度々会うのは故意か偶然か?4
今回は短めです。
「こんばんは、クレハさん」
仕事の帰り道でまたソウヤに会った。
「こんばんは。今日もまだお仕事ですか?」
「いいえ、今日の仕事は終わりました」
「お疲れ様です」
くすりと微笑われた。
「ありがとうございます。クレハさんもお疲れ様です」
「ありがとうございます」
確かに職場の者でもない、知人と呼ぶほど親しくはない相手に「お疲れ様」と言われるのは変な感じだ。
先程笑われた理由がよくわかる。
逆の立場だったら愛想笑いで誤魔化しただろう。
気まずい。
ならばさっさと立ち去ってしまおう。
「どこかに行くところですよね? 私はこれで」
「待ってください。あなたに伝えたいことがありま。」
「私に、ですか?」
もしかして、そのためにこの辺りで待っていた?
一瞬そう考えてさすがにそれはないかと却下する。
きちんとソウヤの顔を見る。
「何でしょうか?」
ソウヤもきちんとクレハを見た。真面目な顔をしている。
真面目な話なのだろう。
だからクレハはきちんと聞こうと思った。
だが真剣な顔で告げられた言葉に思考が停止する。
「貴女が好きです」
「え?」
思考が動き出したが理解できない。
「私は貴女に一目惚れしたのです」
「わ、わわわわ私のどこに一目惚れする要素が!?」
理解できた途端動揺して思考が空回りし出す。
ソウヤが目を細める。
「聞きたいですか?」
「け、結構です! 失礼します!」
これ以上は無理だとクレハはその場から逃げ出した。
「逃げられてしまいましたね」
ソウヤは苦笑しながら呟いたが、そうなるだろうなということもわかっていた。
ただそれでも伝えたかったのだ。
「次の再会に期待しましょう」
逃げられるかもしれないが、逃がすつもりはない。
だが逃げられるということは意識してくれているということだ。
むしろ何事もなかった顔をされるほうがへこむ。
まああの様子ならそれはないだろう。
ソウヤはクレハが走っていったほうを見て微笑むと、踵を返して歩き出した。
読んでいただき、ありがとうございました。
次回は12/15(月)です。




