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5章 13 ビルの告白 5

 あの後——


私の身体の震えが止まるまで、ビリーは抱きしめてくれていた。ようやく身体の震えが収まったところで、ビリーが心配そうに尋ねてきた。


「大丈夫かリア? 少しは落ち着いたか?」


「……大丈夫。落ち着いたわ……続きを教えてくれる?」


まだドキドキと心臓は早鐘を打っていたが、それでも私は話の続きが知りたかった。

ビルは私の訴えに頷くと、再び語り始めた。


「チェルシーという女性に詳しく聞いたよ。リアが処刑されてすぐに、『テミス』でたった一日のうちに、住んでいた町民たちが全員亡くなったそうだ。紫色のガスが町全体を覆いつくしていたらしい。強烈なガスの匂いは風に乗って王都まで漂い、そのガスを吸って体調を崩した人々も多数出て……チェルシーの祖母も有毒ガスのせいで命を落としたそうだ」


「! そ、そんな……!」


思わず口元を手で覆った。


「それで国の命令で、『テミス』の町は封鎖された。誰もたどり着けないように大岩

や植林で道を塞ぎ、10年経過した今でもその状態が続いているそうだ」


「……」


私は黙ってビリーの話を聞いていた。

『テミス』の町が今も封鎖されていることは驚きだったが、それ以上にショックだったのが、婆やの死だ。まさか……毒ガスで死んでしまうなんて……。


「リア、本当に顔色が悪いぞ? もう話はここまででやめておこうか」


「いいえ、やめないで。ビリーはこの話を……まだたった10歳の時に聞かされたんでしょう? だったら私だって話を聞けるわ」


目の前のビリーをじっと見つめた。

今は立派な青年の姿で私の前にいるけれど、あの時のビリーはまだ子供。どれ程のショックを受けたかと思うと、気の毒でならなかった。


「……分かった。なら続きを話すよ。『ルーズ』で一緒に暮していた時、リアは食料の話をしていただろう? いざというときの為に、食糧難にならないように今から備蓄をしておかないとって」


「ええ、言ってたわ」


だって、いずれ国を揺るがす大飢饉が訪れる未来を知っていたから……。


「だから、『ルーズ』の話が気になって尋ねたんだ。そうしたら、やっぱり王都で聞いた話と同じ答えが返ってきたよ。今から5年程前、この国は原因不明の飢饉に襲われたそうだ。食物が殆ど育たず、魚も海や川から消えて……大勢の人々が亡くなったらしい。そのときにチェルシーの祖父も亡くなったと聞かされたよ」


「! 爺やが……」


「飢饉は3年程続いたそうだ。ようやく昨年頃から作物が育ち始め、魚も戻ってきたらしいけど……だが、もう俺は絶望していた。何故なら、この世界には……俺が一番会いたかった人が既にいない世界だったかのだから……」


そしてビリーは悲し気に笑った——

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