シラトリとなりて
私は刀を握り男に向かう。男も剣を抜きやる気満々のようだった。
「降参するのは今が最後だ。私は誰相手だろうと真剣で挑む」
「俺、こう見えても強いんで。お前を倒して俺もギルドに入ってやらぁああああ!」
男は剣を握り締め向かってくる。
私は剣を受け止めた。男は剣を戻し、剣先で突きを放ってくる。私は下から刀を思い切り振り上げ剣をはじいた。だがしかし男はそのまま私の腕をつかむ。刀を振らせないようにつかまれた。
私は刀を右手から離し左手でキャッチし首元に突き付ける。
「勝負ありだ」
「まだ、だ!」
男は私の腕から手を放し手で刀をつかんだ。
私は思い切り引っ張る。男の手から刀が抜け、男は剣を薙ぎ払おうと振りかぶる。私は刀で剣を防御し、弾き飛ばした。
「なかなかやるなお前。私相手にここまで粘るとはさすがだぞ」
「これでも俺現実で剣道やってんすよ!」
「なるほど、初心者ではないからなのか!」
剣に迷いがない。
太刀筋もきれいだ。これは初心者ではまずありえない。だがしかし、剣道だけならばの話だ。私は剣道だけではない。剣術だってやっている。
型にはまっている剣道より実践式の剣術のほうがゲームにおいては使いやすいのだ。
「剣道やっていても越えられない壁というものはある」
私は喉元に刀を突きつけた。
「……参ったっす」
「そうか」
私は刀をしまう。
「自信あったんすけどねぇ。お前さんももしかして剣道やってるクチっすか?」
「剣道だけじゃなく剣術や居合も心得ている。剣道だけじゃ私には勝てんさ」
「そう、すね。井の中の蛙だったっす。俺は出直します。あんたとは現実でも剣道をやりたいもんすね。俺、これでも大会で優勝するくらいには強いんすよ? 剣道。俺より強いってのは有名になっていてもおかしくはないんすけど俺はお前さんの顔を見たことはねえっす」
「そうか。まぁ、ここ最近は大会に出ていないからな。出入り禁止を食らった。強すぎて」
一昨年までは出ていたのだ。公式戦に。
だがしかし、負けることはなかったのでもう出ないでくれと頼まれたのが私だ。これは大会史上初のことらしい。
私の優勝で決まりになってしまうからしばらくは公式戦を控えるようにと連盟のほうから言われたのでもう最近はでていない。
「強すぎて? なんかそういう選手は聞いたことあるような……。まさか……」
「ああ、たぶんそのまさかだ」
「……サインもらっていいっすか! 俺百戦無敗の宗形さんのファンなんすよ!」
「変わり身が速いぞ」
男は私の手を握ってくる。
「あ、俺シラトリっていいます! 26歳彼女はいません! フレンドになってください!」
「フレンドならまあいいだろう。ま、うちのリーダーには迷惑をかけるなよ。気難しいやつだからな」
「はいっす!」
シラトリとフレンド交換をし、シラトリはまたといって走り去る。
「嵐のようなやつやったね……」
「そうだな。だがしかし、あいつも百戦無敗の宗形のファンか。人気あるな、ミツネも」
「そうみたいだな。剣道やってるやつからすると私は憧れなのかもしれないな」
誰だって負けることがないようにしたいのだろう。私は負けないことで有名となっており、百戦無敗というのに憧れるのかもしれないな。
「でもあいつも十分に強かったが入れなくてええんか? 戦力にはなるで?」
「いや、いい。下手に入れてしまうとな、うるさいやつらがいる。女どもなんだがな」
「ああ、めっちゃ囲まれとるもんなぁ。あれはうちでもうざいと思うわ」
なるほどな。前例を作ると私もとか言い出す奴らがいるということか。
面倒だな。




