164. 同郷
広く、閑散とした一室だった。
和洋折衷とでもいうべき趣ある空間には、簡素なテーブルとベッドぐらいしか置かれていない。その他には、片隅に平積みされた膨大な数の本が山となっているのみ。
そんな部屋の中央に佇むは、一人の少女。
その姿はまるで、日本の巫女そのものだった。やや違うのは袴の色が紺であることと、その袴がミニスカートのような膝上の長さであること程度か。
そして、その容姿。
背中や胸元まで伸ばされた黒髪は、黒曜のように艶やか。この異世界に慣れてしまった今、そのすっきりした目鼻立ちは、どこか懐かしさすら感じさせる。薄顔ながらかなりの美人だが、勝ち気そうというか、気の強そうな印象だ。クラスに一人はいる、「男子ー、ちゃんと歌ってよー」などと言ってくるタイプだろう。
しかしそんな彼女もまた、流護を見て驚愕の表情を浮かべていた。
それは間違いなく――ついに果たされた、日本人同士の邂逅によって。
「え、えっと……あの」
流護が緊張しながら声を絞り出すと、
「はっ、はい!」
少女もまた、背筋を伸ばして返事をした。よく通る、きれいな声で。
「日本人、っすよね?」
「う、うん。そういう、あなたも……」
「あ、ああ、はい」
どうしていいか分からず、流護は思わずベルグレッテへ、巫女はダイゴスへ顔を向ける。
「落ち着いて」
「落ち着かんかい」
グリムクロウズの二人は、それぞれ保護者のように苦笑するのだった。
「えっと……流護くん、でいいのかな」
「お、おう……雪崎先輩? になるんかな。二つ上みたいだし……」
「いやいや、桜枝里でいいよ桜枝里で。ただでさえキサーエリなんて間違われて、呼ばれたかと思えば皆して巫女様とか……もう、普通に呼ばれたいよー」
雪崎桜枝里は、肩を竦めて困ったように笑った。
「えーと……じゃ、桜枝里……さん」
「呼び捨てでいいよ。こんな世界に来ちゃったんだし、もう無礼講にしよ! 普通のイントネーションで桜枝里、って呼んでくれる人がほしい!」
「お、おう……よろしく、さ、さ、桜枝里」
「うん、よろしく流護くん!」
「そういうそっちはくん付けなのな……」
この世界の女子たちを名前で呼ぶことにはようやく慣れていたが、やはり同じ日本人を名前で呼び捨て、となると若干の抵抗がある流護だった。それこそ彩花ぐらいしか呼んだことがない。が、本人の要望とあっては仕方ない。……と言い訳しておく。
ベルグレッテの自己紹介も済ませ(桜枝里はこんなきれいな人見たことない、と驚くことしきりだった)、早速とばかりに互いの情報を交換する。
「なんだかもう、随分と昔のことのような気もするなぁ……」
――そう切り出した桜枝里がこの世界へと迷い込んだのは、水過の月、三日。今から一ヶ月半ほど前になる。流護がやってきてからは、およそ一ヶ月後ぐらいか。時期的には、ちょうど暗殺者たちの……『アウズィ』の一件が片付いた頃のはずだ。
『神々の噴嚏』と同時に現れたと噂されている桜枝里だが、本人には何の自覚もなく、学校帰りの夕方、道を歩いていたら突然――とのことだった。
やはり流護やロック博士と同じ。前触れもなく唐突に、その瞬間を認識することすらなく、この世界へと飛ばされている。
「あっ、でも……あれって、見間違いだったのかなー……」
「何かあった……のか?」
「帰り道歩いてて、この世界に迷い込む直前……何となく脇の空き地に目がいったときに、なんて言うのかな……光る綿毛、みたいのが見えた気がして」
「光る綿毛?」
桜枝里曰く。空き地の草むらに、発光するタンポポの綿毛みたいなものが舞っていたのだという。
「なんていうのかな、光る雪みたいにフワフワと……。夕方だったから自信ないけど、色は水色っぽかったと思う。この世界だったら夜になると光る花とかも普通にあるからあれだけど、日本じゃちょっと考えられないじゃない? 蛍とかとは全然違ったし、まだ明るかったし」
「ふーむ……」
「今思えばあれが、ここに飛ばされる前兆だったのかなーとか思ったりもしてるんだけど。流護くんは、そういうの見なかった?」
「んー……いや、俺は……」
そのようなものは目撃していない。ここへ迷い込む直前は携帯電話に意識を注いでいたため見逃した可能性もあるが、ロック博士からもそのような話は聞いたことがなかった。
(……、)
実際にこんな世界へ招かれている以上、気のせいだとか見間違いで済ませるのも憚られる。
仮にその光る綿毛とやらが、グリムクロウズへの転移に何か関係があるのだとしたら。
なぜ桜枝里だけがそれを目にしている? 流護とロック博士――岩波輝はなぜ見ていない? たまたま見逃してしまったのか? そうでないなら――桜枝里と流護たちには、何か違いがある……?
