5章 14 ビルの告白 6
「ビリー、そこまで私のことを思っていてくれたの? 一緒に暮したのは僅かな時間だったのに……?」
ビリーはコクリと頷いた。
「当然だ。俺は父親にもまともに愛情を貰えたことが無く……いつも物乞いのような真似をさせられて、気に食わないことがあれば殴られていたんだから。その話は知っているだろう?」
「知ってるわ。だって、私に話してくれたことがあったじゃない」
荷馬車に揺られて、『ルーズ』へ向かう道中、ビリーは自分のことを話してくれた。その時、私は亡くなった父親からビリーが虐待を受けていたことを知ったのだから。
「リアの居ない世界は、もう俺にとって生きていくべき世界じゃ無い……。途方に暮れていた時、魔塔でもらった指輪に気付いたんだ。魔塔に戻れば何故こんなことになってしまったのか、理由が分かるかと思って……指輪に強く祈った。そうしたら……いつの間にか魔塔の前に立っていたんだ」
ビリーは自分の指輪をじっと見つめた。
「中に入ると、魔塔の人々が俺を待っていたんだ。まるで最初から俺がここへ戻るのを知っていたかのようにね。そこで俺は皆に自分が体験したことを話して、どうしてこんなことになってしまったのか説明を求めたんだ。そこで驚く話を聞かされたんだよ。いくら指輪に祈りを込めても、自分が生きたい世界に戻れるとは限らないんだって。現に今迄自分の居た世界に戻れた人物は、1人もいなかったらしい。その話を聞かされた時は、すごくショックだった……」
「ビリー……」
私は何と声をかければ良いか分からなかった。
「だけど魔塔主に言われたんだ。でもいつかは自分の祈りが通じ、望んでいた世界に戻れるかもしれないって。だからその後も俺は何度も何度も元の世界に戻れるように挑戦した。そして……いろいろな世界でリアに会ってきたんだ」
「え!? そうだったの!? だったら……」
「だけど、どの世界のリアも俺が探していたリアでは無かったんだ……」
ビリーは悲しそうな目で私を見つめる。
「それじゃ、どんな私だったの……?」
「とても冷たいリアだったよ。俺のように貧しい身なりの子供なんか相手にしないようなね。汚い身体で近付くなと追い払われたこともあるし、警察に引き渡されたこともある。時には、お金を渡すから二度と近付くなと言われたこともあったよ。その度に、俺は何度も魔塔へ戻ってやり直ししてきた」
「そんな……!」
冷たい仕打ちをされるたび、ビリーはどんな気持ちになっていたのだろう。
恐らくボロボロに心が傷付けられてきたに違いない。
いくら私がしてきた仕打ちではないにしろ、ビリーに対して申し訳ない気持ちが込み上げてくる。
「ごめんなさい、ビリー。ずっと私を探し続けてくれていたのに……貴方をそんな辛い目に遭わせてしまっていたなんて……」
涙交じりに謝罪すると、ビリーは慌てたように言った。
「それは違う。俺が今迄会って来たのは他の世界で生きる別人のリアだったんだ。だからリアが謝る必要はこれっぽちも無い。それに、何も冷たく追い払うリアばかりじゃ無かった。優しいリアと出会って一緒に暮したことだってあるんだ。だけど……そのリアは、重い病に蝕まれていて……俺の目の前で死んでいったけどね」
「え……?」
その話を聞いてドキリとした。
何故ならビリーの話は、以前に私が夢で見た世界と状況が酷似していたからだ——




