」
ライドンバードを走らせ一時間。
ユミルの街付近を私たちはうろうろしていた。右へ左へと適当にぶらついているがそのような街のことはわからずじまいだった。
私たちはとりあえずユミルの街に入る。情報を集めよう。
「すんません、ここらで地図に載ってない街というのはないっすか?」
街の人に聞いてみるも頭にはてなマークを浮かべている。
「ごめんねぇ。そんな話は聞いたことないの」
「そうっすか。ありがとっす」
「でも私は知らなくても街一番の物知りさんなら知ってるかもしれないわ」
「……その人のところに案内してもらえるっすか?」
「こっからあの八百屋さんを曲がって突き当りに変な形をした家があるからそこにいるわ。名前はタイラントっていうから」
「ありがとっす!」
そういうことで私たちは八百屋を曲がり歩いていくと、三角フラスコのような形をした家があった。
変な形というのはこれのことなのだろう。それ以外に変な形の家は見当たらない。私は家のドアをノックする。
「失礼する」
私は扉を開けた。
扉を開けると髪の毛がちょっと寂しい白いひげを口元に生やしたおじいさんが本を閉じてこちらを見てくる。
「なんじゃ?」
「ちょっと聞きたいことがある。あがってもいいだろうか」
「うむ。今茶を淹れるでの」
私たちはおじいさんが座っていたところにある椅子に座るとおじいさんがお茶を出してきた。
三人分。紅茶のようで私は一口すすると香りが鼻を突き抜ける感じに強い。美味い。
「聞きたいこととはなんじゃ?」
「あー、ここらで行方不明事件が昔から起きているそうっすね?」
「ああ。それがなんじゃ? まさかわしが犯人だとでも?」
「ちゃうちゃう。てか犯人て。これは都市伝説が関係してるんちゃうの?」
「都市伝説? ああ、忘れられた街のことか」
忘れられた街?
「忘れられた街とは?」
「知らんのか。この国に伝わる都市伝説のような噂なんじゃがの、昔、オブリビオンという街があったそうじゃ。じゃが、ある日突然こっきりと姿を消した。誰もがオブリビオンという街の名前を覚えておらず地図からも消えたんじゃ」
「なるほど。ですがオブリビオンの街の都市伝説が伝わっているってことは忘れられてないのでは?」
「いや、違うんじゃよ。ある日、王国のある人のところにオブリビオンという街から来たという若者がきた。お前らが忘れた街だといってな。それが広まって忘れられた街が広まったんじゃよ」
なるほど。
出られないといううわさは聞いていたが違う。どうにかしてでることができるのだろう。忘れられた街オブリビオン……。
「おじいさんは行き方知ってるっすか? 俺らオブリビオンにいきたいんすよ」
「知らん。じゃが……その若者は森から来たという。行方不明も確かに森の中でおきとるから……。なにか関係があるかもしれんな」
「情報感謝する。では、私たちはこれで」
「……ちょっとまて」
私たちは椅子から立ち上がるとおじいさんが引き留める。
「わしもつれてってくれ。オブリビオンという街にもしかしたら娘がおるかもしれない」
「娘?」
「数年前に行方不明になったんじゃ。森に薬草を摘みにいった途端帰ってこんくなった娘。もしオブリビオンにいるのだとしたら迎えにいきたい」
「……キャトラ、どうする?」
「連れてくしかないやろ。ここでダメって言えるほどうち厳しくないで」
「おじいさん。森には魔物が出るっすよ? 必ずしも俺らが守れるとは言えないっす。それでもいいっすか?」
「ああ。それも承知の上じゃ」
おじいさんは立ち上がりリュックにものを詰めていた。
そして準備ができたといっていくぞとはりきっている。忘れられた街オブリビオン。どんな場所なのだろうか。