「まぁでも、見間違いなのかも。夕方だったし、何かが太陽に反射したのかな……」
自信なさげな口調になった桜枝里は、
「とにかくほんともう、参ったよ……お父さんとお母さん、心配してるだろうな」
無理矢理な笑顔で、そう呟いた。
「……、」
彼女と同郷の少年は、気のきいた言葉も返せず沈黙する。
当然だ。あまり故郷に未練のない流護でさえ、一人でいる夜にはふと込み上げることがある。コンクリートの建物やアスファルトの舗道。見慣れた団地の風景や、木造の家屋。街行く学生やサラリーマン、立ち話に興じる主婦たち。
以前は何の感慨もなかったそれらが、ひどく懐かしくなることがある。
ラーメンや寿司が食べたくなる。何だかんだで落ち着く、自分の家へ帰りたくなる。未練がないつもりでいても――父親や彩花に、会いたくなる。
(大体、おかしいんだよ。こんなことが起きるってのが……)
流護は異世界への転移という現象そのものに、憤りを覚えずにはいられなかった。
「それでも……同じ日本人がいるってだけで、随分と気が楽になるね!」
「ああ、えっと、それなんだけど――」
ロック博士のことを桜枝里に説明しようとした流護は、ハッとしてダイゴスへ視線を向けた。
「外した方がいいか」
「あ、いや……聞かなかったことにしてくれれば、それで」
「フ、そうか」
手引きしてもらった手前、ここへきてダイゴスだけに退出してもらうのも何だか気が引ける。
そうして、流護は説明した。
ロック博士――岩波輝という、もう一人の日本人がいること。その博士が十四年前にこのグリムクロウズへと迷い込み、研究者として暮らし続けていること。それはつまり、今も帰る手立てが見つかっていない証だということ……。
「…………、そっ……かぁ。まあ、うん……十四年は、長いね。そんな気は、してた……かなぁ、ははは」
妙な沈黙が場を支配することしばし。桜枝里が勢いよく立ち上がる。
「ご、ごめん! ちょっとトイレ! お花摘み! 行ってくる!」
返事も待たず、彼女は部屋を飛び出していってしまった。
「…………」
桜枝里が出ていった部屋の扉を呆然と眺めながら、流護は――
「俺……余計なことしちまったかな」
つい、そう呟いていた。
「何故そう思う?」
部屋の壁へ背を預けて立つダイゴスが、わずか興味深げに問う。
「いや……俺は、同じ日本人に会えるかも、って気持ちだけでここに来たけど……、よく考えたら、桜枝里……にしてみれば、帰る方法がないってのを知らされるだけだった訳で」
流護としては、帰るための情報が得られるかも――などとはあまり考えていなかった。この世界へ飛ばされた原因が分かるかもしれない、日本人に会ってみたい、と思ったことのほうが大きい。
しかし桜枝里は、密かに期待していたのではないだろうか。
同じ境遇の人間に会える。もしかすれば、帰るための手がかりが得られるかもしれない、と。
「それも、遅かれ早かれ……いずれは知ることじゃったろう」
「そりゃそうかもしれないけどさ……」
ダイゴスの言葉には容赦がない。しかし突き放しているのではなく、己もかつてそんな思いをしたことがあるかのような――重みを感じさせる口調だった。
「……つかダイゴス、全然驚かないのな」
「何がじゃ」
「いや……俺のこととか、ロック博士のこととか」
「お主もロックウェーブ博士も、独特の不可思議な空気を纏っとるからの。出自が特異だったとて、驚くようなことでもあるまい」
あなたが言いますか。武士道に生きてそうな顔しおってからに。
