夜に駆ける奇襲
喫茶店に入り私はコーヒーを注文する。
目の前の女の子は私が最初に着ていた装備のようだ。先ほどのことが怖かったのか若干縮こまっている。
「……怖かっただろう?」
「はい……。げ、ゲームであんな人たちに絡まれるのは怖かったです……」
「だろうな」
こういうリアルのゲームでも悪いことがある。
剣だってリアルみたいなものだ。もちろん斬られるということに恐怖はあるだろう。見たものを恐れるのは私も同じだ。
「どうして絡まれていたんだ?」
「わ、私はあの人たちのギルドに入ってたんですけど……その、いろいろとこき使われて抜け出したいっていう話をしてたんです。ギルド長には許可をもらったんですけど周りが許してくれなくて……」
「なるほどな。雑用が減ったらどうすればいいと」
身勝手なやつらだ。
それも人間というものなんだから仕方ないとは思うけれど。人間は身勝手でわがまま極まりない。それもまた受け入れるしかない事実。
「その所は抜け出して正解だな。ゲームなんだから自分のやりたいことをやるべきだ」
「はい、ありがとうございます……」
そう言いながらも彼女の顔はまだこわばっている。
笑わせるのとかは得意じゃない。放っておいてもいいとは思うが見てしまった以上、助けてしまった以上できる限りのことはやりたい。
お人よしだな私も。
「とりあえず今日はログアウトしたほうがいい。気分を落ち着かせてやりたくなったらまたゲームをやる。そういう風にしておけ」
「わかり、ました」
「私から言えるのはそれだけだ。今回のことはめったにないだろうから自分の運が悪かったと思うんだな」
私は届いたコーヒーを一気に飲み干す。
「じゃ、じゃあ今日はログアウトしたいと思います。そ、その最後にフレンドにだけなってもらっても!」
「ああ、いいぞ」
「わ、私はアイリっていいます! よろしくお願いします!」
「私はミツネだ」
アイリからフレンド申請が届く。私は承認するとアイリは店を出て宿に向かうと言っていた。
私はまだ時間があるので魔物でも狩ってレベルを上げようと思っていると。私の背後に人がたつ気配を感じる。
私は立ち止まった。
「あいつだよ! あいつにやられたんだ!」
「ほう? そんなに強えのか……」
「三人でやりゃ問題はないだろ? いくら強いと言えど、な?」
三人か。
私は刀に手をかける。男が私の真後ろに立った。私は刀を引き抜き一閃。男にダメージが入る。
「なっ……!」
「気配を殺すのが甘いな」
私はそのまま一人の男を切り捨てる。
弓矢を構えている男めがけて走ると男はぱにくり矢を乱射する。私は矢を刀ではじきながら距離を詰めた。
すぐ真正面にたつと男は逃げ出そうとするので服をつかみ、引っ張る。
「敵に背を向けて逃げるのは得策じゃないぞ」
「ひいいいいいい!?」
私はそのまま刀で二回切り付ける。
この刀攻撃力が割と高いので二回で相手は殺せるみたいだ。
「う、うらあああああ!」
「またあんたか」
先ほどアンリに絡んでいた男が襲い掛かってくる。
二回も私に太刀を見せるのは悪手。すでに私はコイツの剣を理解していると言っても過言じゃないだろう。素人が振り回す剣というのは単調になりがちなのだ。
私は背後に回り込み、そのまま剣で背中を切りつけた。
男は倒れ、塵となって消えていく。私は妖しく月明かりで光る刀を鞘にしまう。
「さて、レベル上げといこう」




