暗殺者の少女
私は王都を歩いていた。
地図を途中で購入し、王都の地図を見てみる。三つの区画に分かれているようだ。平民街、スラム街、貴族街。
私たちが今いるのは平民街で、貴族街はここをまっすぐいった突き当りにあるっぽい。貴族というのはあの貴族なのだろうか。近寄らないでおいたほうがいいな。
「ミロクからお小遣いももらったし武器でも見てみるか」
私はその足で武器屋へと向かっていると。
突然小さい少女が私の足にぶつかってきた。少女はいててと頭をさすりながらしりもちをついている。
「大丈夫か?」
「う、うん」
少女は私の手を取ろうとして……。
私はひっこめた。なんだか嫌な予感がした。私が手を引っ込めたことにより少女はぽかんとしていたが、ふっと笑う。
「よく気付いたね」
そういって少女は指の隙間から針を取り出した。
何者だ。私は刀に手をかける。少女は針を捨てた。
「いいね。君は強そうだ。来なよ。ボスのところまで案内してあげる」
「ボス?」
私は刀に手をかけたまま少女についていく。
少女は年齢は7歳くらいだろうか。華奢な体つきをしている。服もみすぼらしくお世辞にも裕福だという見た目はしていない。
連れてこられているのも、案の定というべきかぼろぼろの裏路地だった。裏路地を歩いていく。
「どこへ連れて行く気だ」
「スラム街だよ。お姉さんならいつでもきていいからね」
「やれやれ。私が国に仕えてるとかは思わんのか」
「お姉さんからはそういう感じしないし」
といって着いたよと告げてくる。
私は中に入ってみると中には大柄の男が座っていた。男はタバコを吸っており煙を浮かせている。
「おうどうしたシオン。何を拾ってきた」
「ものすっごく強いお姉ちゃん」
「ほう?」
そういうと、男はタバコを捨ていきなり切りかかってくる。
私は刀で攻撃を受け止めすぐに喉元に突き付けた。
「なにをする」
「わりぃわりぃ。実力が知りたくてよ。今の一撃を止められるなら十分だな」
男は剣を納める。
私も刀をしまうと男はまた座ったのだった。お前も座れと言われたがなんとなく立っていたい。すぐに戦えるようにするためにも。
私が座らないと察知したのか話をし始めた。
「あらためて。俺は暗殺ギルドの首領のアーサーつーんだ。こっちは暗殺者見習いのシオン。よろしくな」
「暗殺、暗殺か」
そういう場所かここは。
「お嬢ちゃん、暗殺者になりたくないか?」
《職業:暗殺者 になれるようになりました》
という幻聴が聞こえる。
暗殺か、興味はないな。
「すまんが私はならない。暗殺などというものには興味はない」
「はは、そうか。わかった。ならば」
「生かしては帰さないというつもりか?」
私は刀に再び手をかける。
「違う。お嬢ちゃんにはこれを渡そうと思ってな。スラムの奴らはお前みたいな身なりのきれいなやつをよく思わん。襲われでもしたらたまったもんじゃねえ。だからこれを身につけとけ」
といって手渡されたのは一つのペンダントだった。
水滴のような宝石がついているだけのペンダント。私はそれを首にかける。
「何も細工はしてないだろうな?」
「してねえっての。それはほかの奴らから見たら普通のペンダントだがそれはスラムの奴だけがわかる。それを見せたら襲われなくなるだろうぜ」
「襲われても返り討ちにしてやるだけだが」
「それをされちゃ困るから渡してるんだよ」
なるほど、スラムの安全を守るためか。
「わかった。もういいだろうか。私は王都を観光したい」
「ああ。すまんな。忘れてなかったら暗殺ギルドに入ることも考えてくれ」
私はそう言ってぼろ小屋を出た。




