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【書籍化】学園の姫攻略始めたら修羅場になってた件  作者: かわいさん
第2章

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第33話 決着の姫ヶ咲祭~決断の後夜祭~

 姫ヶ咲祭が終わった。


 間違いなく今年は過去最大の来場者数だろうと先生達が話していた。少なくとも昨年よりも盛況だったのは確実だ。


 各所で小さなトラブルはいくつもあったが、特に大きな問題なく終わったのは奇跡と言ってもいいだろう。


 姫ヶ咲祭が終わった後、俺は片付けに尽力した。


 昨年は片付け作業に何も感じなかったが、今年は準備からまじめに頑張っただけに寂しさが残った。そういった意味でも俺にとって今年の姫ヶ咲祭は特別なものになった。


 片付けが終わった頃には日が暮れていた。祭りの終わりを惜しむかのように後夜祭は開始された。


 後夜祭は体育館で行われる。軽い演芸があったり、バンド演奏があったりする。多くの生徒がこれに参加し、体育館では未だ熱の冷めない輩が騒いでいる。


 余談だが、以前はグラウンドでキャンプファイアーのような催しもあったらしい。安全面の理由から現在では無くなってしまったが。


「ようやくこの時が来たわね」 


 しみじみとそう呟いたのは俺……ではない。


「長かったね、氷川さん」

「ええ、本当に長かったわ」

「待ちに待った感じ?」

「ある意味ではそうね。ただ、不安もあるわ」

「わかる。真綿で首を絞められるような地獄の日々だったよね」


 現在、俺は告白の返事をするために屋上に向かっている途中だった。


 基本的に屋上は閉鎖されているのだが、姫ヶ咲祭の時のみ開放されている。普段は入れない場所とあってか、昼間は結構な賑わいをみせる。


 で、屋上に繋がる階段を歩いているところに待ち構えていたのがこの二人だ。


「……氷川に土屋。何しに来たんだ?」


 そう尋ねると、両者は俺を見る。


 視線は好意的ではなく、怒りと呆れが入り混じっているようだ。


「何をしに来た、とはご挨拶ね。こっちは生徒会の仕事が一段落したからわざわざ来てあげたっていうのに」

「ホントだよ。失礼しちゃうね」


 来て欲しいと頼んだ覚えはないぞ。というか、生徒会に土屋は全然関係ないだろ。


「まあいいわ。来た理由は激励よ」

「そうそう、優柔不断な佑真君がどんな顔してるのか気になっただけ」


 優柔不断で悪かったな。


 罵られた俺には反論ができない。実際に迷っていたのは確かだ。この点については素直に認めるしかない。真綿で首を絞めるような日々を送らせてしまったことに関しては詫びたいところだ。


 ただ、今はもう心を決めた。


「いい顔をしているじゃない。もう決めたのね?」


 氷川の問いに俺は大きく頷いた。


「佑真君の心は決まったみたいだね。まっ、今さら騒いでもしょうがないか。わたしに出来るのは願うことだけだよ」

「わたくしもそうよ。本当に悔しいけれどね」


 二人は俺の隣を通り過ぎていく。


「まだ悩んでるようなら喝を入れてやるところだけど、この分なら必要なさそうね」

「頼りになる男って感じの顔してるよ、今の佑真君」


 そのまま二人は行ってしまった。


 名目としては激励らしいが、自分の意中の相手を選ぶなという警告だろうな。


 さて、これで邪魔者はいなくなった。


 俺は屋上に繋がる扉の前に立った。扉の向こうにはすでに全員揃っているらしく、何やら言い争いをしている声が聞こえた。内容はわからないが、何となく煽り合っているようだ。


 よし、行くか。


 今まさにドアノブを回そうとした時、階段を勢いよく上ってくる音がした。そちらに視線を向けると見知った顔があった。


「……彩音?」


 足音の正体は彩音だった。息を切らした彩音が運命の場所に向かおうとする俺を見つめた。


「――」


 彩音は何も言わなかった。


 俺に向けて黙って親指を立てた。あいつも激励のつもりだろうか。


 誰のせいでこんなことになったのかと一瞬怒りの感情を覚えたが、姫攻略を始めなければ俺は夏休みまでと変わらない退屈な生活を送っていただろう。そう考えると複雑なところだ。


 それでも俺はあいつの激励には答えてやらないけどな。馬鹿みたいに親指を立てる彩音の奴を無視して屋上の扉を開けた。


「っ」


 沈みかけの太陽が四人の姫を照らしていた。


 夕陽に照らされる彼女達の姿は幻想的で美しかった。その光景はさながらアニメのオープニングか、あるいはどこぞの巨匠が描いた名画のようだった。


「ようやく主人公君が来たみたいね」

「不毛な言い争いはここで終わりか」

「……残念」

「前哨戦は私の勝ちだね」


 俺の姿を確認すると、口々に言った。


「いやいや、どう考えても私の勝ちだったでしょ!」

「絶対僕だよ。完全に君達を論破したじゃないか」

「……勝者は花音」

「はいはい。静かにしてよね。どうせ本番でも私が勝つんだから」


 前言を撤回する。名画などでは全然なかった。


 相変わらずな姫達の様子に呆れつつも、俺は真剣な顔で一人ずつ視界に映していく。


「じゃ、そろそろ本番だね」


 隣の席の風間。


 コミュ力の高い風間と一緒なら数多くの出会いがあるはずだ。今までの陰キャ生活とはがらりと変わった生活が送れる。頻繁にからかわれたり、イタズラされたりしながらも笑顔の絶えない時間が続くだろう。


「望むところだよ」


 推しVtuberの中の人である不知火。


 毎日推しを眺め、推しから愛される夢のような日々を送れる。会話だって絶対に弾む。それだけでなく、普段のイケメンな不知火とのギャップも楽しめる。一度で二度美味しいという感じになりそうだ。


「覚悟は出来てます」


 ネトゲの嫁である花音。


 安定と安らぎを求めるなら花音だろうな。毎日のようにゲームでチャットしているから考え方もよくわかっている。恋人になったら一緒にゲームとかして、楽しく過ごせるのは間違いない。


「ゆう君、信じてるからね」


 幼馴染の月姫。


 最も身近な相手であり、俺に初恋の喜びと苦しさをプレゼントしてくれた相手。いくつもの思い出がある。月姫と付き合えば失ったあの日々を取り戻せるだけでなく、その先の景色を見られるだろう。


「――先に言わせてくれ。俺の心はもう決まっている。だからここで長々と話をするつもりはない。そのつもりで頼む」


 この宣言をしたのは決心が鈍りそうだからだ。


 自分という人間はよく理解しているつもりだ。優柔不断で受け身なところがある。正直、目の前で泣きそうな顔をして訴えられたらどうなるかわからない。


 俺の言葉に四人はビックリしながらも、受け入れてくれた。


「覚悟決まったって感じだね。いい顔してるよ」

「神原君はいつもイケメンだよ」

「……その通り。先輩はイケメン」

「うんうん、昔からすごく格好よかったから!」


 あれからずっと考えていた。何度も自分の心に尋ねた。


 最後の最後に文化祭デートをした。新しい発見もあり、改めて俺には勿体ないくらい魅力がある少女達だと思った。


「……」


 踏み出した俺は真っすぐある少女の元に向かった。


 そして、彼女の手を取った。


最後までお読みいただきありがとうございます。


次回の更新で最終回です。同日にエピローグも掲載します。

よろしくお願いします。

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