5章 12 ビルの告白 4
ビリーの話に耳を疑った。
「え……? 一体どういうことなの? 5年前には『ルーズ』が大飢饉で、10年前には『テミス』が有毒ガスで滅んだって……ひょっとして、ビリーは10年後の世界に来てしまったってことなの?」
尋ねる声が震えてしまう。
それでは私は、結局大飢饉を防ぐことが出来なかったのだろうか? 『テミス』の井戸問題は解決できなかった……?
「俺も、最初はそう思った。だから確かめようと思って……リアの家に行ってみたんだ」
「私の家って……まさかドヌーブ家に!?」
その質問にコクリと頷くビリー
「俺みたいな貧しい身なりの子供を相手にしてくれるかは分からないけれど、町の人達に場所を聞いて訪ねてみた。勿論誰も相手にしてくれなかったけど、リアの名前を口にしたら、1人の女性が現れたんだよ。名前はチェルシー。知ってるだろう?」
「チェルシーですって!?」
まさかビリーの口からチェルシーの話が出てくるとは思わなかった。
「女性は俺を見て、驚いた顔をしていた。そして俺のような子供がどうしてリアのことを知っているか聞かれたんだよ」
「それはそうでしょうね。誰だって子供が私を訪ねてドヌーブ家に行ったら驚くわよ」
「いいや、違う。そうじゃないんだ。その女性の話では……リアは『ルーズ』には行っていない。何故なら10年前に聖女に対する不敬罪で牢屋に入れられ……処刑されていたんだよ……」
「え!? しょ、処刑……? そ、んな……」
あまりのショックで、全身から血の気が引いていくのが分かった。
「リア、大丈夫か? 顔が真っ青だ。……この話はまた後にしようか?」
私を心配して、ビリーが肩に手を置いた。
「……いいえ、大丈夫よ。話の続きを……教えて」
「分かったよ……それでどういうことか詳しく尋ねたんだ。リアは呼ばれてもいない王太子と聖女の婚約パーティー会場に行き……大勢の人々が見ている前で、刃物を振りかざして聖女を殺害しようとしたらしい。けれど未遂に終わり、そのまま投獄されてしまった。悔い改めれば処刑は見逃すと王太子に言われたけれど、リアは罪を認めず……ついに断頭台で処刑されてしまったそうだ。遺体は引き取られること無く……王室で埋葬した……らしい」
「そ、そん……な……」
心臓が激しく脈打ち、今にも口から飛び出しそうだ。
私が大勢の人々の見ている前でソネットを刺し殺そうとした? 悔い改めなくて断頭台で命を散らせた……?
「その話……本当なの……?」
恐る恐るビリーに尋ねた。
「本当だよ。チェルシーという女性が……リアの処刑される姿を見ていたらしいから」
「!」
思わず自分の首に手を当てた。恐怖で身体の震えが止まらない。すると……。
「リア!」
ビリーの腕が伸びてきて、強く抱きしめられた。
「……大丈夫。落ち着くんだ、リア。それは違う世界のリアの身に起きた話だ。君のことじゃないから……」
ビリーは大きな体で、逞しくて……とても安心出来た。あんなに小さな子供だったはずなのに……。
私は自分の気持ちが落ち着く迄、ビリーの逞しい胸に顔をうずめた――




