ミケの部屋に案内された
私はスポーツを一通り楽しんだので外に出る。
ミケは思い切り背を伸ばした。
「せや、今からうちの家にこんか? せっかく友達になれたんやしお泊り会しようや。女子だけの」
「ま、まあいいが」
「なら早速うちの家に案内したる! あ、これ連絡先な。登録しておいてやー」
「僕はこの辺でお暇するよ」
「ああ、またなー」
リュウと別れ私はミケに案内されてミケの家に向かうことになった。
ミケはマンション住まいのようで高層マンションの中に入っていく。カードキーで自動ドアを開けると、エレベーターに乗り込む。
ミケも案外金持ってるんだな……。なんて思っていると。
「このマンションの部屋、弥勒が買ってくれたんよ。うちは前はボロアパートやったんや」
「そうなのか?」
「給料はいらんからマンションを一室寄越せと冗談半分で言ったらマンションごときでええんかっていう顔しとったわ! 金持ち怖えわぁ」
「たしかに。ここの家賃を考えるだけでも気が遠くなりそうだ」
金払い良すぎないか?
「さ、この階や。さ、いらっしゃい」
そういって701号室のカギを開けて私は中に入る。
中は割と整えられており、壁には弓がかかっており、トロフィーや賞状なども飾られている。オリンピックのメダルも飾られているのが見えた。
「すごいな」
「せやろ? 景色とか」
「いや、このトロフィーとかの数。オリンピックには剣道なんてものはないしオリンピックのメダルも羨ましい」
「そっちかい。まあ、剣道は日本だけやししゃあないやん」
そうなのだが。
「さて、じゃ、ゲームしよか! 持ってきてはないやろ?」
「あ、いや、持ってきてはいる」
「なんでや!?」
「暇な時があったらやろうかと思って……だな。その、今まで触れたことがなかったからすぐやれるように、と」
「……ゲーム禁止された家を出たばかりの子供みたいやなぁ」
「しょうがないだろう。ガキの頃は貧乏だったし剣道をやるうえでゲームはいらんと切り捨てていたのだから」
特にヘッドギアなんて言う高級なものは買えなかった。型落ち品は買えたかもしれないがすぐに壊れるのが関の山。
私はヘッドギアをかぶる。
「……腹が減った」
「……言われて見りゃあ。もう夜やもんなぁ。ゲームは後回しにして料理作ったる」
「料理できるのか?」
「一人暮らしなんやから自炊は当然や。まさか、できひんのか?」
「恥ずかしながら」
米もパックのお米だ。米を研いでみたいとは思うが剣道の籠手をはめると臭くなるのでできないと断念し米すら炊いたことがない。
おかずも総菜だけだし自分で作ることはないな。
「結婚とかしたらどうするんや。夫は手作り料理にあこがれるもんやで?」
「結婚はするつもりはない。一人のほうが気楽だ」
「枯れとるなぁ。まぁ、ひとりのほうが気楽なのは同意やけど」
ミケは話しながらもフライパンを取り出しバターを引いていた。
バターが溶ける音が聞こえ、バターの匂いが部屋に広がる。そして鮭の切り身をフライパンに乗せ焼き始めた。
「料理できて損することはないで。時間があったら練習してみいや」
「善処する」
「それ、結局はやらないやつやろ」
ミケはそう言って笑った。