それにしても、と流護は腕を組んで唸る。
桜枝里もやはり、流護たちとほぼ同じ。その瞬間を知覚することすらなく、唐突にこの世界へと飛ばされている。彼女の言っていた、転移する直前に見たという『発光する綿毛』が気にかかる程度か。
帰ったら、ロック博士に報告してみるべきだろう。
素性も明かしたしということで、ダイゴスにも色々と話を訊いてみた。
そこかしこに『和』が感じられるこのレフェという国だが、特別日本や異世界への転移にかかわるヒントになりそうな話は聞けなかった。
ここまで古い時代の日本に近しいのであれば、何かありそうだと流護は思ったのだが。
何分歴史の長い国だそうなので、詳細不明のまま曖昧になっていることも多いという。
例えば、えらく崇め奉られている初代『神域の巫女』にしても、その本名すら記録に残っていないのだとか。そもそも『神域の巫女』という呼称自体、彼女の名前が後世に伝わっていなかったため、後から便宜的に名付けたものだという説もあるようだ。
「たっだいまー!」
大きな扉を押し開けて、桜枝里が戻ってきた。
長い黒髪がわずかに濡れている。思い切り顔を洗ってきたのだろう。目の赤みも完全に隠せてはいないが、流護はあえて触れはしない。
そこからしばし、会話に花を咲かせた。
この世界へやってきて、弱い重力に驚いた。神詠術――この国では巫術――を目にしてさらに驚いた。今はもう、どちらもすっかり慣れてしまったと笑う。あんなことがあった、こんなことがあった。
「そういえば、俺はこの世界に来て記憶喪失ってことにしたんだけど……桜枝里は全部正直に喋ったのか?」
「あ、うん。気付いたら街の広場にいたから、もうわけが分からなくて……」
だだっ広い草原に転移し、唯一出会ったミネットからゆっくり話を聞く時間があった流護とは違う。
桜枝里は街の中へ忽然と現われたことですぐに人が集まってしまい、色々と訊かれてしまった。まさか異世界へ迷い込んだなどと思うはずもなく、彼女は素直に喋ってしまったのだ。
『神々の噴嚏』と共に前触れもなく現われたという神秘性、見慣れぬ服装(セーラー服だったそうだ)、全く別の世界からやってきたなどという本人の供述から、あっという間に聖なる巫女として祭り上げられてしまった。伝説にある、初代巫女の再来だと。
しかしある意味、転移先がこのレフェだったことは桜枝里にとって不幸中の幸いだったのかもしれない。神詠術を神聖視しない風土や『神域の巫女』という制度が、結果として彼女を救うこととなった。
これがレインディールだったなら、異端だの何だのと言われて悲惨な扱いを受けていた可能性は高い。流護でさえ未だに、術を使えない不届き者という目で見られることもあるのだから。
「なるほどなあ。……そういや、こんなこと訊くのも今更かもだけど……『神域の巫女』って、具体的に何すんだ?」
「はは……えっとね」
桜枝里は現在、ただひたすら『修業』に励んでいるのだという。
神詠術――この国でいう巫術――とはまた異なる、巫女が扱ったという不可思議な力。それを開眼させるための修業に、一日の大半が費やされる。
清流に打たれながらの瞑想や、古い伝承の勉強。その他、様々な祈祷や作法の習得。民衆との巫謁など。
それらを実直に続けることで、いずれはその『力』とやらに目覚めると信じられているのだという。
(……きっついな、それ……)
ダイゴスの手前ということで言葉にこそ出さなかったが、流護は心中で苦々しく吐き捨てた。
