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狼娘は黒兎に愛でられる  作者: 燈華


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10/15

度々会うのは故意か偶然か?4

今回は短めです。


「こんばんは、クレハさん」


仕事の帰り道でまたソウヤに会った。


「こんばんは。今日もまだお仕事ですか?」

「いいえ、今日の仕事は終わりました」

「お疲れ様です」


くすりと微笑(わら)われた。


「ありがとうございます。クレハさんもお疲れ様です」

「ありがとうございます」


確かに職場の者でもない、知人と呼ぶほど親しくはない相手に「お疲れ様」と言われるのは変な感じだ。

先程笑われた理由がよくわかる。

逆の立場だったら愛想笑いで誤魔化しただろう。


気まずい。

ならばさっさと立ち去ってしまおう。


「どこかに行くところですよね? 私はこれで」

「待ってください。あなたに伝えたいことがありま。」

「私に、ですか?」


もしかして、そのためにこの辺りで待っていた?

一瞬そう考えてさすがにそれはないかと却下する。

きちんとソウヤの顔を見る。


「何でしょうか?」


ソウヤもきちんとクレハを見た。真面目な顔をしている。

真面目な話なのだろう。

だからクレハはきちんと聞こうと思った。


だが真剣な顔で告げられた言葉に思考が停止する。


「貴女が好きです」

「え?」


思考が動き出したが理解できない。


「私は貴女に一目惚れしたのです」

「わ、わわわわ私のどこに一目惚れする要素が!?」


理解できた途端動揺して思考が空回りし出す。

ソウヤが目を細める。


「聞きたいですか?」

「け、結構です! 失礼します!」


これ以上は無理だとクレハはその場から逃げ出した。






「逃げられてしまいましたね」


ソウヤは苦笑しながら呟いたが、そうなるだろうなということもわかっていた。

ただそれでも伝えたかったのだ。


「次の再会に期待しましょう」


逃げられるかもしれないが、逃がすつもりはない。

だが逃げられるということは意識してくれているということだ。


むしろ何事もなかった顔をされるほうがへこむ。

まああの様子ならそれはないだろう。


ソウヤはクレハが走っていったほうを見て微笑むと、(きびす)を返して歩き出した。

読んでいただき、ありがとうございました。


次回は12/15(月)です。

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