二人が帰ってこない
奉仕作業を終えたのは午後だった。
本当はもうやめてもいいと昼頃に言われたのだが、まだ草が余っていたために気になるからと言って全部むしった。
私たちは拠点に戻ってきた。
「ミロクー、帰ったで」
と、キャトラと一緒に戻ってくるが誰もいる様子はない。
フレンドのほうを見るとまだログインしているようだ。クエストでも忙しいのだろう。どれだけ遠くに行ったのか、どんな大変なクエストを受けたのだろうか。もう帰ってきててもいいはずなのにな。
「いないみたいやね」
「そうだな。じゃ、ログアウトするとだけ伝えて……うむ?」
送れない。
フレンドメッセージというものが遅れると聞いているが送信不可とでている。圏外にいるのだろうか。
こういうこともあるのだな……。携帯と同じことが起きるとは。どんな山奥にいるのだ。
「どしたん?」
「圏外にいるみたいだ」
「まっさかぁ! 携帯じゃあるまいし……。あれ、送信不可となっとるわ」
「な? 圏外だろう?」
「普通圏外なんてもんはないはずなんやが……。なんかに巻き込まれたんかな」
巻き込まれた?
「きっと連絡が取れないような場所に迷い込んだんやな」
「……なるほど?」
「なんかそういう場所知っとるやつおらんかなぁ。シラトリあたりは知っとるかな」
「聞いてみよう」
私はフレンドメッセージでシラトリに今すぐギルドに来るよう伝えておいた。
シラトリはラフな格好でなんの用っすかと尋ねてくる。私は連絡が取れないミロクたちのことを伝えてみた。
シラトリは顎に手を当てて考えるしぐさを取る。
「うーん、ミロクさんたちもあそこに行ったんすかねぇ」
「あそこ?」
「サービス開始直後、話題になった場所があるんすよ。地図にも乗ってない街……。数名のプレイヤーが発見したらしいんす。都市伝説なんすけどね。一部のプレイヤーが見つけようと躍起になって探してる都市なんすけど」
都市伝説の街、か。
「こっからちょっと遠い場所にあるんすけどこの王都エリアの中にあるらしいんすよ。俺もよく知らないんすけどね。この王都でもちょっとそういう話を聞くっす。ユミルの街に行く道中の商人が乗った馬車が姿を消した、ユミルの街の冒険者が行方不明になったっつー話があるっす」
ユミルの街……。
「ちょうどその見つけたプレイヤーたちもユミルの街近くで素材集めをしていたらしいっす。そのプレイヤー曰く道順がわからずなんでかたどり着いてしまった、今もその街にいて出ることができないと言われてるっすね」
なるほど。出ることができない。
きっとミロクたちもそこなのだろう。
「そこは掲示板には書き込めるけどフレンドメッセージが送れないという謎現象があるみたいなんすよね。多分いるとしたらそこだと思うっす」
「そうか。ありがとう」
「いえっ、お役に立てたのなら光栄っす!」
その街にいってみるしかないだろうな。
その街から出るには条件があるかもしれない。
「行ってみるしかあらへんなぁ」
「そうだな。明日の朝向かおう」
「せやね」
キャトラも行くつもり満々のようだ。
「あ、あの、俺もついてっていいっすか? 俺もその街にいってみたいんす」
「ああ、シラトリは情報を手に入れるのが得意なようだから道中話とか聞けるだろう」
「うっす! 頼りにしてくれて光栄っす!」
その街に明日行ってみるか。
どういう街なのだろう。
災難な日はとことん災難に会うミロクさん