当然というまでもなく、桜枝里自身も分かっているはず。
無意味、だと。
ただの日本人である流護や桜枝里。
神詠術などというものがある以上、その不可思議な力ももしかしたら実在するのかもしれないが、少なくとも桜枝里がそのような能力に目覚めることはない。
過酷な仕事や苦役であっても、そこに意味があれば、人は耐えられるのだという。
逆に、意味のない無益な作業には耐えられない。
囚人に穴を掘らせ、終わったらその穴を埋めさせる。それを延々と繰り返させる、という拷問があると聞く。
桜枝里は、それを強いられているに等しいのだ。
流護自身、日々の鍛錬を欠かさず続けているが、それは研鑽しただけの成果が実感として得られるからだ。重力の弱いこの世界で、当初博士が語ったように鍛えても能力が衰える一方だったなら――鍛える意味がなかったなら、十年続けている日課であっても放り出してしまっていただろう。
やりきれなくなって視線を泳がせた流護の目に、それが映る。何やら見覚えのある、一冊の本。
「……あれ、そこに置いてあるのは……」
「あ、うん。そうそう、それなんだけど、聞いてよー!」
その怪しげな本――桜枝里を知る切っ掛けとなった『とても怖いゴーストロア』の話題では、爆笑を交えつつ盛り上がった。
ユキザ・キサーエリと間違ったまま発行されるわ、『私、がんばります!』と書いてあった巫女の決意表明に桜枝里が「言ってないわ!」と突っ込むわ、『とてゴー』の信頼性を問う有意義な時間となった。
「大体さあ。雑誌に名前が載れば、どこかに同じ日本人がいたなら気付いてもらえるかなって思って。それで取材受けたのに、ユキザ・キサーエリとか書かれてるし! 意味ないし! 誰それって話よ!」
「ははは……まぁでも、こうして俺も気付いた訳だし、無駄じゃなかったんじゃねえか?」
『とてゴー』の巫女特集といえば、流護は思い出したことを尋ねてみる。
「そうそう。桜枝里先輩は? 歌が上手いんだって?」
「え!? うっ、うまいなんてゆーほどのものじゃ……昔ピアノやってたし、カラオケでよく歌ってたってだけで……ベランダで小声で歌ってたら、それをちょっと聞かれちゃって」
「ほう。よし、聴かせていただこうか」
「や、やだよ! 別にほら、カヴァリエーレの水鏡月下だよ。知ってるでしょ?」
何それ。思わず眉をひそめれば、
「えっ!? うそ、全然知らないの? あっ。邦楽とか、全然興味ない人?」
「いや……そういう訳じゃねえ……と思うんだけど……」
中学時代、彩花に連れられて、とあるバンドの野外ライブを見に行ったこともある。全く興味がない訳ではない。
が、カヴァリエーレだとか水鏡月下だとかいう名前は聞いたこともなかった。
(……まあ、)
苦い記憶を掘り起こす。
この世界へやってくる直前は、ただ荒んでいた。
音楽だとかそんなものには、思えば随分と触れていない。
「へえ。ベルグレッテさんは、クラスのリーダーなんだ。私も生徒会副会長やってたから、なんか親近感が」
「せいと……かい?」
「ああ、えっとね――」
桜枝里とベルグレッテも、最初こそ互いに距離感が掴めないような素振りをみせていたが、瞬く間に打ち解けていった。勝ち気な性格の委員長タイプ同士、気が合うのかもしれない。
一段落したところで、桜枝里が思い出したといわんばかりに手を打った。
「そうそう。流護くんって、めちゃくちゃ強いんでしょ? それも素手で。どうなってるの?」
「ど、どうって……」
ぐぐっと顔を近づけてきた桜枝里の甘い香りに身を引きながら、流護は戸惑いつつ説明する。
巫女衣装っぽいのにミニスカートだし、胸元も微妙にはだけているし、さらさらした長い黒髪がきれいだし、率直に言って色っぽいのであまり近づかないでいただきたい少年だった。また解脱が必要になってしまう。
「え、えーとほら。この世界ってほら、重力軽いだろ。だからその分、すげー力が発揮できるっていうか……」
「へ?」
「いやほら……軽いから、その分すげえ身軽に動けるだろ? ばーんって踏み込めるし、力もすげえことになってるし」
よく分かっていなさそうな桜枝里に、流護も下手ながら説明する――
「いや……重力が弱くても、それで流護くんが強くなることはないと思うけど」
「え?」
今度は、流護が固まる番だった。
「確かにこの世界の人たちって筋力が弱めだから、地球人が相対的に強くなることは確かだけど……」
桜枝里は自身へ言い聞かせるように頷き、
「それでもやっぱり、あのモンスターみたいな……怨魔なんかと渡り合える理由には、ならないと思う」
頭を殴られたような衝撃だった。
「いや、でも……」
ロック博士も、そう言って――
「あ、れ?」
いない。
『流護の膂力は、地球で育ったからこそ身についたもの』。
そんな言い回しをしたことはあったが、
『この世界の重力が弱いから、振るう力が絶大なものとなる』。
博士がそう言ったことは、ない。
その二つの説は、似ているようでいて全然違う。
「……ん? いや、あれ」
弱い重力と、体内に取り込まれた魂心力の相乗効果。
それは――流護が、思い込んでいたことだ。それが、当たり前の前提であると。疑いもせず。
「ちょっ……、待っ、で、でも実際、俺……」
しかし実際、有海流護は残してきた。
その拳で。体術で。様々な戦果を。そうして、一国の兵にまで任命された。
「流護くんは、空手を使うんだよね?」
「あ、ああ」
「私も、あっちで薙刀を習ってたの。この世界に来て、確かに身体が軽いような、調子がいいような感覚はあったけど……でもそれで、爆発的に強くなるようなことはなかった。兵士の人と試合しても勝てなかったし、大吾さんとは勝負にもならなかったし」
「…………」
流護は思わず沈黙する。
自分の両手をまじまじと見つめながら――、
「……身体強化」
思うより先に、そう呟いていた。
眉をひそめる桜枝里へ、流護はすがるようにまくし立てる。
「桜枝里は身体強化、使ったことあるか?」
「え? それって、巫術のあれ? いや、ないけど……」
「じゃ、じゃあ試してみてくれないか? えっと……俺には、身体強化が効かなくて――、んで桜枝里も日本人なんだし、多分俺と同じでほら」
「リ、リューゴ、落ち着いて」
ベルグレッテに諭され、流護はハッとしたように居住まいを正す。
そこで、
「身体強化が効かんかった……というのは本当か?」
珍しく興味を惹かれたのか、ダイゴスが不敵な笑みを深めていた。
「あっ……」
しまった、と流護は肝を冷やす。
できるだけ他言しないほうがいい、と博士にも言われていたのだが、つい口を滑らせてしまっていた。
「なに? どうかしたの?」
事情の分からない桜枝里も気になったのか、興味津々といった顔で目を光らせる。
流護としても何が何やら、訳が分からなくなってきた。
「ふむ。まず、現に確認してみるのも一興じゃろう」
ダイゴスが意味ありげな笑みを浮かべたままそう提案する。
という訳で――




